楽しみながら体力向上!学校での「冬の外遊び」アイディア7つ
外遊びをたくさん楽しむことが、子供たちの体力向上につながります。体育授業と休み時間の外遊びは、体力向上の両輪です。外遊びを楽しむ習慣が、生涯にわたっての豊かなスポーツライフの素地になります。
執筆/埼玉県公立小学校教諭・栗原龍太
栗原龍太●志は「目の前の子供に全力を尽くす教師」。共著に教育技術MOOK『8つの極意! 長なわ8の字跳びの指導法』『チームで取り組む中学生生徒指導入門』(小学館)他
目次
外遊びをする前に
1 冬の外遊びこそ、体力向上のカギ
外遊びをたくさん楽しむことが、子供たちの体力向上への一番の方法だと言われています。したがって、体育授業での運動遊びと、休み時間での外遊びは、体力向上の両輪であると考えられます。
一年生の子供たちにとって、休み時間の外遊びは魅力にあふれています。運動場を思いっきり走り回ったり、ジャングルジム、雲梯、登り棒などの固定施設を登り下りしたり、体を動かす場がたくさんあります。一日の休み時間を合計すると、1時間程度になる学校が多いかと思います。したがって、体育授業以外にも休み時間の外遊びで、毎日十分に運動することができます。
一年生の段階で、外遊びを楽しむ習慣を身に付けていることは、生涯にわたっての豊かなスポーツライフを実現するための素地になります。
2 子どもは風の子! 寒さに負けない工夫を
「外は寒いから、温かい教室にいたい。」「外に出たくない。」というのは、自然な感情です。子供たちの「寒い」という感覚に教師も共感しながら、一緒に外に出られるようにします。授業が終わってから、廊下を歩き、運動場に出るまで、子供たちと同じ動線で移動します。同じ廊下を歩き、同じ靴箱から運動場へ。教師が楽しく元気に運動場へ行く姿を見せることが、子供たちの外遊びへの意欲につながります。
また、同じ動線で教室に戻ってくることで、手洗い・うがい・水分補給等も子供たちと共に行うことができます。教師の姿は、子供たちのよいお手本となり、よい習慣づくりにつながります。
3 ルールやきまりを守ると楽しいという経験を
「鬼ごっこ」という遊び一つとっても、子供たち一人ひとりが考えるルールには、小さなズレがあります。そのズレを修正して、みんなのルールを作ることが大切になります。小さなズレをそのままにしておくと、うまく仲間に入れない子が出てきたり、言い争いになってしまったりすることがあります。そこで有効なのが、教師も子供たちと一緒に遊ぶことです。ルールにズレが出てきた時点で「この場面では、こうしようね」と話すことで、ズレを解消することができます。
ルールの共通理解が、みんなで楽しく遊ぶことにつながります。ルールやきまりを守ると楽しいという経験を、たくさん積めるようにしましょう。
4 運動遊びと外遊び
低学年では、体育授業での運動遊びと、休み時間での外遊びが密接に関わり合っています。体育授業では、各種の運動遊びを教師が指導し、休み時間はそれらの運動遊びを子供たちが自主的に取り組む場になります。このような運動のみならず、休み時間に目を外に向けてみると、昆虫や植物とふれ合ったり、水に張った氷に目を向けたりしている子供たちもいます。もちろんそれらにも価値があります。あくまで休み時間ですから、途中から参加したり、途中で遊びをやめたりする場合もよくあるものです。
したがって、本稿で紹介する外遊びは、途中からでも参加できる、途中から抜けることもできるといった、外遊びのヒントを7つ紹介します。クラス遊びに限定せずに、他学年の子供たちも自由に参加できるような内容になるように考えました。
1・ジャングルジムのてっぺんまで「よーい、どん!」
人数の目安:5~30人くらい
遊びの時間の目安:1~5分
遊び方&ルール
子供たちと一緒に外に出たら、「ジャングルジムのてっぺんまで! よーい、どん!」と言います。子供たちはキャーキャー言って走り出します。教師が「よーい! どん!」とかけ声をかけるだけで、子供たちは大喜びです。「けやきの木まで」「登り棒まで」というように、明確な場所を次々に示します。子供たちの様子を見ながら教師も一緒に走ります。シンプルだからこそ、誰でも楽しく取り組めます。
ゴールしてから顔を見合わせると、お互いの吐く息が白いことに気付きます。冷たい外気の中を全力疾走することで、心と体がポカポカしてくることを実感できる瞬間です。
繰り返し取り組むことで、子供たちの早く走りたい気持ちが高まってきます。すると、だんだん子供たちは「よーい、ドン」を待てなくなってきます。夢中になっている証拠です。そこで、「ジャングルジムのてっぺんまで。鉄棒にタッチしてから! よーい、どん!」とします。順位に変動が出て、さらに熱中します。慣れてきたら、「すべり台を滑って戻ってこよう」「鉄棒で前回りを5回したら戻ってこよう」というように、課題を出しても楽しいです。行先が描いてある絵や写真を示して、その場所に行くようにしても盛り上がります。
冬の外気に触れながら、全力疾走するのは、とても気持ちがよいものです。息を弾ませながら白い息を感じ、心も体もポカポカになれます。
2・へびじゃんけん
人数の目安:5~10人くらい
遊びの時間の目安:5分
遊び方&ルール
運動場に1本の長い線を引きます。片側に女子、片側に男子が陣取ります。先頭の子が線の上を走ります。途中で、相手と出会います。両手で「ドン」と言ってタッチします。その後、じゃんけんをします。勝ったらそのまま進み、負けたら戻って自分の陣地の一番後ろに並びます。負けたチームは、次の子が走っていきます。相手チームの陣地に入ったら勝ちです。
走力だけで勝敗が決まるのではなく、じゃんけんの要素が入ることで、走ることにあまり意欲的でない子も、知らず知らずのうちに熱中できるよさがあります。いろいろな形状の直線上を真っ直ぐに走ったり、蛇行して走ったりすることは、一年生のうちにたくさん経験しておきたい動きの一つです。
線の代わりに円や横並びの円を描いて、ケンパーじゃんけんにすることもできます。ケン(円)とパー(横並びの円)を地面に描いておくことで、自然にリズムよく跳ぶことができます。先生もリズミカルに跳んで見せたり、子供の動きに合わせて声をかけたりすることで、子供たちの意欲をさらに高めることができます。
分かれ道をつくったり、間隔をあけたケン・パーステップの場をつくったりすると、相手の動きに合わせて動いたり、チームごとに作戦を考えたりと、子供たちの思考が働きます。相手とじゃんけんをすることで夢中になり、心も体もポカポカになります。
片足や両足で、いろいろな間隔に並べられた輪等を連続して前方に跳ぶことも、一年生のうちにたくさん経験しておきたい動きの一つです。
3・コロコロドッジボール
人数の目安:10人くらい
遊びの時間の目安:10分
用意する物:ボール
遊び方&ルール
運動場に円を描きます。子供たちは円の中に入ります。教師が円の外からボールを転がし、子供たちはボールに当たらないように逃げます。円の大きさを大きくしたり、ボールをゆっくり転がしたりすることで、最初は子供たちが当たらないように工夫します。慣れてきたら、当たった子供は円の外に出て、ボールを転がす側になります。全員当たったら終了です。
上級生のドッジボールを見ている一年生は、ドッジボールに興味があります。しかしボールが怖い、当たると痛いなどの理由から、一部の子供しか参加できないことが往々にしてあります。そこで、大人気なのが「転がしドッジ」です。従来のドッジボールと異なり、キャッチする動作がないため、子供たちは、逃げることに集中することができます。ボールに当たらないように逃げる面白さが味わえます。
新しいルールを追加しても楽しめます。例えば、
①外からボールを当てたら、中に入れる。
②円を小さくする。
③ボールを2個にする。
④逃げる範囲を円ではなく、四角や三角、星の形にする、など。
教師がボールを投げるふりをしたり、かけ声をかけたりすることで、子供たちの反応を見ながら、子供たちがドキドキを楽しめるように盛り上げましょう。
十分に逃げる楽しさを味わってから、定番のドッジボールに移行することで、小学校生活でドッジボールを楽しめる技能が身に付きます。
ボールに当たらないように、空いている場所を見つけて速く走ったり、急に曲がったり、身をかわしたりすることも、一年生のうちにたくさん経験しておきたい動きの一つです。
4・鬼ごっこ
人数の目安:10~30人くらい
遊びの時間の目安:10分
用意する物:ボール、かご、体育帽、攻めのマーク
遊び方&ルール
①宝取り鬼(ゲーム)
赤白2チームに分かれ、攻めと守りを決めます。攻めの白チームは、陣地を出て、鬼(赤チール)を取り、コートの外を回って戻ってきます。宝は1回に1個だけ持ち帰ることができます。鬼にタッチされたら、陣地に戻って再スタートします。時間を決めて攻守交代し、陣地に持ち帰った宝の数で競います。
空いている場所を見つけて、素早く走ったり、急に曲がったり、身をかわしたりすることも、一年生のうちに経験しておきたい動きの一つです。
②ボール運び鬼
2チームに分かれ、攻めと守りを決めます。攻めの3人全員がボールを持ってスタートゾーンからスタートし、鬼ゾーンにいる鬼(守り)にマーク(ハンカチなど)を取られないように、得点ゾーンへ走り込むと得点です。3回の攻めで攻守を交代し、得点を競います。一人が得点ゾーンに入ると1点。1回の攻めで全員が得点した場合には、3点のボーナス点が加算されます。
③分裂手つなぎ鬼
2人組で鬼になります。鬼は手をつないでいないと、捕まえることはできません。捕まった人は、鬼と手をつないで3人組になります。4人組になったら、2人組に分かれます。最後まで捕まらずに残った人が勝ちです。決められた範囲内から出てしまったら、捕まったことになります。「鬼のペアは男女のペアのみ」というルールを加えても盛り上がります。
5 鉄棒や登り棒で遊ぼう
人数の目安:2~10人くらい
遊びの時間の目安:5分
用意する物:安全のためのマット
遊び方&ルール
①逆さまじゃんけん
鉄棒で「ふとん干し」「こうもり」「ぶたの丸焼き」をして、逆さまになります。そして、友達と向き合ってじゃんけんをします。逆さまの不思議な感覚と、逆さまになった景色を楽しみましょう。空気が澄んでいる冬の空は、とても美しいです。特に快晴の日は、子供たちがその青さに見とれてしまうほどです。真っ青な空が足元にあり、頭の上に地面がある。これはとても気持ちのよい逆さ感覚です。登り棒やジャングルジムを使っても、逆さの姿勢を楽しむことができます。
②ジャンプキャッチ
鉄棒にぶら下がるだけでも、十分楽しめます。伸ばした手が鉄棒に届くと、とてもうれしいものです。慣れてきたらジャンプしてつかまって、何秒間ぶら下がれるか計ったり、友達と競争したりすると盛り上がります。
しっかりぶら下がることで、握る力も次第についてきます。握る力がつくと、雲梯や登り棒などの固定施設でも楽しく遊べるようになります。
鉄棒の下には、安全のためにマットを敷きます。教師は、必ずそばについて必要に応じて補助しましょう。
③登り棒で、スパイダーマン
登り棒を2本使って登ります。手と足を使うと、スムーズに登ることができます。運動場の隅っこに登り棒が寂しそうになっていませんか。登り棒と友達になりましょう。
6 子取り遊び ~花いちもんめ~
人数の目安:10~16人くらい
遊びの時間の目安:10分
遊び方&ルール
2チームに分かれて、それぞれ手をつないで向き合います。Aチームが「ふるさともとめて花いちもんめ」と歌って前進し、「め」の瞬間に片足を大きく振り上げます。その時に、Bチームは歌わずに後ろに下がります。続いて、Bチームが「ふるさともとめて花いちもんめ」と歌って前進します。このようにA・Bチームで「花いちもんめ」を歌いながら、相手チームの誰かを取る遊びです。
A「隣のおばさん、ちょっときておくれ」
B「鬼がこわくて行かれません」
A「お鍋かぶって、ちょっとおいで」
B「お鍋底抜け、行かれません」
A「お布団かぶって、ちょっとおいで」
B「お布団ぼろぼろ、行かれません」
A「あの子が欲しい」
B「あの子じゃわからん」
A「この子が欲しい」
B「この子じゃわからん」
A「相談しよう」
B「そうしよう」
各チーム輪になって、相手チームの誰が欲しいかを決めます。決まったら「決ーまった」と言います。
A「○○ちゃんが欲しい」
B「△△ちゃんが欲しい」
名前を呼ばれた2人はじゃんけんをし、負けた人は相手の仲間となります。
勝ちチーム「勝って うれしい 花いちもんめ」
負けチーム「負けて 悔しい 花いちもんめ」
勝ちチーム「隣のおばさん ちょっときておくれ」
というように続けます。常に動きながら歌を歌うので、心も体もポカポカになります。
相談したり、名前を呼んだりするので、仲間づくりにも大変有効なわらべうた遊びです。
7 おしくらまんじゅう
人数の目安:5人くらい
遊びの時間の目安:1分
遊び方&ルール
腕を組んで背中を合わせて円になります。「おしくらまんじゅう押されて泣くな」と歌いながら、肩を寄せて押し合います。体と体をくっつける面白さを感じたり、ギューギュー押すことで体の温まりを感じたりすることができます。
子供たちの円陣の外側に円を描き、押されてはみ出してしまった子は、アウトになるルールにすると、さらに盛り上がります。
教師も一緒に輪に入って遊び、力加減のバランスが取れるように配慮します。
イラスト/佐藤雅枝
『小一教育技術』2019年1月号より