「一時保護所」とは?【知っておきたい教育用語】
令和4年6月に改正児童福祉法が成立しました。それに伴い、虐待や育児放棄などから家庭などに居場所がない子どもたちを一時的に保護する「一時保護所」についてもガイドラインが改正されました。今回は、一時保護のケースやガイドラインで触れられている子どもの権利擁護について解説します。
執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム
目次
子どもの生命の安全を確保する一時保護所
【一時保護所】
児童相談所に付属し、主に2歳以上18歳未満の保護を必要とする子どもを一時的に預かる場所。併せて、対象の子どものその後の養育に備え、生活状況の把握や生活指導なども行われる。
虐待や育児放棄、非行などの理由から一時的に子どもを保護します。厚生労働省の「一時保護所の概要」によれば、一時保護の具体例として以下の3つを挙げています。
(1)緊急保護
ア 棄児、家出した子ども等現に適当な保護者又は宿所がないために緊急にその子どもを保護する必要がある場合
イ 虐待、放任等の理由によりその子どもを家庭から一時引き離す必要がある場合
ウ 子どもの行動が自己又は他人の生命、身体、財産に危害を及ぼし若しくはそのおそれがある場合(2)行動観察
適切かつ具体的な援助指針を定めるために、一時保護による十分な行動観察、生活指導等を行う必要がある場合(3)短期入所指導
厚生労働省(PDF)「一時保護所の概要」2017年11月14日
短期間の心理療法、カウンセリング、生活指導等が有効であると判断される場合であって、地理的に遠隔又は子どもの性格、環境等の条件により、他の方法による援助が困難又は不適当であると判断される場合
なお、児童相談所での一時保護の期間は原則2カ月以内とされ、保護期間終了後は、子どもを家庭に復帰させる、もしくは施設への入所、または里親のもとでの生活に移行させるかなどが判断されます。
一時保護ガイドラインにおける子どもの権利擁護
こども家庭庁は、改正児童福祉法を踏まえたうえで、安全計画の策定や職員の一般的要件などの基本的事項から、子どもの権利擁護、権利の制限などについても触れています。こども家庭庁の「一時保護ガイドラインの改正のポイント」によれば、子どもの権利擁護について、次のような項目を追記しています(主な項目を抜粋、編集して紹介します)。
●一時保護を行うに当たっては、児童に対し、児童の権利、児童の権利を擁護する仕組み、一時保護を行う理由その他必要な事項について、年齢、発達の状況その他の当該児童の事情に応じた説明を行わなければならない
●一時保護の決定や解除に当たっての意見聴取等措置やその際の説明等については、マニュアルに基づき適切な対応が求められているほか、子どもの年齢や発達の状況等に応じた配慮や、子どもが意見を言いやすくするための工夫、言葉による意見表出が困難なこどもに対する最大限の配慮等を行うことも重要である
●子どもが職員に意見を表明しやすくなるよう、適切な関わりのもと、職員から子どもに対し、いつでも意見を表明していい旨を説明する、子どもが意見を伝えようとした際は、なるべくその場で傾聴し、肯定的に受け止める、日頃から信頼関係の構築に努めるといった対応を行うことが重要である
●子どもが意見を表明できるよう意見箱や、子ども会議などの導入、第三者委員の設置など多様な取組を行うこと、また権利擁護のための仕組みを導入するだけでなく、実効性のある運用がなされるよう運用改善を継続的に行っていくことも求められる
以上のように、一時保護の実行においては、子どもの権利擁護の観点が重要であり、子どものウェルビーイングを最優先に考慮した措置が求められます。
一時保護においては、虐待や育児放棄などの生命が脅かされる環境下にいる子どもたち、家庭などに居場所がなく非行に走ってしまう子どもたち、助けを求める全ての子どもたちが適切なケアを受け、最善の利益が守られなければなりません。
▼参考資料
厚生労働省(PDF)「一時保護所の概要」2017年11月14日
こども家庭庁(PDF)「一時保護ガイドラインの改正のポイント」
こども家庭庁(PDF)「一時保護の要件について」2023年4月26日
NHK(ウェブサイト)「虐待受けた子どもなどが生活『一時保護施設』 新たな基準案」2024年2月2日