小6算数「算数のまとめ」 指導アイデア《算数のクイズ(仕事算)に取り組む》
執筆/福岡市立城南小学校主幹教諭・石橋大輔
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、福岡教育大学教授・清水紀宏
目次
単元の展開
第1時 中学校の数学の問題(0より小さい数)に取り組む。
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第2時 中学校の数学の問題(図形の性質を利用した作図など)に取り組む。
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第3時 ほかの国の算数について調べたり、問題に取り組んだりする。
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第4時 和算について調べたり、和算の問題に取り組んだりする。
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第5時(本時)算数のクイズ(仕事算)に取り組む。
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第6時 算数のクイズ(面積図など)に取り組む。
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第7時 算数のパズル(魔方陣など)に取り組む。
本時のねらい
単位量当たりの大きさや割合の学習を基にして、仕事算の解き方を考える。
評価規準
「全体を1と見る考え」などを活用して、仕事算を解決することができる。(思考・判断・表現)
本時の展開
イベントのお知らせの紙をふうとうに入れるために紙を4等分に折ります。
・Aさんが1人でこの作業をすると12分間かかります。
問題場面が想像できますか。(紙を4つに折る様子を見せる)
紙を折るのに12分もかかるの?
イベントだから案内の紙がたくさんあるのだと思います。
この場面には続きがあります。
イベントのお知らせの紙をふうとうに入れるために紙を4等分に折ります。
・Aさんが1人でこの作業をすると12分間かかります。
・Bさんが1人でこの作業をすると8分間かかります。
AさんとBさんの作業の進み具合についてどんなことが分かりますか。
Bさんのほうがかかっている時間が少ないです。
Bさんのほうが折るスピードが速いと思います。
Aさんのほうが折るスピードが遅いと思います。
なるほど。Aさんは紙をていねいに折っているのかもしれませんね。さらに続きがあります。
イベントのお知らせの紙をふうとうに入れるために紙を4等分に折ります。
・Aさんが1人でこの作業をすると12分間かかります。
・Bさんが1人でこの作業をすると8分間かかります。
・AさんとBさんがいっしょにこの作業をすると、何分間かかるでしょう。
AさんとBさんの2人で一緒に作業をすると、どのくらいの時間がかかると思いますか。
平均すると10分です。だから、10分かかると思います。
でも、Aさん1人でも12分でできるんだから、2人だったらもっと早くできるはずです。
じゃあ、半分の5分ぐらいかな。
平均の考えを使って考えていますね。(平均の考えでは正答を得られないが、子供から提案されたら、ここでは認めておきます)
5分かもしれないけど、このままでは分からないと思います。
どういうことですか。
紙が何枚あるかが分からないからです。紙がたくさんあると時間が余計にかかるかもしれません。紙が何枚あるか分かれば2人の作業の速さを求めることができると思います。
確かに紙の枚数が分からないと考えにくいですね。何枚だと思いますか。
※子供が、100枚、200枚などと言う。
では、紙の枚数が120枚あって、2人で作業をした場合を考えてみましょう。
2人で作業をしたときにかかる時間について考えよう。
本時では、仕事算を扱います。中学校の入試問題の準備を経験していない子供には、「ある仕事をAさんが1人ですると……」などと言っても、その場面をイメージしにくいと思われます。仕事という言葉から、この授業で扱う場面がイメージしにくいかもしれないので、ここでは紙を折るという場面を用い、「仕事」の代わりに「作業」という言葉を使っています。
仕事算の解法では、仕事全体の量を1と見るという方法がよく使われます。本時では、この考えを天下り的に与えるのではなく、紙の枚数が公倍数の場合を考えさせます。複数の事例を扱うことで、紙の枚数が異なる場合も、2人のそれぞれの作業の時間が決まれば、「2人で作業をしたときにかかる時間が変わらないこと」を理解させていきます。
単位量当たりの大きさや割合の学習を想起させることで、紙の枚数すなわち仕事全体の量を1と見るという発想につなげていきます。
自力解決の様子
A つまずいている子
・120枚という情報をどのように問題解決に使うか分からない。
・A、Bの1分間当たりの枚数を求めるが、次に進めない。
A 120÷12=10 1分で10枚折れる。
B 120÷8=15 1分で15枚折れる。
B 素朴に解いている子
A 120÷12=10 1分で10枚折れる。
B 120÷8=15 1分で15枚折れる。
A、Bの2人だと1分で25枚折れる。
120÷25=4.8 2人だと4.8分かかる。
C ねらい通り解いている子
・紙の枚数(仕事全体の量)を1と見て、2人で作業したときの時間を求めている。
紙の枚数を1と見ると
A 1÷12=[MATH]\(\frac{1}{12}\)[/MATH]
Aは1分で全体の1/12の作業ができる。
B 1÷8=[MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]
Bは1分で全体の[MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]の作業ができる。
A、Bの2人だと、[MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{1}{12}\)[/MATH]=[MATH]\(\frac{5}{24}\)[/MATH]で、1分で全体の[MATH]\(\frac{5}{24}\)[/MATH]の作業ができる。
だから、1÷[MATH]\(\frac{5}{24}\)[/MATH]=[MATH]\(\frac{24}{5}\)[/MATH]=4.8 2人だと4.8分かかる。
この問題の解き方を知らない子供に対して、自力解決の際にヒントカードなどでCまで高めることまでをめざすのではなく、全体交流で仕事全体の量を1と見る発想を理解させることをめざします。
「A つまずいている子供」に対しては、AさんやBさんが1分間でそれぞれ何枚折れるかを考えるよう促します。Aさんを例として、12分で120枚折れることから、1分で何枚折れるか考えるよう促します。次のような線分図などを使うことも考えられます。
Aさんを手がかりに、Bさんの場合について考えるよう促します。また、AさんとBさんが1分間で折れる枚数を求めることができても、そこで行き詰まっている子供に対しては、2人で一緒に作業をすると1分間で何枚折れるかを確認し、全体の120枚を折るのに何分間かかるかを考えるよう促します。
全体交流では、2人の折る枚数を合わせた枚数を線分図を使ってイメージをもたせつつ、比例関係を押さえながら、「時間」が「折る枚数」÷「1分間で折ることのできる枚数」で求められることを式表現なども使いながら確認していきます。
学び合いの計画
学び合いは以下のように進めるように計画します。
① 紙が120枚の場合について考え方と答えを確認する。
② ①をふまえて、紙の枚数が12と8の公倍数の場合について、2人の作業の時間を求める。
③ 仕事の全体量を「1」と見たときについて考える。
上でも述べたように、③を天下り的に指導するのではなく、「単位量当たりの大きさ」の学習を想起させ、紙の枚数を1として考えてみることへとつなげていきます。
ノート例
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
まず、AさんとBさんが1人で作業したときに、1分で何枚折れるか教えてください。
イラスト/横井智美