小学校の通知表の成績づけや所見の書き方の工夫【所見文例付き】
1学期の終わりが近づいてきました。通知表の成績づけや所見について考えなければならず、なかなか重い腰を上げる気にならない先生方も少なからずいるのではないでしょうか。そこで今回は、自称・仕事が遅くミスも多いという松下隼司先生が、所見や評定についての工夫を紹介してくれました。ぜひ参考にしてみてくださいね。
【連載】松下隼司の笑って!!エヴリディ
目次
早く始めるための工夫
私は、通知表も研究授業の指導案作成も、最初の一歩がなかなか踏み出せないタイプです。書き始めるまでにとても時間がかかります。同僚の先生がどんどん通知表の所見を書き進めていくのを見たり聞いたりすると、さらにやりたくなくなってしまいます。
だから最近は、最初の一歩をとにかく早く始められるように工夫しています。「係活動」「総合的な学習」「出欠日数」など、考えなくてもいいことから始めるのです。エンジンがかかってきますし、早く始めることで、ちょっとした優越感や余裕が味わえて、自己肯定感が高まります。
昨年度の資料も集める
通知表の成績づけで、一番難しいのは何学期ですか? 私は、1学期がとても難しく感じます。2・3学期は前の学期との比較ができるからです。
でも1学期は、3か月半ぐらいの短い期間で評価をつけなければなりません。
若手の頃、苦い経験をしたことがあります。期末個人懇談会で、保護者から、昨年度までの成績のことを引き合いにして、なぜ評価が悪いのか尋ねられたのです。昨年度3学期はA評定だった教科が、今年度1学期はB評定になっていたからです。昨年度までの学習内容と違うことや、1学期の学習活動の内容などを話しましたが、重い空気が流れました。
そこで最近は、学校で保管している昨年度や一昨年度の年間の成績一覧表も見るようにしています。もちろん、それを評定の資料にすることはありませんが、学力面での子どもの理解に役立ちます。期末個人懇談会でも、保護者に指摘される前に、担任から昨年度までとの比較をして、がんばったことや、課題を話すことができるようになります。
「特に気になる子ども」への所見
以前、友達とのトラブルが非常に多い子どもを担任したことがあります。
次は、その子どもへの所見です。
たった一人でクラス全員分のノートを配ったり、後期学級代表に立候補したりするなど、クラスやまわりの人のために自ら進んで行動することができるようになりました。
その子どもの課題については、所見に書かないようにしています。所見に書いても直らないですし、なにより子どもも保護者も傷つきます。できるだけ長所やがんばりを書くように、学校で共通理解しているところも多いかと思います。
特に気になる子どもの所見を書く内容は、その子どもの抱える課題と反対のことを取り上げて書くようにしています。
上で紹介した子どもの場合は、普段、まわりに迷惑をかけることの方が多くありました。しかし、まわりのために行動したことが少ないながらもありました。そのことを担任として忘れず、取り上げて書くのです。
その子どもの課題と反対の行動を取り上げて書いたことで、良い行動を増やし、課題となる行動を減らすきっかけになりました。
所見を書く際のポイント
所見を書く際に気をつけていることがあります。
まず、抽象的な文章だけにならないようにすることです。具体的なエピソード、子どもの姿を描写するようにします。
とは言っても、具体的なエピソードだけとなるのもいけません。エピソードを書いてから、それを一般化するような文を後に書くようにします。
具体的なエピソードだけがたくさん書かれていると、子どもや保護者はうれしく感じるとは思いますが、今後につながる所見とは言い難いでしょう。
また、ポジティブな言葉で初見を書くことも大切だと思います。△や☓の評定をつけることは仕方ありませんが、かといって所見に厳しい内容を書くことにはためらいがありますし、子どもたちには所見からポジティブな気持ちになってほしいものですよね。
所見例10選
下は、所見の一例です。
◆毎日の授業はもちろん、応援団や転校生のお別れ会の司会、後期学級代表など、学校生活全ての場面で積極的な姿勢が見られました。〇〇君がムードメーカーになってクラスがどんどん活発になりました。
◆運動会の応援団になり、全校児童の前で一生懸命に応援合戦をすることができました。練習当初は恥ずかしい気持ちがあったようですが、練習を繰り返し当日はたった一人で応援の呼びかけを大きな声でできました。〇〇さんの声が運動場に響き渡っていました。
◆転校生のお別れ会の一発芸で、剣道の技をみんなの前で披露してくれました。〇〇くんの迫力ある「面!」にクラスメイトも大喜びでした。人に喜んでもらうために自己表現できる〇〇くんの姿に心身の成長を感じました。
◆何事も積極的に取り組むことができます。後期学級代表として、クラスの話合いで一人一人の意見をしっかりと聞き、話合いを進めることができます。「話すこと」だけでなく「聞くこと」の大切さを手本となって示してくれています。
◆読み手をひきつけるような文章を書くことができます。日記でシリーズものの内容を自分で考えて書き、「今日の〇〇くんの日記、どんなこと書いてあるのかな?」と〇〇くんの日記を紹介してもらうことを楽しみにする友達がたくさんいるほどでした。
◆後期学級代表として、学級全体のためにできることを常に考えて行動する姿に感心しました。給食の時間に、みんな遊びの内容を司会進行して決めました。まわりの意見をまとめる力が大きく向上しました。
◆1学期よりもさらに積極性が増しました。運動会で応援団に立候補し、休み時間や放課後に毎日、一生懸命練習することができました。運動会当日、得意のダンスを全校児童の前で堂々と踊ることができました。
◆〇〇フェスタで受付の役割を主体的に工夫して取り組むことができました。お店の前で「いらっしゃいませー! 楽しいよー!」と大きな声と素敵な笑顔でお客さんの呼び込みを一生懸命にしてくれました。
◆人のために動く〇〇君の姿をたくさん見ました。なかよしフェスタの自分のお店(「射的(空気鉄砲)」)で、低学年の子にとても優しく撃ち方やルールを教えてあげたり、玉をつめたりしてあげていました。
◆全体の前でも堂々と話すことができるようになりました。毎日、当番でみんなに大きな声で呼びかけたり、〇〇フェスタでもお店のルールをはっきりとお客さんに説明したりすることができました。
ご自身が書かれた所見は保存しておくことをおすすめします。もちろん、そのままコピペするためではありません。これまでの所見より、少しでも内容を改善するためです。
所見文例を使うのも◯
所見を書くときに困ったら、既存の本などを参考にするのも良いことです。
所見を書くのに本を参考にするのは、心がこもっていない気がすると感じられる先生もいるかもしれません。しかし、出版されている本の文章は当然、練られています。それは、所見の書き方を学ぶための教科書になるのです。また、教師としての毎時間の授業の評価の仕方や、子どもの見方を鍛えるためにも役立ちます。
私のおすすめは『子どもが伸びるポジティブ通知表 所見文例集』(編著:小川拓/学事出版)です。載っている所見がすべて、書名通りポジティブな内容になっているのです。各教科の△評定や、×評定になっている所見も、ポジティブな所見になっています。
1冊ごと学年別になっているので、よりきめ細やかに、文例集が多く載っているところもおすすめポイントです。電子書籍版もありますよ。
また、みんなの教育技術でも、通知表所見文例データベースがありますので、あわせてご覧ください。
松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
イラスト/したらみ
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