ストレスは小さくなる? 小学校中・高学年のストレスマネジメント教育~ものの見方・考え方を変えてみよう

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ストレスフリーの教室をめざして
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皆さんは、「自分はいつもネガティブに物事を捉えてしまうな・・・」「あの人、もしかしたら私
のことよく思っていないかも?」などと考えて、気分が落ち込んでいまうことはありませんか?
実は、
子どもも同じように考えることがあります。
今回は、ストレスマネジメント教育の第3段階「ストレス対処法を習得する」第4段階「ストレス対
処法を活用する」について、小学校中・高学年での授業展開について紹介します。

【連載】ストレスフリーの教室をめざして #03

執筆/埼玉県公立小学校教諭・春日智稀


前回・前々回をまだご覧になっていない方は、ぜひこちらもご覧ください。
<第1回目:小学校の教室で「子どものストレス」をゼロにするために。やってみよう、ストレスマネジメント教育>
<第2回目:実践! 小学校のストレスマネジメント教育~高学年の授業展開をもとに~>

1 コーピング(coping)

はじめに、「コーピング」について確認しておきます。
コーピングとは、ストレス反応に対してうまく対処しようとする行動のことを言います。コーピングは、主に「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型コーピング」の2種類に分けることができます。

問題焦点型コーピング
問題中心型コーピングとは、自分が直面している問題そのものに対処することであり、「ストレッサー」自体に働きかけを行うことを指します。例えば、「自分の力量よりもはるかに高い仕事を求められている→上司に相談し、仕事の量や種類を適切なものに調整してもらう」などです。

情動焦点型コーピング
情動中心型コーピングとは、「問題だ」と捉えている自分自身の解釈を変えることを言います。例えば、「自分の力量よりもはるかに高い仕事を求められている→自分に期待してくれている証だ、と捉える」などです。

一般的に人はストレッサーに直面した時に、「問題焦点型コーピングで対処できるかを判断し、その可能性が低い、もしくは無い場合に情動焦点型コーピングを選択する」と言われています。

2 授業展開

授業展開
【資料】授業展開

3 解説

本授業は、特別活動 学級活動⑵における実践を想定しています。
今回の取り上げるのは、情動焦点型コーピングのうち、「認知再構成法」です。人はだれしも、ストレッサーに直面したときにその状況を「認知(評価)」しています。この認知の仕方に焦点を当てて、なるべくストレス負荷の少ない見方や発想に転換していこう、というものです。小学生に認知という言葉はやや難しいので、ここでは「ものの見方・考え方」と言い換えています。
導入では、事前にとっておいたアンケート結果を発表し、ものの見方・考え方を変えることの必要性を実感させます。

アンケート
【資料】授業前アンケート

はじめに、これまでにカッとなったり不安になったりして後悔した経験について想起させます。これは、自分の情緒がマイナスに傾くときには、かならず背景に何らかのストレッサーがあり、そのコントロールがうまくできれば後悔をしなかったかもしれない、ということに気付かせるためです。さらに後悔した理由を尋ね、「あの時こうしていれば…」という実体験を想起させることで、認知を変えることの必要性にせまっていきます。
展開では、はじめに例示場面を示して、認知を変えるとはどういうことかを全体で確認します。

【資料】例示場面のスライド

今回は、「友達にあいさつをしたのに無視された」という場面を取り上げました。ここで想定されるストレス負荷の高い認知は、「なんで無視するんだよ!」「私、嫌われたのかな?」などです。一方でストレス負荷の低い認知は、「急いでいたのかな」「何か考え事をしていたのかな」などとなります。このように、同じ出来事でも自分の認知次第でストレス負荷が変わることを確認します。

【資料】認知を変える練習スライド

次に、異なる例示場面で実際に認知を変えてみます。ここでは、「運動会でリレーのアンカーを走ることになったAさんが、もし失敗したらどうしようと考えていたら、夜なかなか眠れなくなってしまった」という場面を設定しました。「もし失敗したらどうしよう」という部分が認知にあたりますので、この部分を変えてみます。ここを変えると、「夜なかなか眠れない」という身体症状も変えることができます。
終末では、本時で学んだことを日常生活に結び付けます。自分が今後どのようなものの見方・考え方をしていきたいかを意思決定し、実践していきます。筆者は、定着を図るために「見方・考え方カード」を活用しました。ストレッサーに直面したときに、自分がどのようなものの見方・考え方をしたのかを記録していきます。

見方・考え方カード
【資料】見方・考え方カード

終末では、本時の学びが実生活で活かせるようにします。「コーピングカード」などの記録できるワークシートを用いるとよいでしょう。期間を決めて、「ストレッサー」と「コーピング」を記録しておきます。期間終了後は短時間でふり返りを行い、子ども同士がそれぞれの実践について交流を図るとより効果的です。

【参考引用資料】
動作とイメージによるストレスマネジメント教育 基礎編―子どもの生きる力と教師の自信回復のために/山中寛・冨永良喜 編著/北大路書房
ストレスとコーピング:ラザルス理論への招待/林峻一郎 編・訳/星和書店

<プロフィール>
春日智稀(かすが・ともき)
2015年より埼玉県公立小学校教諭。体育主任・生徒指導主任・研究主任・教務主任などを担当。
ケアストレスカウンセラー/青少年ケアストレスカウンセラー。
日本生徒指導学会 日本学校教育相談学会 会員。

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