先生方の疑問にお答え!小学3・4年『外国語活動』Q&A
2020年度からいよいよ学習指導要領が全面実施され、小三小四の外国語活動が週1コマ導入されます。外国語活動の授業づくりについて現場の先生方から出たさまざまな疑問について、英語教育のスペシャリスト・白石裕彦先生が回答します。
目次
言語活動に関するQ
白石裕彦●東京都公立小学校主任教諭
文部科学省・東京都英語教育推進リーダー
国際科(小学校英語)専科担当
川﨑真理●神奈川県公立小学校教諭
川﨑 今回の学習指導要領には「言語活動を通して」とありますが、 外国語ではどのような活動をすればよいのでしょうか。
白石 「言語活動」という言葉は現行の学習指導要領から入っています。外国語活動は、言語活動そのものと言ってもよいのですが、外国語活動における言語活動は現行では、「練習のための活動」と「自分の思いや考えを伝え合う活動」の二つに定義されています。しかし、今回の学習指導要領の改訂では、「練習のための活動」は言語活動の定義ではなくなり、「自分の思いや考えを伝え合う活動」だけに再定義されました。(資料A)
そうなったのは、単なる練習のために行われるゲーム性の高い活動は、それだけで終わるところが多く、本当の活用になっていないという実態があったからです。
他の教科においても、言語活動は「自分の思いや考えを伝え合う活動」なので、他の教科と同様になったと考えればよいでしょう。
例えば、三年の「Let’s Try! 1」では、数をテーマにしたユニットで、好きな漢字の画数を紹介し合う活動があります。ここでは、自分の好きな漢字の画数を伝え合うために、まずは自分で漢字を選び、その後、選んだ漢字の画数を友達に伝えます。(資料B)
また、四年の「Let’sTry! 2」では、自分のお気に入りの時間を伝えるという活動があります。自分の好きな時間を理由とともに伝え合います。(資料C)
言語としてはこれまでと同じですが、そこにちゃんと自分の思いが入っているというところが違います。自分のことを自分の言葉で伝える活動が強化されているのです。
川﨑 自分の思いが入るときは、追加で説明したいときがあると思いますが、日本語で説明してもよいのでしょうか。
白石 できるだけ既習表現でなんとかニュアンスを伝えるように工夫していくことが大切です。自分のお気に入りの時間を例にとると、I like three. Why? I like snacks. というように既習表現を使ってなんとか伝えるようにします。
川﨑 授業では、オールイングリッシュでなるべく英語を使っていくということをよく聞きますが、単元のはじめに「こんな課題をやるよ」と言うときには日本語を使ってよいのですか。
白石 私は絶対にオールイングリッシュでなければいけないとは思いません。必要に応じて日本語を使ってもよいと思います。ただ、なるべく日本語は少なく、英語を多くするよう心がけています。その際、写真や絵など、何か具体物があると分かりやすくなりますね。例えば、札幌に旅行に行った話をするときは、現地で食べた物の写真を見せ、
I went to Sapporo. I ate soup curry.
It’s delicious. Do you like curry?
などと尋ねるようにします。日本語と同じようにしゃべるのは難しいでしょうが、2、3行でもかまいません。
先生からの一方通行ではなく、やり取りを心がけます。
五、六年の「We Can! 」に新しく登場したのが、スモールトークです。しかし、いきなり五年生で「はい、やりましょう」と言っても難しいので、三、四年生の授業の中でもスモールトークの要素があるとよいですね。
例えば、リアクションの表現などを積極的に使っていくとよいでしょう。それが、五、六年のスモールトークにつながります。
永渕 上手に英語をしゃべらないといけないと思わないで、自分のハードルを下げて話してみるということですね。
永渕耕●神奈川県立小学校教諭
白石 はい、そうです。英語が上手ということで子供は憧れるかもしれないけれど、「こんな英語でもいいんだよ」という見本になればよいのです。コミュニケーションのストラテジー(戦略)を身に付けさせていきます。そうしてやり取りに慣らしていきます。(資料D、E)
Answer
・自分の思いや考えを伝え合う活動を強化していきましょう。
・授業では、なるべく英語を多く使うように心がけます。
授業の型に関するQ
永渕 授業の型を決めておいたほうがよいのか、それとも毎回違うほうがよいのか。どのようにすればよいのでしょうか。
白石 初期段階は、決めておいたほうがよいと思います。先生も安心ですし、子供たちも見通しをもちやすい。基本的には、導入、展開1、展開2、まとめのだいたい4分割ぐらいにするとよいでしょう。
本校では、例えば、導入時に名札交換をして、今日のスモールトークを行います。今日のめあてを確認して、軽いアクティビティ、ゴールにつながるようなアクティビティの後、ふり返りというパターンになっています。
ただ、他の教科もそうですが、単元全体の流れの中で考える必要があります。単元の最初は表現、語彙に慣れていく段階があり、それを試していく活動があって、最後に思いを伝え合う活動があります。単元の終盤ではメインの活動を多く行ったほうがよいので、段階に応じて型から自然に外れていくことになるでしょう。
Answer
・初期段階は授業の型を決めておくほうが先生も子供も安心できます。単元の流れによって変化が出てくることになるでしょう。
教材に関するQ
吉野由起●神奈川県立小学校教諭
吉野 三、四年はLet’s Try!からアクティビティを選んだほうがよいのでしょうか。教材はどのように選ぶとよいですか。
白石 東京都港区は教育特区で、外国語活動にあたる国際科は週2コマあり、文部科学省の教材のパターンにはまりません。ですので、東京都の副教材や、さらに港区の教材を使っています。
教材をどう選ぶかは、子供たちの実態や学校の実態によると思います。しかし、全国同じ教材を実践するのは、学校間格差をなくすためで、その意味では大切なことです。
学習指導要領に則っている「Let’sTry! 」は使ったほうがよいと思います。
ただ、もし他の教材を使う場合は、「Let’sTry! 」のユニットごとにテーマとなる表現があるので、それを落とさないようにします。
また、各ユニットでどういうコミュニケーションをさせようとしているのか、そのねらいを理解しないと表面上のコミュニケーションだけになってしまうので、気を付けたいですね。
吉野 押さえないといけないところは押さえつつ、足りないところはほかのところから補っていくということですね。
Answer
・Let’s Try! は使ったほうがよいでしょう。もし、他の教材を使うときには、Let’s Try! にあるユニットごとのテーマとなる表現を見落とさないことが大切です。
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「書くこと」に関するQ
白石 今回、「聞くこと」「話すこと(やり取り・発表)」「読むこと」「書くこと」の4技能5領域に枠組みが変わりました。五、六年に「読むこと」「書くこと」が入り、三、四年に「聞くこと」「話すこと」が下りてきました。「書く」についての六年のゴールは、自分たちが音声で慣れた表現について、「書き写す」ということです。
永渕 黒板に文字を書いて指導するほうがよいのでしょうか。
白石 そのほうがよいと思います。音声としての言葉はたくさん言ったり聞いたりします。子供の頭の中に音声と意味があるわけですから、次は音声と文字をマッチさせるという作業になります。
吉野 三、四年ではどこまでマッチできるようにするとよいのでしょうか。
白石 三、四年の指導には、読み・書きが入っていません。しかし、実はひそかに入っていて、聞いてその文字を識別するというユニットがあるんですよ。例えば、「エイ」と言ったら、Aという文字をイメージできるかということです。「聞く」の領域に入っていますが、「読む」につながる活動と言ってもよいでしょう。「Let’s Try! 1,2 」どちらもアルファベットの単元があります。あくまで、音声を聞いて、その文字が認識できるかどうかという学習になります。
さらに言うと、三年生では、外国語活動以外の学習で「書く」につながるものがあります。
吉野 ローマ字の学習ですね。
白石 ローマ字の学習として三年で読み書きを行っています。三年ではローマ字の学習とアルファベットの単元を同じ時期に行います。
吉野 子供はローマ字と英語が混乱するようですが、どのように指導すればよいのでしょうか。
白石 「文字としてアルファベットを使っているけど、ローマ字は日本語で、英語とは違うんだよ」ときちんと説明すれば子供たちも分かります。いっしょにすると比べられるから、違いも分かりやすいでしょう。
訓令式とヘボン式についても説明が必要です。
看板の文字がヘボン式なのは、外国人が読むからです。例えば、「ち」がCHI だと外国人は発音しやすいですが、TI だと違う音になってしまいます。子供たちが納得できるように話してあげれば区別できるはずです。
アルファベットの音については、混乱しやすいのがRとL、BとVなどです。子供たちがつまずきやすいところを押さえて指導することも大切ですね。
Answer
・黒板に英語の文字を書いて指導するほうがよいでしょう。
・三、四年には「聞くこと」「話すこと」が入ってきます。「読むこと」「書くこと」は五、六年に入りますが、それにつながる内容を三、四年で行います。
・ローマ字は日本語で、英語とは異なることを説明すると子供たちも理解します。
「聞くこと」「話すこと」に関するQ
永渕 子供たちにとって分かりやすいと思って、What do you like? を1単語ずつ区切りながら動作と合わせて言っているのですが、区切って言うのがよいのかどうか迷っています。
白石 文字としては語で分かれているのですが、英語のナチュラルな音から言うと単語で分断して話すのはよくありません。最初の段階はよいとしても、だんだんナチュラルなスピードやナチュラルな言い回しにするとよいと思います。
永渕 子供たちが楽しそうにやっているから、そのままにしていたのですが、だんだん、動作を抑えて、ナチュラルにしていくようにします。
白石 子供たちが意欲的にやっているなら、それはそれでいいんですよ。「すごいね」とほめてから、「でも普段そんなふうにやらないじゃない? 動作がなくてもできる?」と言って、できる子がいるようなら動作を徐々にはずしていけばよいと思います。指導を段階的に変えていくとよいでしょう。
川﨑 英語で、絵と一緒に音声をカタカナで表記するのはよいのでしょうか。
白石 カタカナは、あくまでもカタカナでしかありません。英語は英語の音声として入れたほうがよいでしょう。子供がカタカナを書く分には、彼らのやり方なので、しかたないと思いますが、こちらからはそのように指導はしません。カタカナを書いた時点で英語ではなくなってしまうからです。そうすると英語の音声に注目しなくなります。
私は、スピーチのときには、子供たちにカタカナを書かせないようにしています。最初、カタカナを書いている子がいても「書くんだったら英語を書こうね。何度でも聞いて、耳で覚えてごらん」と指導しています。
Answer
・最初の段階では動作と合わせても、徐々にナチュラルな音とスピードにしていきましょう。
・英語の音声をカタカナで書くと、子供が音声に注目しなくなるので、そのようには指導しません。
ALTとの連携に関するQ
川﨑 ALTと打ち合わせをするとき、日本語があまり話せない人だと相談が難しいのですが、どのようにすればよいでしょうか。
白石 日本語が話せないALTが自分のプランをもってくるけれど、修正を伝えたくても伝えられないという話をよく聞きます。それは、主体を相手に預けてしまっているからです。授業をつくる主体をこちら側にもってこないと難しいでしょう。「自分の思いを伝える」というときに、ALTが必ずしも学習指導要領を理解しているとは限らないので、ゲームのみで終わってしまうようなこともあります。子供の実態が分かった教師が授業をつくらないと、ねらいがぶれてしまいます。
吉野 私もALTに、どの程度入っていただくかが難しいと思っています。基本的には担任主導で授業を進め、ALTには発音やデモンストレーション、あとは困っている子に声をかけてもらうことをお願いしています。どういうところで、ALTに入ってもらうのが効果的なのでしょうか。
白石 英語を発音する、デモンストレーションする、個別の指導もするというのはALTもかなり行っていると思います。
ただ、発音するだけだと彼らもやりがいを感じにくいので、もう少し活躍してもらえるとよいのですが、担任が安定的に授業を進めていくようにならないと難しいですね。
だんだん慣れて、ALTとのコンビネーションがよくなってくると、「もう少しこうしていこうかな」というような意見が出てくると思います。それには二人の関係性がよくないといけないし、うまくコミュニケーションをとっていかないといけません。
永渕 私の場合は、なんのためにやるのかということがうまく伝わらなくて困っています。「これをやります」と言うと、ALTにWhy? と聞かれてしまうのです。どのように伝えればよいでしょうか。
白石 個々の活動で見ると説明が難しくなるかもしれませんが、単元全体を見て「最終的にはこうしたい。そのためには、これとこれを覚えたい」と、ゴールを共有しておけばよいと思います。
そのときに授業づくりの主体はこちらにもってくるけれど、いっしょにつくってもらう姿勢を示すとよいと思います。「こうしたいんだけど、どう思う?」というように聞くことも大切です。
毎回、打ち合わせをするのは時間的に難しいので、1単元をまとめて話しておき、ゴールのときにはこうしたいと、子供のゴールの姿を共通理解しておくとよいでしょう。
Answer
・授業づくりは担任の主導で行います。
・ALTとは、単元のゴールを共有することが重要です。
評価に関するQ
吉野 学習評価に対してはどのような準備をしていけばよいでしょうか。
白石 学習評価に関するガイドブックは今年6月に出ました。評価の目的は、第一が子供たちの成長につながるため、第二が教師の指導改善。その二つが大きな柱になっています。(資料F)
子供たちがどういうふうに成長したかということを彼ら自身が実感するために評価するということです。体育などの実技系教科と同じ感覚になるのではないかと思います。
三、四年は記述の評価になりますが、子供をしっかりと見とる目をもつことが大切です。よいところをほめて、足りなければ支援する。これがとても重要です。(資料G)
永渕 評価は難しいですね。
白石 難しいですね。あと半年の間に試してみてください。移行期間はそのためにあるんです。
まずは、新学習指導要領に則った授業をする。子供たちを見とり、子供たちを伸ばせるように支援する。今までの学びを生かし、これからの学びにつなげましょう。外国語活動が外国語教育のスタートであることに変わりはありません。
3人 はい、分かりました。学習指導要領の本格実施に向けてがんばります。
Answer
・評価は子供たちの成長実感のためにあります。来年度までに子供たちをしっかり見とり、支援できる力を養いましょう。
取材・文/浅原孝子
撮影/横田紋子(小学館)
『教育技術 小三小四』2019年12月号より