「3人組での話合いに挑戦しよう」対話型授業と自治的活動でつなぐ 深い絆の学級づくり #5

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対話型授業と自治的活動でつなぐ 深い絆の学級づくり
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千葉県公立小学校校長

瀧澤 真
対話型授業と自治的活動でつなぐ 深い絆の学級づくり

コロナ禍以降、コミュニケーションに苦労する子供や人間関係の希薄な学級が増えていると言います。子供たちが深い絆で結ばれた学級をつくるには、子供同士の関わりをふんだんに取り入れた対話型授業と、子供たちが主体的に取り組む自治的な活動が不可欠です。第5回は、「3人組での話合い」について丁寧に解説します。

執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真

ペア対話に慣れたら、次のステップへ!

ペアトークする子供

ペア対話には十分に慣れたでしょうか。

毎回の授業で1回はペア対話を取り入れると、1日で5回はできます。とはいえ、授業内容によってはペア対話ができないこともあるでしょうから、少し控えめにして3回とします。

新学年が始まっておおよそ3か月。授業日数は、50日は超えていると考えると、3回×50日=150回はペア対話ができているはずです。

よく言われることですし、自分の経験則としてもそうだと思えるのが、どんなことであれ、100回くらい行うと定着してくるものです。

例えば、辞書を引く取組も、100回くらい行えば、授業の進行に支障のないくらいに素早く引けるようになります。

ペア対話をやろうと思っていたけど、そういえばまだ50回くらいしかやっていないな。そんな方は、ぜひともまずは100回を目指してください。

私は時々、出張などで担任不在の教室に飛び込みで授業をさせてもらいます。すると、日々ペア対話に取り組んでいるクラスはすぐに分かります。話し慣れているのです。話題を設定し、「では、隣同士で話し合って」と言えば、すぐにやりとりが始まります。

逆にほとんど取り組んでいないクラスは、話が弾みません。一見よく話し合っているなと思っても、実際には一方の子供がずっと話をしているということもあります。それでは、話合いが深まっていくはずもありません。

ですので、質は問わずに、まずはペア対話100回を目指しましょう

そして、それが達成できたら、今回のステップ、3人組での話合いに進みましょう。

3人組での話合いは複雑

3人組での話合いは、ペア対話に1人加えるだけ。そんなに変わらない。そんな認識だと、うまくいきません。

2人だとその関係性は3通りです。

・A=B  どちらも同等
・B>A  Bのほうが有利
・A>B  Aのほうが有利

ここに1人加わったらどうでしょうか。

「A>B>C」という関係もあれば、「A=B>C」もありますね。ここで全ての組み合わせを挙げなくても、1人増えただけで何倍もの関係性が生まれることが分かると思います。

こうしたことから、3人組になると、複雑な関係性が生まれ、それによって話に深まりが出るのです。ぜひ3人組での話合いも、積極的に取り入れてほしいと思います。

ただし、関係が複雑になるために、ペア対話と同じ要領でやろうとしても、話合いがうまくいかないこともあるのです。そこで、慣れるまでは型を与え、その通りに話し合うようにさせます。

3人組での話合いの仕方

では、3人組でどのように話合いをさせていくのか、順に説明していきます。

(1)話し合うための準備をする

・3人組をつくる
・話す順番を決める
・1人が話す時間を確認する

3人で話合いを行うことを決めたら、事前に近くの席同士の子でかまいませんので、3人組をつくっておきます。(クラスの人数によりますが)普段、6人の班を編制しておき、それを2つに分けるとよいでしょう。

話す順番はその都度確認します。また、話す時間は1分が基本となりますが、内容によりもう少し長くしてもよいでしょう。

(2)話し合う内容について個々に考える

ここで何も書けないと、話合いに参加できませんので、何を書いたらいいのか分からず困っている子には個別に支援していきます。

話し合う話題については、慣れるまでは簡単なものでかまいません。

○無人島に1つだけ持って行くとしたら、何を持って行くか

こんな話題ならば、楽しく話をしながら、話合いの型も知ることができます。

いずれにせよ、すぐに答えが出るようなことは避けましょう。わざわざ3人で話し合う必要がないですし、話し合って深まりが出るわけでもありません。意見が分かれたり、はっきりしなかったりする話題が適しています。

3人組での話合い活動

(3)意見交流 その1

・1人1分ずつ自分の意見を伝える。
※1分以内に話が終わっても、教師の合図があるまでは話を続ける。
※同じ話の繰り返しになってもよい。

・聞き手はここで意見や感想は述べず、肯定的な反応(うなずく、相づちを打つ)で聞く。
※メモをしてもかまわない。

(4)再び個々に考える

・1分程度、他のメンバーの意見を振り返りつつ、再度、自分の考えをまとめる。

このように静かに、相手の話を咀嚼するような時間を設けることも重要なポイントです。

先ほど聞いた相手の意見と関連させながら、自分の考えを発表するようにします。

(5)意見交流 その2

・再び1人1分ずつ話をする。

難しい場合は、「意見交流 その1」と同じ内容になってしまってもかまいません。同じ話でも2回聞くと、違う感想をもつこともあります。ただ、「可能ならば、相手の話とからめられるといいね」とアドバイスすることは忘れずに。

(6)フリートーク

・2回の意見交流を受けて考えたことを、3分程度自由に話し合う。

相手の話で分からなかったことを質問します。また、相手の話を聞いてどう思ったかや、新たに考えたことなどを話します。あまり堅くならずに、リラックスして語り合うようにアドバイスします。

このように、自由に話し合う時に、思いもよらぬアイデアが出るものです。そのため、実はこの時間が一番重要とも言えます。どんな話合いをしているか、教師がしっかりとキャッチしましょう。

(7)全体での共有

・いくつかのグループを指名し、どんな話合いをしたか報告させる。

どのグループを指名するかは、教師がフリートークの間に選んでおきましょう。

よい話合いをしていたグループや話に深まりがあったグループを紹介していくことで、クラス全体のレベルアップを図ります。

まとめ

いかがでしょうか。ずいぶん形式的な話合いだなと思われたかもしれません。また、難しいと感じたかもしれません。ですが、案ずるよりも産むが易し。やってみれば、そんなに大変ではありませんし、子供たちはそれなりに自由に話し合っているものです。

ペア対話の次のステップとして、ぜひ3人組での話合いに挑戦してみてください。


千葉県公立小学校校長・瀧澤真先生

瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。

イラスト/イラストAC

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【瀧澤真先生ご著書】
まわりの先生から「むむっ!授業の腕、プロ級になったね」と言われる本。(学陽書房)
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