夏休み前の安全指導①海での事故防止〔ダウンロードプリント付〕
夏休み、毎年、水難事故が起こります。ひとたび海で事故が起こると、楽しい海水浴が一瞬にして悲惨なことになってしまいます。海のルールを守り、安全の心構えを身に付け、海での事故防止を心がけるため、夏休み前にぜひ水の安全指導を行いましょう。ワークシートがダウンロードできますので、子どもたちにワークシートを配付して、気を付ける箇所を確認するとよいでしょう。
監修/公益財団法人日本ライフセービング協会
目次
海水浴場における安全の心構えを身に付けよう!
海水浴場に出かけたときに、気を付けたい16のポイントです。子どもたちにイラストを見せながら、どのようなことに気を付けるとよいのか、どのようなことが危険な行為なのかを伝えましょう。クイズ形式にすると楽しみながら学べます。
海に行ったときにどんなことに気を付けるとよいでしょうか。上の絵を見て、気付いたところはありますか。みんなで考えてみましょう。
はい、ぼくは15番でおぼれそうになっている子が気になります。なぜ、浅いところでおぼれそうになっているのかよく分かりません。
子どもがおぼれそうになっていますね。なぜだか分かる人はいますか。
波に足をとられているのかもしれません。
そのとおりですね。波に足をとられてしまうことがあります。それから、波の力によって、海底のところどころにへこみができることがあります。子どもは大人より身長が低いので、突然、深みにはまることがあるのです。海ではそのような危険なことがあることをよく覚えておきましょう。
はい、分かりました。
子どもたちとやり取りしながら、海に出かけたときに気を付けることや危険なことを学べるようにします。子どもから答えが出ないときには、目の前の子どもたちの様子や時間状況に応じてヒントを出し、子どもたち自身が気付けるようにしたり、先生が解説したりしましょう。
海に出かけたときに気を付けたい16のポイント
❶
夏の砂浜の温度は60℃以上になることもあり、大変熱くなるので、足の裏をやけどする恐れがあります。また、砂浜によっては、落ちている貝がらやガラスの破片などで足の裏をけがすることもあります。砂浜を移動するときはサンダルなどをはいて、やけどやけがをしないよう気を付けましょう。
❷
みんなの海です。海水浴をするときは、自分が出したゴミを持ち帰るのはもちろん、周りに落ちているゴミも拾って、気持ちのよい浜辺をつくることが大切です。すべての生物のためにいつまでもきれいな海を保ちましょう。ゴミを拾うときには、できる限り、ゴミを直接、素手でさわらないようにしましょう。
❸
夏は砂浜や海面からの照り返しがあり、日差しが大変強いです。日焼け止めを塗って、肌を守るとともに、帽子をかぶったり、パラソルや日傘などで日かげをつくったりしましょう。こまめな水分補給も忘れずに熱中症にも気を付けましょう。
❹
紫外線を浴び、汗をかくと体内の水分は失われます。さらにお酒を飲むことで脱水症状を招きやすくなり、判断力が鈍くなります。遊泳中におぼれて心肺停止となった人のうち、飲酒をしていたことが明らかなケースは少なくとも全体の3割程度ありました。「飲んだら泳がない」は大人が確実に行動できる溺水防止です。
❺
浜辺に打ち上がっている生物には危険を伴うものがいます。クラゲの触手に触れると刺されるので、むやみに生物に触れないようにしましょう。
もし刺されてしまったら、クラゲの触手が目に見えている場合は、ピンセットなどで取り除きましょう。手で取る場合はゴム手袋などを装着してください。取れない場合は海水でやさしく洗い流します。その後、受傷部位を42~45℃のお湯で温めます。温めることができない場合は氷のうなどで冷やします。
❻
堤防などのふちは、落水の可能性が高いので大変危険です。波がかぶりやすいため、すべりやすくなっている場合があります。水辺に行くときは、すべりにくいかかとのついたサンダルやアクアシューズなどをはいていきましょう。また、ふちから水面をのぞきこむなどしないようにしましょう。波が高いときなどは堤防に近付かないようにします。
❼
風が強い日にはパラソルやテントが飛ばされる恐れがあり、周りの人に当たってしまったら大変危険です。パラソルは風上にやや倒し、砂の中に深くさしこんだら、重しを結んで飛ばされないようにしましょう。
❽
砂浜は足場が安定しません。足をくじかないように、また水の中で足がつるとパニックになり、おぼれてしまう危険があるため、準備体操をしっかり行ってから海に入りましょう。海に入るときには、急いで入らないで、足元に注意して、底や深さを確かめながら、ゆっくり入ります。
❾
寝不足や疲れているときなど、体調が悪いときに海に入るのは危険です。体調を万全にして楽しみましょう。
❿
その日の海の状況を知るように努めましょう。また遠慮なくライフセーバーに話しかけ、海の状況や安全な場所などを聞いてみましょう。
⓫
岩場では、潮が引いたときにできる潮だまりで生物観察が楽しめます。しかし遊泳区域の外であることがほとんどです。潮の流れが複雑なので、岩場では水に入らないようにしましょう。また、足場がすべりやすく不安定で危険も伴います。波が高いときは岩場に近付かないようにします。岩場であっても、ライフジャケットを身に付けておくことが大切です。
⓬
河口付近は河川の流れと海の流れが入り交じり、流れが非常に複雑です。海底の地形が変わりやすく、潮の満ち引きによっても水深や流れが大きく変わります。河口付近では遊ばないようにしましょう。
⓭
遊泳区域の中であっても、浮き具などを身に付けずに1人で沖を泳ぐことは危険です。
活動に合わせてライフジャケットの準備や着用を検討し、安全にそなえることが大切です。
ライフジャケットの種類
写真はすべて船舶検査適合品(限定条件ありを含む)。蛍光色(①)や反射板が付いているタイプ(①②③)は捜索時に発見されやすくなり、股紐や胴ベルト(②③)が付いていると抜け防止につながる。身体の小さな子どもは子ども用(③)を着用することが重要。水を感知し自動膨張するタイプ(④)もある。
⓮
大きな浮き具は風の抵抗を受けやすいので、浮き具を使う際は風に流されないように注意しましょう。もし、陸からの風によって、浮き具だけが沖に流されても、無理に追わないようにしましょう。追っている途中で体力がなくなっておぼれたら大変です。
⓯
子どもは大人よりも身長が低いので、突然、波に足をとられてしまったり、深みにはまってしまったりすることがあります。波の力により、海底のところどころにへこみができることがあるので、足元に気を付けましょう。
大人はKeep Watch(キープウォッチ)を心がけ、子どもから目を離さずに、手の届く範囲で見守りましょう。
⓰
離岸流とは、沖に向かう流れのことで、海水浴場における溺水事故の約50%(2013~2019年平均)が離岸流によるものです。河口付近、堤防沿い、岩場など、離岸流が発生しやすい場所には入水しないようにしましょう。もし、離岸流に流されてしまっても落ち着いてパニックを起こすことなく横に移動して流れから逃げましょう。
命を守る3つの「行かない」
1 ライフセーバーのいない海水浴場や遊泳禁止の場所には行かない!
2 川が海に流れ出る河口付近には行かない!
3 子どもだけで水辺には行かない!
これらは、毎年事故が起こる場所やケースです。絶対に「行かない」ようにし、海で安全に楽しく遊んでください。
ダウンロードプリント
◎水難事故防止についてこちらの記事もどうぞ
夏休み前の安全指導②川での事故防止〔ダウンロードプリント付〕
安全な水泳授業~プール事故防止のための事前学習~〔ダウンロードプリント付〕
プール事故防止のための監視の方法~子どもの命を守る水泳授業~
出典・資料提供:公益財団法人日本ライフセービング協会
日本ライフセービング協会のウェブサイトでは、夏休み前に海水浴場での安全の心構えを学べる動画などがあり、楽しく学習できます。
https://ls.jla-lifesaving.or.jp/
取材・文・構成/浅原孝子 イラスト/横石真奈美 イラスト・写真提供/公益財団法人日本ライフセービング協会