ビフォーアフター型の提示法「写真でD or A」|子供たちの可能性を引き出す!学級経営&授業アイデア#6

連載
子供たちの可能性を引き出す!学級経営&授業アイデア

宮城県公立小学校教諭

鈴木優太
「子供たちの可能性を引き出す!学級経営&授業アイデア」バナー 執筆:鈴木優太

自ら考え、活動したり学習したりする子供たちの可能性は無限大。そうした子供の内に秘めている可能性を引き出すための「学級経営&授業アイデア」を紹介する連載です。『教室ギア56』(東洋館出版社)などの著書をもつ鈴木優太先生が、学級活動、教室環境、授業アイデアなどの中から、毎月1本厳選して解説します。第6回は、ビフォーアフター型の提示法「写真でD or A」を取り上げます。

執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太

D(最低)からA(最高)の順に写真を提示する

例えば、教室に保管している探検バッグです。写真を2枚撮影します。比較するために「同じアングル」で撮影することが望ましいです。

探検バッグを比較した写真。D(最低の状態)とA(最高の状態)

1枚目は、の写真です。A、B、C、DのD、つまり、最低の状態ということです。

撮影した写真を子供たちに提示して共有します。探検バッグのひもが足に引っかかる可能性があり、とても危険な状態です。「脱ひもぷら作戦」(『脱ひもぷら』&『アライン線』ですっきり安全【どの子も安心して学べる1年生の教室環境 #4】参照)を話し合ったにもかかわらず、「ひもぷら」(ひもがぷらぷらしている)状態になってしまっています。

2枚目は、Aの写真です。A、B、C、DのA、つまり、最高の状態ということです。

「わたしたちのAはこの状態」という共有済の写真があれば、それを使用します。子供たちの体験が想起されるもののほうが望ましいです。教師がAに整えた写真でもかまいません。

このように、DとAの写真を提示して、比較し共有したことによって、わたしの学級では、一人一人が探検バッグの中にひもを入れ、向きも揃えて保管するようになりました。安全だから見た目も美しいのです。

D(最低)からA(最高)という順序が重要です。ビフォーアフター型の提示法は、人が理解しやすく記憶に残りやすい効果的な手法だからです。

DとAどちらが心地よいかを問う

Dはゴミ箱にビニール袋がしっかり掛けられておらず、ゴミも溢れている。Aはゴミ箱にビシッとビニール袋がフィットしていて、ゴミもしっかり押し込まれている。
Dはゴミ箱にビニール袋がしっかり掛けられておらず、ゴミも溢れている。Aはゴミ箱にビニール袋がフィットしていて、ゴミが底に押し込まれている。

上記イラストのように、DとAの写真を大型テレビに映して切り替える提示法が最も簡単です。写真を印刷してDとAの写真を順番に黒板に貼り出し、そのまま掲示物として使用する方法もあります。イラストにある空中ゴミ箱の実践はこちらから!

DとAのどちらが心地よいですか?

ほとんどがAを選択します。Dを選ぶ子も想定できます。これは、「注目を浴びたい」という心根を翻訳して解釈する必要があります。この子は、望ましい行動が見られたときに積極的に承認していく関わりが必要と捉えましょう。

私も、みなさんと同じです。では、Aの姿が「私たちのちゃんと」ですね。

学級づくりが上手な先生方には共通点があります。

「私たちのちゃんと」を子供たちが自分事にしている

のです。

一体何をしているのでしょう。最も簡単な一つの方法が、

D(最低)とA(最高)の写真を活用すること

なのです。

A(最高)の心地よさを体感する

子供たちをAに誘導する側面が否めない手法です。だからこそ、子供たち自身が心地よさを「実感」できることがとても重要です。

「体験」とセット

で行います。

写真だけでは子供たちは変わりません。Aの写真の姿に向かって「即・行動」がポイントです。実際に、一人一人が探検バッグの中にひもを入れ、向きも揃えて保管し直す時間を取りましょう。

私たちの手で成し遂げたA(最高)の状態、「私たちのちゃんと」を体験するのです。

やってみてどうですか?

ビフォーアフターを全身で「体験」することで、心地よさを実感します。そして、改めて写真を撮影します。

子どもが身に付けたら教室環境からなくす

「写真でD or A」は、学習環境の整備だけでなく、挨拶、聴き方、食育など……躾(しつけ)と言われる類のことを身に付けるために効果的です。躾とは、「愛されるための習慣形成」だそうです。子供たちが愛される人として生きていけることは、私たち大人の切なる願いです。

大きな行事の前後や、長期休み明けや新学期のリスタートのタイミングが効果的です。一方で、一度実践をして完結できるほど甘いものではないことも肝に銘じておきましょう。都度、都度、繰り返していくことで、子供たちの習慣になっていきます。

撮影した写真を教室に掲示しておくなど、継続するための工夫は大切です。しかし、一つ注意点があります。子供たちができるようになったこと、すでに身に付いていることには必要ありません。もうすでに身に付いているのに、いつまでも写真を掲示し続けることや「写真でD or A」で指導することはナンセンスです。子供たちと共に過ごす教室環境、そして何よりも子供たち一人一人の姿を丁寧に「観察」することが重要です。


鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア56』『教室ギア55』(共に東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)など、著書多数。

参照/鈴木優太『教室ギア56』(東洋館出版社)、鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)、多賀一郎監修、鈴木優太編、チーム・ロケットスタート著『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク』(明治図書出版)

イラスト/高橋正輝

【鈴木優太先生 連載】
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【鈴木優太先生 ご著書】
教室ギア56(東洋館出版社)
教室ギア55(東洋館出版社)
「日常アレンジ」大全(明治図書出版)
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク(明治図書出版)

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