小1特別活動「上手な歯の磨き方~6歳臼歯は歯の王子様」指導アイデア
文部科学省視学官監修による、小1特別活動の指導アイデアです。6月は、学級活動(2)「上手な歯の磨き方~6歳臼歯は歯の王子様」の実践例を紹介します。
執筆/鳥取県公立小学校教諭・大坪優子
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
鳥取県公立小学校校長・太田敦弘
目次
年間執筆計画
04月 学級活動(1) 学級会を始めよう!(学級会オリエンテーション)
05月 学級活動(2)ア 元気にあいさつ
06月 学級活動(2)ウ 上手な歯の磨き方~6歳臼歯は歯の王様
07月 学級活動(3)ウ 楽しさ発見 学校図書館
09月 学級活動(1) わくわくハッピー係活動をしよう
10月 学級活動(2)イ みんな仲よくーふわふわ言葉とちくちく言葉ー
11月 学級活動(1) 1年〇組ジャンボかるたを作ろう
12月 学級活動(3)イ きれいな教室
01月 学級活動(2)エ 楽しい給⾷
02月 学級活動(3)ア もうすぐ2年生
03月 学級活動(1) 友達集会をしよう
学級活動(2)ウの指導について
本題材である「上手な歯の磨き方~6歳臼歯は歯の王子様」は、学級活動(2)ウ「心身ともに健康で安全な生活態度の形成」に関わる内容で、心身の機能や発達、心の健康についての理解を深め、生涯にわたって積極的に健康の保持増進を目指すものです。
歯の磨き方についての自己の課題に気付き、上手に磨くための解決方法を考えて、学級で話し合います。そして、学級での話合いを生かして自分に合った磨き方について意思決定をしたり、行動選択を行ったりする活動が中心になります。また、基本的な生活習慣である歯磨きの仕方が定着するように、繰り返し指導したり、保護者と連携して指導したりすることが大切です。
歯の指導について
6~8歳ごろは、乳歯から永久歯への生え変わりの時期です。乳歯は、咀嚼するだけでなく、そのすぐ下で生え変わる時期を待っている永久歯を正しい位置に誘導する役割をもっています。特に、6歳ごろ萌出する6番目の歯「6歳臼歯」は、嚙む力が強く、歯並びの要となる大切な歯ですが、磨きにくいため、むし歯になりやすい歯でもあります。
6月4~10日は歯と口の健康週間です。1年生のこの時期に歯磨き指導を行い、子供たちが歯の大切さを理解できるようにすることは、とても意義のあることだと考えます。
養護教諭との連携について
現在、そして生涯にわたって心身の健康を保持し、健康で安全な生活を送ることができるようにするためには、必要な情報を子供たちが自ら収集し、よりよく判断し行動する力を育むことが重要です。より効果的な指導を目指すために、専門性があり、個人や全体の健康状況を把握する養護教諭と連携して授業をつくり、TTで一緒に授業を展開していくことが大切です。
そこで、今回の「上手な歯の磨き方」の学習では、さぐる段階や見つける段階で養護教諭との連携を図っていきます。
本時の学習過程
〇[つかむ]…実態や現状の把握
・紙芝居で「6歳臼歯」について知り、自分の歯が生えているかどうかを確認する。
・普段の磨き方を振り返る。
〇[さぐる]…原因の追求・改善への意欲付け
・染め出しを行い、普段の磨き方の課題に気付く。
・歯磨きの大切さについて知る。
〇[見つける]…解決方法などの話合い
・上手に歯を磨くために気を付けることを話し合う。
・話し合ったことをもとに、歯磨きを行う。
〇[決める]…個人目標の意思決定
・学習を振り返り、話合いで出された方法などを参考にして、これからの生活で実践していくことを決める。
事前の指導
○子供たちの歯の健康状況を把握する(養護教諭との連携)
むし歯治療の状況や6歳臼歯が生えているかどうかなどを、歯科検診結果をもとに把握しておきます。
○手鏡を準備しておく
学年通信などで歯磨きの授業を行うことを家庭に知らせ、手鏡を持参できる場合は持参するようにしておくとよいでしょう。全員が手鏡を使えるよう、学校でも準備しておきます。
○アンケート調査や歯の染め出しを行う
自分ではきちんと磨いているつもりでもできていないことが多いことから、事前にアンケート調査を行い、歯磨きについての実態を把握しておきます。
可能であれば、歯の染め出しを家庭で行い、赤く染まったところを歯のイラストを描いた用紙に書き込んでおく(赤く塗る)とよいでしょう。※本実践では本時で行っています。
○給食後の歯磨きの様子を観察しておく
給食後の歯磨きをしているかどうか、また、歯磨きにかける時間や、磨き方について観察し、把握しておきます。
本時のねらい
1年生の子供たちは、乳歯から永久歯への生え変わりの大切な時期です。しかし、正しい歯磨きについて十分理解し、しっかりと歯磨きができている子供は少ないと思われます。そこで、6歳臼歯やその大切さについて知り、正しい歯磨きの仕方を探ることを通して、自分の歯みがきの仕方が十分ではないことに気付き、正しい歯磨きをして歯を大切にしようとする意識を高めていくことをねらいとします。
本時の指導
この前、歯科検診をやったね。むし歯があって歯医者さんに行った人もいるね。ではここで問題です。6月4日は何の日か知ってるかな?
何の日だろう。
知ってる! むし歯の日だ。
6月4日は虫歯予防デーです。今日は、養護教諭の○○先生に来ていただきました。歯磨きについてこれから一緒に勉強しましょう
[養護教諭]むし歯にならないためにどうすればよいか知っているかな。これから「歯の王子さま」の紙芝居を読みます。
〇[つかむ]…紙芝居で「6歳臼歯」について知り、普段の磨き方を振り返る
「6歳臼歯」についての紙芝居を読み聞かせ、6歳臼歯の大切さやむし歯になりやすい歯であることについて知ります。
一人一人が鏡を見ながら、自分には6歳臼歯が生えているかどうかを確認します。生える時期には個人差があることも伝えましょう。まだ生えていない子供たちも、これから生えてくる場所を理解しておくことで、生え初めの上手な歯磨きを意識するきっかけとなります。普段の歯みがきで気を付けていることについて話し合う中で、「大切な6歳臼歯をきれいに磨きたい」という課題意識を高めます。
〇[さぐる]…歯の染め出しにより、歯磨きの課題の原因をさぐる。歯磨きの大切さを知る
次に、歯磨きが上手にできない箇所やその原因について話し合います。そして、歯磨きの大切さについて伝えます。
ここでは、養護教諭が個人の状況に応じて、6歳臼歯やその付近の染め出しを行います。それにより、自分の磨けていない箇所がどこか確認し、なぜ上手に磨けないのか原因をさぐります。
また、養護教諭は、歯磨きが十分にできていない状態が続くことで、むし歯になり、歯並びや嚙むことに影響が出てくることを伝え、歯磨きの大切さについて理解できるようにします。むし歯の初期段階、最終段階、中間段階の順に提示することで、突然むし歯になるわけではなく、歯磨きによってむし歯になることを予防できることを分かるようにするとよいでしょう。
〇[見つける]…上手な歯の磨き方を見つける
6歳臼歯がむし歯にならないために、場所に合わせてどんな磨き方をしたらよいか話し合います。子供からは「長い時間磨く」「ていねいに磨く」などの抽象的な意見が出ることが予想されます。それを認めた上で、養護教諭から模型を使って技術的なポイントを教えてもらい、「磨き方のコツ」としてまとめます。
子供たちは、「磨き方のコツ」の中から、特に意識して磨きたいことを決め、実際に歯を磨きます。この時に、学級担任は養護教諭と分担して机間指導を行い、ポイントを意識した歯磨きができているかについて声かけをしたり、指導したりします。
実際に使った「磨き方のコツ」について発表し合い共有することで、この後の具体的な意思決定につながります。
どんなところに気をつけて歯を磨きましたか。
奥の方の歯を磨けていなかったので、横から歯ブラシを入れて磨いたら、赤かったところがきれいになりました。
歯と歯ぐきの間に気を付けて、1本1本ていねいに磨きました。
えんぴつの持ち方で、軽く、コチョコチョ磨きをしました。
〇[決める]…上手に歯を磨くために自分ががんばることを決める
6歳臼歯をきれいに磨くために、自分が気を付けたいポイントを決め、ワークシートに記入します。6月時点では、まだ文を書くことに時間がかかる子供も多いので、ポイントを絵で示し、○印を記入できるようにしておくとよいでしょう。
さっきやってみた「磨き方のコツ」をもとに、染め出しで赤くなったところがきちんと磨けるように、自分がこれから気を付けることを決めましょう。
【資料1】「はのおうじさまを きれいにみがこう」ワークシート ※下記ボタンをクリックするとダウンロードできます。
◆板書例
事後の指導
自分が決めためあてにそって、1週間歯磨きを行い、できたらワークシートに色を塗って振り返ります。めあてを意識して給食後の歯みがきができるよう、授業で出されたコツをポスターにして手洗い場に掲示しておくのもよいでしょう。
また、学年だよりで家庭に取組を知らせたり、懇談会で話題にしたりすることで、家庭と連携を図り、実践継続化につなげましょう。
イラスト/高橋正輝