読書の意欲が持続する学級文庫のつくりかた
自慢の学級文庫を設置している先生も多いことでしょう。しかし、1年間を通して活気ある学級文庫を維持するには、教師によるメンテナンスが必要です。この記事では、学級の子供たちの読書への意欲を持続させるために学級担任ができることを紹介します。
執筆/東京都公立小学校教諭・松原夢人
目次
魅力のない学級文庫は読書をする活気を奪ってしまう
新学期になると、子供たちは友達づくりや授業だけではなく、新しくなった学級文庫も楽しみにしているものです。学級担任は、休み時間やテストを提出した後の時間、読書週間などを通じて、日常的に読書活動を進めていると思います。
ところが、ある一定の期間が過ぎてしまうと、多くの子供たちは学級文庫の中で自分が興味をもった本を読み終えてしまいます。まだ読んでいない本を読むように勧めても、やはり意欲が高まりません。
そうしてだんだんと読書をするスピードがダウンしていき、いつしか読書をする活気が学級になくなってしまいます。
さて、どうすればよいのでしょうか?
私の経験から、1年間、学級の子供たちの読書活動を充実させる方法を4つ紹介したいと思います。
1 教師用の貸出カードで図書室の本を大量に借りる
子供たちも図書室用の本の貸出カードを持っていますが、それと同様に教師用もあると思います。
各学校によって本を借りることができる冊数の上限は様々ありますが、おそらく50冊〜100冊を借りることができるのではないでしょうか。
学級の子供たちを図書室に連れていき、一人につき1〜2冊の本を選ぶように伝えます。
選ぶテーマは「学級のみんなにオススメしたい本」です。
子供たちは今まで読んだ本の中から、気に入った本や面白い本を探し出すでしょう。
子供たちが持ってきた全ての本を教師用の貸出カードで借りて、教室にある本棚(学級文庫)に入れておくのです。
この時、元から教室に置いてあった学級文庫をダンボールなどに詰めてしまっておくなどして、図書室の本と混ざらないように注意しましょう。
子供たちは自然と、「この本をぜひ読んでみて」「とても面白いからオススメだよ」と学級の友達に宣伝し始めます。
授業で「おすすめの本の紹介カード」を書かせるのも有効です。
その勢いに乗って読書の意欲が高まり、子供たちがたくさん本を読むようになります。
学級のルールとしては「帰りの会までに全ての本の冊数がそろっていること」さえ守っていれば、十分に機能します。
日直や図書係、図書当番など本の冊数を数える担当を決めておくことで、子供たちが自律的に動いてくれます。
2 地域にある図書館の本の貸出サービスを利用する
進級するにつれて「調べ学習」が積極的に行われるようになるので、学校の図書室にある本や資料だけでは活用しきれません。
放課後に地域の図書館を利用している子供がいるかもしれませんが、習い事に通っていたり、遊びに夢中になったり、学童に参加していたりして、図書館に行く時間がないケースも多く見られます。
そこで、毎月40冊〜60冊程度の学年に応じた本を図書館から学校に送り届けてくれるサービスを活用することをオススメします。
この貸出サービスは、1つの図書館にある本だけではなく、市区町村内にある全ての図書館から集めた本になるので、かなり内容や種類が充実しています。
総合的な学習の時間などの授業で調べたいものがあれば、図書館に依頼すると、学習に関する本をたくさん届けてくれます。
国語の教科書に載っている物語の作者の本も集めることができるため、本を読む幅を広げることもできます。
こうした本を学級文庫として教室に置いておくのです。
そして、1か月くらいで新しい本と交換するようにしましょう。
1か月で50冊届くと仮定すれば、1年間で約600冊(50冊×12か月=600冊)の本が学級文庫にあることになります。子供たちの読書量が増えることは間違いありません。
学級のルールは、上記で説明した「教師用の貸出カードで図書室の本を大量に借りる」場合と同様に、「帰りの会までに全ての本の冊数がそろっていること」を徹底して守らせることが大切です。
また、もし学校の図書室の本も借りているのであれば、混ざらないように注意することも必要です。
自治体によってサービスの有無に違いがありますので、電話で利用の仕方を確認したり、実際に図書館に行って職員の方に相談したりしてみましょう。
3 図書室や図書館でいらなくなった本を教室に置く
図書室や図書館では、傷んだり古くなったりした本を定期的に整理し、廃棄することがあります。その本をもらって自分で所持しておき、教室に置いて子供たちに読んでもらうのです。
学級文庫にたくさんの本が常備されることになって読書活動が充実しますが、デメリットもあります。
- 本が古すぎて、子供が興味を示さないことがある
- 各学年に応じてバランスよく本を並べるのが難しい
- 勤務先の異動や教室の移動の際は、大量の本を運ぶことになる
など考えなければならないことは多々あります。しかし、自分の本なので自由に使えるところには魅力があるでしょう。
4 電子図書館を利用する
近年、注目されているのが電子図書館のサービスです。
図書館では図書館の会員向けに、電子書籍の貸出サービスを提供するようになってきています。
図書館のホームページを通じてアクセスでき、子供たちは図書館の会員証番号やパスワードを使用してログインし、電子書籍を借りることができます。
子供たちは実際に図書館に行かなくても、一人一台端末を使ってインターネットを通じて電子書籍を無料で借りて読むことができるので、様々なメリットがあります。
- 本を読みたい時に、いつでも借りることができる
- 貸出中になっている本がない
- 何冊借りても重さが変わらない(一人一台端末の重さ)
- 隣で読んでいる友達の本に興味をもったら、すぐに借りることができる
- 本の紛失の問題がない
- 家でも一人一台端末を使って読書をすることができる
- 過去にどんな本を読んだのか履歴が残る
- 本を何冊読んだのか把握できる
など、読書活動を充実させるには抜群の効果があります。
電子図書館のサービスを導入すると、「友達の読んでいる本が読みたい!」という希望がタイムラグ無くすぐに叶えられます。「借りたい本があるのに貸出中で借りられなかった」という不満が解消されるので、子供たちの満足度が上がります。
しかし、電子図書館のサービスは始まったばかりなので、まだ本の冊数が少ないのが現状です。今のところは電子図書館と図書室、図書館の本を併用していくことが望ましいでしょう。
また、一人一台端末で本を読んでいると、「目が疲れる」というデメリットがあります。長時間ではなく、時間を決めて読書をさせたり、定期的に目を休ませたりする指導も必要になってきます。
このように、図書館や図書室、電子図書館などの様々なサービスを利用することによって、読書活動を充実させることができます。
何のサービスも利用しないと、1年間学級文庫が変わらない状態で終わってしまうため、子供たちの読書活動が緩慢になってしまいます。
子供たちが読書を好きになり、その本を使って調べ学習に活用するなど、様々なジャンルに興味を広げていくために、教員による読書活動の推進が重要なのです。