夏休みの宿題の取り組ませ方を見直そう【図工・読書感想文】

連載
松下隼司の笑って!!エヴリディ

大阪府公立小学校教諭

松下隼司

夏休みの宿題は、子どもだけでなく、保護者もそして教員にとっても負担が大きいものです。図工作品や読書感想文も、「決められているから」と惰性で行うのではなくて、効率的かつ気分良く取り組めるようにできたらいいですよね。そこで今回は、みんながハッピーになれる、夏休みの課題における図工と読書感想文のアイデアをお届けします。

【連載】松下隼司の笑って!!エヴリディ

マンガを読んでいる子

1.夏休みの宿題(図工や読書感想文)の実情

夏休みの宿題で、多くの子ども(と保護者)にとって労力を必要とするのが、図工と読書感想文です。夏休みに図工の宿題として出される課題は、都道府県によって違うかと思いますが、例えば、私が教員22年目で経験した図工の宿題の課題のテーマは、次のようなものです。

  • 海・水・山、虫などの自然
  • 防火・防犯
  • 消防
  • 電車
  • 自転車
  • 未来の街
  • 貯金箱

それぞれの課題には、コンクールがあります。夏休み明け、作品を課題ごとに分け、図工担当になっている教員が取りまとめてコンクール先に提出します。子どもたちががんばって制作した作品を教室に掲示する期間は、ほとんどありません。コンクールの締め切り日が、9月中になっているからです。始業式の日に、少し見せる程度です。本当は、もっと長い期間、教室に掲示したり、相互鑑賞の時間をとりたいのですが……。

そして、図工の課題は、「例年、やっているからやる」という実情があります。前年度踏襲です。教職員間で検討する時間は、勤務時間内にないのです。

多くの子どもは、なかなか課題に取りかかることをしませんから、保護者は、

「もう夏休み、終わるで~!」「早く、絵を描き~!!」

と子どもをせかします。私も子どもができ(現在小学6年生)、親の大変さや忙しさが分かりました。休み最後の週に、やっつけ仕事的に何とか取り組ませています。

読書感想文も大変です。まず、読む本を選ばないといけません。思いつきで本を選んでしまうと、書くときになって苦しむことになります。

2.夏休みの宿題(図工や読書感想文)の取り組ませ方の工夫

そこで、図工や読書感想文の宿題のおすすめの出し方を紹介します。

  1. 自由勉強にする。
     やってもやらなくてもいいことにします。
  2. 学校や学年などの事情で自由勉強にできない場合は、図工の作品づくりの仕方や、読書感想文の書き方を授業でしっかりと教える。
  3. 自由勉強にできない場合は、1学期中に学校の授業で取り組ませておく。そして、家に持ち帰って仕上げてくる。
     これだけで、子どもや保護者の負担はかなり減ります。

上の(図工の作品づくりの仕方や、読書感想文の書き方)について、おすすめの工夫を紹介します。

貯金箱の作り方の工夫>
夏休みの工作の定番! おすすめ「手作り貯金箱」の作り方【ダウンロード可】
https://kyoiku.sho.jp/247979/

読書感想画と読書感想文>
【現役小学校の先生がおすすめ!】子どもも保護者も楽ちん&楽しい 夏休みの読書感想画と読書感想文

https://hugkum.sho.jp/508085

たこの絵のある工作
黒い画用紙に描かれた絵

読書感想文は読書ぎらいの子どもにとってハードルが高いものです。そこでおすすめなのが、「マンガ感想文コンクール」です。ご存じでしたか?

【マンガ感想文コンクール 2024】
https://www.manga-kansoubun.jp/

改めて読む必要もないぐらい、お気に入りのマンガのストーリーと好きな場面や登場人物が頭の中に入っている子どもは、多くいることでしょう。私も今小学生に戻って感想文を書かなければならないのだったら、マンガの感想文を書きたいです!

3.夏休みの宿題(図工や読書感想文)の見直し方

図工や読書感想などの夏休みの宿題の取り組ませ方について、子どもと保護者の負担を考えて、「自由勉強にする」と前述しました。さらにもう一歩踏み込んで、「学校での取りまとめ」をしないという工夫もできます。これは、学校(教員)の負担を考慮してのことです。

現状、教員は、子どもたちが教室に持ってきた作品に次のことを行います。

  1. 作品の所定の位置に応募用紙が貼ってあるか確認し、貼っていなければ貼らせる。
  2. 応募用紙の記入漏れがないか確認し、記入漏れがあれば書かせる。
  3. 図工の作品をテーマごとに分けて、作品提出者の名簿を作成する。
  4. 図工の作品をテーマごとに分けて、図工室に置く。
  5. 貯金箱の作品は、全作品を提出できないので、学年1品に選定する。
    (読書感想文も、子どもたちが書いてきたもの全部は提出できません。学年で自由図書・課題図書で1つずつ選んでコンクール先に送ります。本当は全てコンクールに出したいのですが、そういう規定になっているのです)
  6. 図工主任は、1~4を確認する。
  7. 図工主任は、テーマごとに作品を包装し、郵送する。

これらの業務を授業や行事の準備と並行して行います。2学期開始時期の放課後は会議や研修で埋まっていることが多く、夏休みの作品処理をする時間がなかなかとれません。定時を超えてしまうことも多くありました。

そのような学校(教員)の負担を踏まえて、文部科学省から「学校における働き方改革の推進について ≪関係府省・関係団体の皆様へ≫ 学校における働き方改革の推進について ~学校現場の負担軽減に御理解・御協力をお願いします~」という提言が出されています。

■「学校における働き方改革の推進について ≪関係府省・関係団体の皆様へ≫ 学校における働き方改革の推進について ~学校現場の負担軽減に御理解・御協力をお願いします~」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/07/25/1419589_2_1.pdf

■学校における働き方改革について(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/hatarakikata/index.htm


≪関係府省・関係団体の皆様へ≫
学校における働き方改革の推進について
∼ 学校現場の負担軽減に御理解・御協力をお願いします ∼

○ 本年1月に中央教育審議会において,学校における働き方改革の推進に係る提言が取りまとめられました。これを受けて,文部科学省はこれからも,子供たちの未来のため学校が質の高い教育を提供し続けられるよう,働き方改革の取組を強力に進めてまいります。

今,学校現場では,教師の長時間勤務の深刻な実態があります。これまで学校は,社会の要請を受けて,子供に関わる様々な業務を担ってきましたが,過労死なども社会問題となっており,ここで教師の働き方を変えなければなりません。これは Society 5.0 といった変化の激しい時代を生き抜く力を子供たちに育むためにも重要です。教師がこれまで以上に子供たちの指導に専念できるよう環境整備していく必要があります。

○ こうした中で,例えば,学校は,多様な機関から依頼を受け,子供・家庭向けの周知などを行っています。特に夏休みなど長期休業前は依頼が多く,子供たちの成績処理で忙しい時期にも関わらず,学級ごとに配布物を仕分け,学級担任が一枚ずつ配っています。各機関からのそれぞれの依頼は小さいですが,これが積み重なることで負担が大きくなっています。

○ こうした各機関からの依頼について,今後は,関係機関の皆様にも御理解・御協力いただきながら,例えば,

・ 学校への子供・家庭向け周知等の依頼は厳に精選いただき,学校を経由しない方法(公共施設等での配布,インターネットや広報誌への掲載など)を活用いただくこと,
・ 学校に依頼せざるを得ない場合も,学校への依頼方法は教育委員会等の判断に,周知方法は各学校の判断にそれぞれ委ねていただくこと,また,配布が必要な場合は,児童生徒分の部数を確保した上で,学級担任が配りやすいよう,例えば,あらかじめ 40 部ずつ仕切りを入れること,
作文・絵画コンクール等について,学校単位での応募や学校による審査や取りまとめを要件としない,また,学校経由での子供への周知を求めないようにしていただくこと
・ アンケートへの回答など,学校の関与が不可欠でないものについては,学校が集約することを前提とせず,直接各機関に送付できるようにしていただくこと,
など,御配慮いただきたいと考えています。

○ これからも,子供たちの未来のため学校が質の高い教育を提供し続けられるよう,文部科学省として全力を尽くして取り組んでまいりますので,皆様も学校における働き方改革に御理解・御協力をお願いいたします。

平成 31 年(2019 年)3 月 18 日
文部科学大臣 柴山昌彦

(太字と色は本記事で追加)


文部科学省が、

  • 作文・絵画コンクール等について,学校単位での応募や学校による審査や取りまとめを要件としない。
  • 学校経由での子供への周知を求めないようにする。

と提言しているのです! それなのに、学校にコンクールの周知依頼や、審査や取りまとめの依頼が続いています。私もこの文部科学省からの提言が出されていたことを知ったのは、今年度に入ってからでした。

多忙化しているのは、教員だけではありません。保護者も子どもも忙しいのです。保護者も仕事がありますし、多くの習い事をしている子どももいます。子ども目線、保護者目線、そして学校(教員)目線としても、夏休みの図工や読書感想文の取り組ませ方を大きく見直す必要が年々、増しているように感じます。

読書感想文や貯金箱は、学校からではなく、家庭から提出するようにするのがおすすめです。学校からだと、学年で1つに選定しないとなりませんが、家庭からなら、必ずコンクール先に送ることができます。


松下隼司先生

松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。

イラスト/したらみ

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