「共同親権」とは?【知っておきたい教育用語】

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2024(令和6)年5月17日、「共同親権」の導入を柱とした「民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)が成立しました。共同親権とはどんなものなのか、共同親権によって何が変わるのかを解説します。

執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム

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離婚後、両親がいずれも親権をもつ「共同親権」

【共同親権】
両親が離婚後、父母いずれも親権をもつことがです。現行法は、単独親権といって、離婚後、父母のどちらか一方が親権者となりますが、共同親権が導入されると、父と母の双方が親権者となる、もしくは単独親権とすることも可能としています。2024年5月17日に共同親権導入の改正民放などが参議院本会議で可決・成立され、2026年までに導入される見込みです。

現在の日本では、未成年の子どもの父母双方が婚姻中は共同親権であることが認められています。しかし、父母が離婚した際には、「単独親権」に切り替わり、父母いずれか一方のみの親権しか認められません。

日本で共同親権が施行される場合、父母どちらも親権をもつことになり、もし父母間で合意がとれない場合は、家庭裁判所の判断によって、共同親権とするか単独親権とするかが決定されます。

共同親権による親権の内容

共同親権が導入された場合、子どもと離れて暮らすことになる親権者でも、子どもの受験や転校、パスポートの取得などの重要事項について積極的に関与することができるようになります。

ただし、食事や買い物、習い事などの「監護及び教育に関する日常の行為」や、手術などの緊急を要する事情においては、単独で親権を行使することができます。そのため、共同親権になったとしても子どもと同居できるのは一方の親だけですし、子どもの生活に直接関わる機会は限定的です。

なお、海外では多くの国が共同親権を採用しています。例えばアメリカでは、離婚後、子どもにとっての最善の利益を考慮したうえで、共同で子育てするしくみが構築されています。両親が離婚する際には、法的な決定権の所在や子どもと過ごす時間配分、そして意見に相違があった場合の解決方法などについてまとめた「養育計画書」を裁判所に提出する義務があります。アメリカ以外でも、ドイツやイタリア、フランスなどの欧米諸国、アジアでは韓国でも共同親権が導入されています。

共同親権導入にあたっての課題

共同親権は、早ければ2026年までには運用が始まるといわれています。では、実際に導入されるまでの間にどのような点が議論の争点になるのでしょうか。

いちばん懸念されているのは、DVや虐待、モラハラを理由に離婚したにも関わらず、離婚後もその被害が続きかねないといった点です。現行の単独親権であれば、離婚によって配偶者から逃れることができますが、共同親権の場合、離婚後も子どもの養育に関して配偶者と連絡を取り合わなければならないため、再び被害を受ける危険にさらされることになります。

この懸念点に関して、改正案ではDVや虐待被害があると裁判所が認めた場合、単独親権に移行されることとなっています。ただ、ここで重要なのが、裁判所がどのような基準で認定するのかということです。子どもに不利益が生じないよう、行政や福祉などの充実した支援を整備することが導入までの課題とされます。

共同親権の導入にあたって最優先すべきことは、「子どもの利益を守ること」です。先進国に倣って共同親権を導入した結果、子どもの不利益が生じるようなことがあっては決してなりません。導入までに、両親が正しく協力し子育てを行えるようなしくみ作りを国全体で考えていくべきでしょう。

▼参考資料
日本経済新聞(ウェブサイト)「離婚後の『共同親権』選択可能に 改正民放が成立」2024年5月17日
NHK(ウェブサイト)「『共同親権』同意が必要なこと 養育費や面会のルール 既に離婚の場合の対応など詳しく」2024年5月17日
東京新聞(ウェブサイト)「『共同親権』海外の事例から見たメリットと課題 日本で導入するならどんな問題が?」2023年8月30日

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