必ず覚えたい! 子どもたちの下の名前~小学校の家庭訪問や学級懇談会で大切なこと~
子どもたちを、教師は名字で呼ぶように定めている学校も増えてきています。年度当初の家庭訪問や学級懇談会などで保護者と話すとき、子どもの下の名前が出てこなくて困ってしまった、なんて経験のある先生もいるのではないでしょうか。そんな事態を避けるために、今回は、子供の名前をしっかりと覚えられるようにするための工夫を紹介します!
【連載】松下隼司の笑って!!エヴリディ
目次
【しくじり】 保護者と話していて、子どもの下の名前をど忘れ!
名前の呼び方は、いろいろあります。名字、下の名前、ニックネーム、呼び捨て、「ちゃん」「くん」「さん」をつけるなどです。
20年以上前、私が教師になった頃は、普段から子どもを下の名前(例えば「健太君」「愛ちゃん」)で呼んでいました。だから、保護者と話すときにも子どもの下の名前が自然と出てきました。
でも最近は、下の名前ではなく、上の名字で呼ばないといけない学校が増えてきました。例えば、「松下 愛」という子どもだったら、教師は「松下さん」と呼びます。「愛さん」「愛ちゃん」「愛」と呼んではだめなのです。
子どもたち一人一人に対して、全ての教職員が平等に接するために、一律に上の名字を「さん」づけで呼ぶ学校が増えてきたというわけです。
そうして普段、上の名字で子どもたちを呼んでいると、下の名前が咄嗟に出てこないときがあるのです。
保護者と話していて、子どもの下の名前をど忘れしてしまったときは、できるだけ名前を出さずに会話を組み立てることに必死でした。保護者の前で、子どもの名前を名字で呼ぶのは不自然です。「お子さん」と言うと、冷たい印象を与えるかもしれません。
ここでは、拙著『教師のしくじり大全 これまでの失敗と改善策』から、家庭訪問や学級懇談会で保護者と話すときに、子どもの下の名前を覚えていられるようにするための工夫を紹介します。
教師のしくじり大全 これまでの失敗とその改善策(著:松下隼司/フォーラムA企画)
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【しくじり回避法1】インターホンを押す直前に確認
普段、子どもを名字でしか呼んでいないと、下の名前が咄嗟に出てこないかもしれません。
そこで私は、家庭訪問のとき、
家のインターホンを押す直前に、必ず名簿を見て、子どもの下の名前を確認する
ようにしています。
保護者に、「お子さん、休み時間も友達と鬼ごっこをして……」と言うより、「愛さん、休み時間も……」と言うほうが温かさが伝わります。子どもの下の名前を呼ぶことで、子どもを大切に思っている気持ちがより伝わるかと思います。
【しくじり回避法2】普段フルネームで呼ぶことでしっかり覚える
しかし私は後になって、下の名前だけで呼んではいけない学校の場合、
「名字+名前」のフルネームで呼ぶ
ようにすればいいやん! と気づきました。「松下さん」でなく、「松下愛さん」と呼ぶのです。
新たに受け持つ子が多くなる1学期、みんなの名前をしっかりと覚えるためにも、フルネームで呼ぶように心がけてみます。この工夫によって、1学期はじめにある学級懇談会で保護者と話すときも、子どもの下の名前が出てこなくて焦ってしまうなんてことはなくなりました。
名字だけでなく、フルネームで子どもを呼ぶことの良さは、名前を覚えられることの他にもあります。
特に低学年に多いのですが、「松下さん……松下さん……松下さん!!!」と名字を何回呼んでも、気づかない子どもがいます。そんな子どもも、「松下 愛さん」と、下の名前もつけて呼ぶと、1回で気づきます。
普段、保護者や友達からは下の名前で呼ばれているからだと思います。また、保育園や幼稚園の頃は、先生から下の名前で呼ばれていたのではないでしょうか。
下の名前で呼ぶことは、「子どもと担任との関係づくり(愛着形成)」にも効果があると実感しています。
自分も、「松下先生」と呼ばれるよりも「隼司(じゅんじ)先生」と下の名前で呼ばれるほうが、親しみをもってくれている気がして、嬉しく感じます。子ども同士でも、名字よりも下の名前で呼び合う方が、お互いに親近感が沸くことでしょう。
松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
イラスト/したらみ