小4社会「伝統文化を今に伝える福島県」指導アイデア
執筆/福島大学附属小学校教諭・板倉正哉
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登
国士舘大学教授・秋田博昭
目次
年間指導計画
・都道府県の様子
・水はどこから
・ガスはどこから
・ごみの処理と再利用
・自然災害から人々を守る活動
・伝統文化を今に伝える福島県
・郷土の発展に尽くす
・伝統的な技術を生かす新宿区
・伝統文化を守り生かす台東区
・豊かな自然環境を生かす小笠原
・国際交流に取り組む大田区
目標
県内の伝統や文化について、歴史的背景や現在に至る経過、保存や継承のための取組などに着目して、見学・調査したり地図などの資料で調べたりして、年表などにまとめ、県内の文化財や年中行事の様子を捉え、人々の願いや努力を考え、表現することを通して、県内の文化財や年中行事は、地域の人々が受け継いできたことや、それらには地域の発展など人々の様々な願いが込められていることを理解できるようにするとともに、主体的に学習問題を追究・解決し、学習したことを基に、地域の伝統や文化の保存や継承に関わって、自分たちにできることを考えようとする態度を養う。
評価規準
知識・技能
①歴史的背景や現在に至る経過、保存や継承のための取組などについて、見学・調査したり地図などの資料で調べたりして必要な情報を集め、読み取り、県内の文化財や年中行事の様子を理解している。
②調べたことを年表などにまと め、県内の文化財や年中行事は、地域の人々が受け継いできたことや、それらには地域の発展など人々の様々な願いが込められていることを理解している。
思考・判断・表現
①歴史的背景や現在に至る経過、保存や継承のための取組などに着目して問いを見いだし、県内の文化財や年中行事の様子について考え、表現している。
②文化財や年中行事を保存したり受け継いだりしている人々の工夫や努力と地域の人々の願いを関連付けて考えたり、地域の伝統や文化の保存や継承に関わって、自分たちにできることなどを考えたり選択・判断したり して、適切に表現している。
主体的に学習に取り組む態度
①県内の伝統や文化について、予想や学習計画を立てたり見直したりして、主体的に学習問題を追究し、解決しようとしている。
②学習したことを基に、地域の伝統や文化の保存や継承に関わって、自分たちにできることなどを考えようとしている。
学習の流れ(10時間扱い)
問題をつくる 2時間
- 県内に古くから残る文化財や年中行事について調べる。
- 文化財や年中行事が受け継がれてきた理由を予想し、学習計画を立てる。
(学習問題)
どのようにして文化財や年中行事は受け継がれてきたのかな。
追究する 6時間
- 大内宿が重要伝統的建造物群保存地区に指定されるまでの経過等について調べる。
- 大内宿を保存するための取組について調べる。
- 下郷町の人々が大内宿を保存してきた理由を話し合う。
- 桧枝岐(ひのえまた)歌舞伎が始まった歴史的背景や現在に至る経過について調べる。
- 桧枝岐歌舞伎を継承する取組について調べる。
- 桧枝岐村の人々が歌舞伎を継承している理由を話し合う。
まとめる 2時間
- 調べて分かったことを年表などにまとめる。
- 学習したことを基に、地域の伝統や文化を保存したり継承したりするために、自分たちにできることを考える。
問題をつくる
県内に古くから残る文化財や年中行事を白地図にまとめ、それらを基に話し合うことで問いを見いだすとともに、現在まで受け継がれてきた理由を予想し、学習計画を立てる。(1、2/10時間)
問いを見いだすためのくふう
県の観光案内や関係機関が作成したパンフレット等の資料を活用して、県内に古くから残る文化財や年中行事について調べ、分かったことをタブレット型端末上で地図にまとめ、視覚的に捉えることができるようにすることで、県内の主な文化財や年中行事の名称や位置等を大まかに理解できるようにする。
1時間目
県内に古くから残る文化財や年中行事について調べる。
ぼくのおじいちゃんの住む須賀川市では、福島市にはない「松明明かし」という行事が残っているんだ。
県の観光パンフレットを見ると、福島県には私たちの知らない文化財や年中行事がたくさんありそうね。調べてまとめてみましょうよ。
みなさん、地図や観光パンフレットなどから、古くから残るものをたくさん調べることができましたね。
まとめてみると、文化財や年中行事は県内各地に残っていることが分かって、驚いたわ。
どうやって昔から今まで文化財や年中行事が受け継がれてきたのかな。調べてみたいな。
どのようにして文化財や年中行事は受け継がれてきたのかな。
≪名称と大まかな位置を捉えるためのポイント≫
ここでは、県内に残る文化財や年中行事の名称と大まかな位置を捉えることが大切です。そこで、1人1台端末を活用して、県の白地図上に文化財や年中行事の写真を貼り付けるなどの活動を行い、児童が視覚的に捉えやすくしていくことが大切です。
学習の見通しをもつためのくふう
予想を基にして学習計画を話し合う際に、1人1台端末等の学習支援ソフトに入っている「シンキングツール」などを活用して分類・整理をすることで、単元の問題解決の方向性(=学習の見通し)をもつことができるようにする。
2時間目
文化財や年中行事が受け継がれてきた理由を予想し、学習計画を立てる。
1時間目に考えた学習問題に対する予想を発表してください。
ぼくの地域では、昔から伝わる踊りを残すために、地域の人が子供に教えてくれているんだ。だから、保存する取組があるのではないかなと思うよ。
私の地域には、古くからある神社が残っています。建物の場合は、地域の人が協力して保存したり、修理をしたりしてきたのかもしれないな。
みんなの予想を分類・整理して、調べていくことを決めていこうよ。
それでは、タブレット型端末の「シンキングツール」にある「ベン図」を使って整理してみましょう。
建物のように「形のあるもの」と、踊りのように「形のないもの」に分けて、整理してみたよ。
どちらにも共通していることは、文化財や年中行事を受け継いでいくために大切なことだと思うから、そこから調べていくとよいのではないかな。
≪予想から学習計画を立てるための工夫≫
主体的な問題解決に向けては、学習問題に対する予想を基にして、単元の学習計画を考えることが大切です。そのためには、1人1台端末に入っている「シンキングツール」を活用して、出された予想を分類したり、これから調べていく視点を明確にしたりする等の活動を設定することは、児童が主体的に学習計画を考えることができるようにするために有効な活動です。
追究する
歴史的背景や現在に至る経過、保存や継承のための取組などに着目して、県内の文化財や年中行事について調べる。(3、4、5、6、7、8/10時間)
保存や継承の取組を調べるためのくふう
実際に保存や継承に携わっている人たちの話を聞く場面を設定することで、そこに託されている人々の「願い」に、児童が触れることができるようにする。
7時間⽬
桧枝岐歌舞伎を継承する取組について調べる。