梅雨の時期がチャンス!! 4年「雨水の行方と地面の様子」【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
【理科の壺】
梅雨の時期がチャンス!! 4年「雨水の行方と地面の様子」
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雨の日は残念に思うことが多いですが、理科の「雨水の行方と地面の様子」は数少ない、をありがたく思う機会ですね。雨待ちにすると計画通りに授業が進まないこともあり、どのような天気でも対応ができるようにしなければいけない単元でもあります。今回は体育の授業と絡めて、校庭の水はけについて考えてみましょう。優秀な先生たちの、ツボを押さえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/神奈川県公立小学校教諭・水野安伸
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

はじめに

理科の醍醐味の一つとして、「自然」について子どもたちが科学的に学んでいくことがあると言えます。自然を対象としていると、子どもたちも興味をもちやすい一方で、先生にとっては、「天候に左右される」ということもよく聞きますよね。観察に行きたいのに「雨が降ってしまった」、天気による1日の気温の変化を調べたいのに、「天気は思い通りにいかない」当然ですが、難しい悩みです。この悩みは理科だけではありませんよね。体育をやりたいのに…。最近は、「晴れているのに暑すぎて…」なんて言葉もよく聞こえてきます。天気単元で言えば、第4学年に「雨水の行方と地面の様子」があります。暑くて校庭での体育が実施できないときにも、この単元を学習するチャンスととらえましょう。

心得1 意外とよく知らない、「校庭の水はけ」

自然に親しみ、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行うことなどを通して、自然の事物・現象についての問題を科学的に解決するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
⑴ 自然の事物・現象についての理解を図り、観察、実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
⑵ 観察、実験などを行い、問題解決の力を養う。
⑶ 自然を愛する心情や主体的に問題解決しようとする態度を養う。

小学校学習指導要領解説 理科P12

ある日の朝、出勤すると、前夜の雨の影響により校庭には水たまりがありました。
「今日は1時間目が体育なのに」
そう思ったのは先生だけではありませんでした。私は水たまりがあることから石灰でラインを引くことをせず、今日の体育は中止と判断しました。1時間後、子どもたちが登校し、
「1時間目の体育は無理かな」
と話をしていました。教室は校舎の4階にあり、ベランダから校庭の全体が見渡せます。
「あれ、いつのまにか水たまりがない」
と気づきました。子どもたちは、
「水たまりがないから体育ができる」
「でも、地面がぐちょぐちょのはず」
と意見が分かれたので、実際に校庭の地面の様子を確かめに行きました。
「今日はリレーの学習が最後だから、どうしてもやりたい」
と言う子もいましたが、最終的な判断は、
「リレーゾーンにぐちょぐちょが残っている」
「長靴で来た子もいるから中止」
でした。
「こんなに水たまりがなくなるのが早いなら、普通の靴でくればよかった」
と言う子がいる一方で、
「いつも遊んでいる公園はもっと水たまりがなくなるのが早いよ」
「私が遊んでいる公園は、今日は放課後も水たまりだから遊びに行けないな」
という対話が始まりました。水たまりがなくなることは常識ですが、校庭、公園と、場所によって水たまりがなくなる早さについては深く考えたことがないようです。
後々になってですが、2時間目に体育をしているクラスがあったことを知り、
「そこまで乾いていたんだ」
と子どもたちには驚きだったようです。

心得2 場所によって水たまりがなくなる早さが異なるのは?

体育は中止になったため、ついでに
「どこに水たまりが残っているか探そう」
と、水たまりマップを作成しました。このように、体育だった予定を急に理科に変更する等の臨機応変さは、学級担任が理科を担当している強みではありますが、難しい場合には、水たまりが残っている状態の写真を撮影しておくとよいでしょう。
水たまり探しや公園遊びの経験から、
「校庭の端には水がたまりやすくなっているところがある」
「コンクリートは水たまりがなかなかなくならない」
「場所によって水たまりのなくなる早さが違う」
ことに話が絞られ、それぞれの要因を
「低いところに水が流れる」
「しみこむところとしみこまないところがあり、しみこまないところも空気中に水がとんでいく」
「土によってしみこみ方が違う」
と予想しました。降った雨水がどこへいくのか、水たまりがどうなくなっていくのかは、梅雨の雨が降る時期によく観察させておくことがおすすめです。

子どもが書いた水たまりマップ
筆者が子どもたちと作った水たまりマップ

心得3 自分たちで予想したからこそ、学習を生活に生かせる

自分ごとの問題となった子どもたちにとっては、翌日から公園の土をよく観察して校庭の土とは土の粒子が違うことを見つけていたり、実際に水を上から流してしみこむ時間の違いを観察したりと、前のめりになって問題解決を楽しみました。
単元終了後、雨の降った翌日には、
「先生、今日の体育は鉄棒をやめて砂場でできる種目にしましょう」
と相談に来た子がいたり、
「今日はいつもとは違う公園で遊ぶ」
と言っていたりと、学習したことを生かした姿が見られました。
「理科は天候に左右される」
とよく聞きますが、
「理科は天候がチャンス」
でもあると言えます。先生も自然を対象に楽しめるといいですね。

水たまりマップ

イラスト/難波孝

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

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<執筆者プロフィール>
水野安伸●みずの・やすのぶ 横浜市立都田西小学校教諭。理科を中心に日々実践研究を行う。横浜市小学校理科教育研究会化学部会部長。初等理科教育研究会編集部長。日本初等理科教育研究会神奈川支部を創設し、事務局長として県内理科教育の発展に努める。
東京書籍小学校理科教科書「新編 新しい理科」編集。共著に「『問題を見いだす』理科授業─マンガでわかる導入場面─」(東洋館出版)、「理科でつくるウェルビーイング─幸福で充実した人生を送るための学び─」(東洋館出版)、「これからはじめる“GIGA” 全学年・全単元×1人1台端末×活用事例」(日本標準)などがある。


寺本貴啓教授

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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