「暑さ指数」とは?【知っておきたい教育用語】

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子どもが熱中症にならないよう予防するために、どのような対策を講ずればよいでしょうか。暑さ指数(WGBT)が28を超えると、熱中症患者が急増します。子どもへの熱中症対策チェックリストを活用し、厳重警戒をしましょう。

執筆/文京学院大学名誉教授・小泉博明

「暑さ指数」とは、熱中症の危険度を判断する数値

【暑さ指数】
熱中症を予防することを目的として、1954年にアメリカで提案された指標。熱収支人体と外気との熱のやりとり)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響が大きい「湿度」「日射・輻射など周辺の熱環境」「気温」の3つを取り入れている。暑さ指数が28を超えると熱中症患者が著しく増加するため、厳重警戒となる。

日本生気象学会の「日常生活における熱中症予防指針」によれば、暑さ指数が28以上31未満では、「厳重警戒、外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する」となり、暑さ指数が31以上では、「危険、外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」となります。

また、日本スポーツ協会の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」における「熱中症予防運動指針」によれば、暑さ指数が28以上31未満では、「厳重警戒、激しい運動は中止」となり、暑さ指数が31以上では、「危険、運動は原則中止。特に子どもの場合には中止すべき」となります。

このように、各学校現場などにおいて、「暑さ指数」が子どもの熱中症を予防する重要な指標となります。

熱中症を予防するには

暑さ指数が高いときには、熱中症の予防が大切です。日本スポーツ振興センターの手引き「熱中症を予防しよう―知って防ごう―」によれば、熱中症とは、「熱に中(あた)る」という意味で、いくつかの病型があり、重症な病型である熱射病を起こすと、適切な指導が遅れた場合、高体温から多臓器不全を併発し、死亡率が高くなります。

学校の管理下における熱中症死亡事故は、ほとんどが体育・スポーツ活動によるもので、それほど高くない気温(25℃~30℃)でも湿度が高い場合に発生しています。暑いなかでは、体力の消耗が激しく、トレーニングの質も低下し、効果も上がりません。熱中症予防のための運動方法、水分補給などを工夫することは、事故防止の観点だけでなく、効果的なトレーニングという点でも大変重要です。

こんなときは要注意として、手引きには「高湿度・急な温度上昇などには要注意。日中の暑い時間帯は避けて行動しよう」「肥満傾向の人、体力の低い人、暑さに慣れていない人、体調の悪い人は要注意」「ランニング、ダッシュの繰り返しには気を付けて」とあります。特に、学校の管理下の熱中症事故の7割以上を肥満傾向の人が占めています。

また、熱中症の危険性に対する気付きを促すものとして、翌日の最高暑さ指数が33(予測値)に達する場合、気象庁と環境省が熱中症警戒アラートを発表します。関連して、2024年、夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)では熱中症対策として、試合を午前と夕方に分けて行う2部制を、開幕から3日間に限って導入することを決めました。

学校現場でのチェックリスト

学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」のなかに、各学校現場での取組を効率的に確認できるチェックリストがあります。熱中症事故対策におけるポイントの整理・確認などの参考として活用しましょう。

手引きでは、(1)日頃の環境整備等、(2)児童生徒等への指導等、(3)活動中・活動直後の留意点の3つに分けています。ここでは、特に重要な(2)児童生徒等への指導等のチェックリストの内容を紹介します。

□特に運動時、その前後も含めてこまめに水分を補給し休憩をとるよう指導する(運動時以外も、暑い日はこまめな水分摂取・休憩に気をつけるようにする)
□自分の体調に気を配り、不調が感じられる場合にはためらうことなく教職員等に申し出るように指導する
□児童生徒等のマスク着用に当たっても熱中症事故の防止に留意する
□運動等を行った後は十分にクールダウンするなど、体調を整えたうえでその後の活動(登下校を含む)を行うよう指導する
□運動の際には、気象情報や活動場所の暑さ指数(WBGT)を確認し、無理のない活動計画を立てるように指導する
□児童生徒等同士で水分補給や休憩、体調管理の声をかけ合うよう指導する
□校外活動や部活動の遠征など、普段と異なる場所等で活動を行う際には、事故防止の取組や緊急時の対応について事前に教職員等と共通認識を図る
□登下校中は特に体調不良時の対応が難しい場合もあることを認識させ、発達段階等によってはできるだけ単独行動は短時間にしてリスクを避けること等を指導する

環境省・文部科学省(PDF)「学校における熱中症対ガイドライン作成の手引き(令和6年4月 追補版)」令和6年4月

今後も地球温暖化の課題が解決されなければ、暑さ指数は上昇します。学校現場などでは、暑さ指数を注視し、教職員などが子どもへの熱中症対策を講じければなりません。尊い生命が失われる危険性があることを肝に銘じましょう。

▼参考資料
環境省(ウェブサイト)「環境省熱中症予防情報サイト
日本生気象学会(PDF)「『日常生活における熱中症予防指針』Ver.4」2022年5月23日
公益財団法人日本スポーツ協会(PDF)「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」2018年7月
独立行政法人日本スポーツ振興センター学校災害防止調査研究委員会「熱中症を予防しよう―知って防ごう熱中症―
環境省・文部科学省(PDF)「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き(令和6年4月 追補版)」令和6年4月

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