小5社会「低い土地のくらし」指導アイデア
執筆/札幌市立山鼻南小学校・山本勝洋
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登
札幌市立山鼻小学校校長・佐野浩志
目次
年間指導計画
・国土の地形と気候の概要
・低い土地のくらし
・高い土地のくらし
・あたたかい土地のくらし
・寒い土地のくらし
・米づくりの盛んな地域
・水産業の盛んな地域
・日本の工業生産と工業地域の特色
・自動車工業の盛んな地域
・工業生産を支える貿易や運輸
・放送などの産業とわたしたちのくらし
・情報を生かして発展する観光業
・情報を生かして発展する販売業
・情報を生かして発展する運輸業
・国土の自然災害
・私たちの生活と森林
・公害からくらしを守る
目標
我が国の国土の様子について、国土の地形に着目し、地図帳や地球儀、各種の資料で調べてまとめることで、低い土地の自然などの様子や人々の生活を捉える。また、国土の自然環境の特色やそれらと国民生活との関連を考え、表現することを通して、我が国の国土の地形の概要や、人々は自然環境に適応して生活していることを理解できるようにし、主体的に学習問題を追究・解決しようとする態度を養う。
評価規準
知識・技能
①国土の地形などについて地図帳や地球儀、各種の資料で調べて必要な情報を集め、読み取り、国土の自然などの様子や低い土地の人々の生活を理解している。
②調べたことを図表や文などにまとめ、低い土地の人々が自然環境に適応して生活していることを理解している。
思考・判断・表現
①国土の地形などに着目して、問いを見いだし、国土の自然などの様子や低い土地の人々の生活について考え、表現している。
②自然条件と人々の生活や産業を関連付けて考え、適切に表現している。
主体的に学習に取り組む態度
低い土地の暮らしについて、予想や学習計画を立てたり、学習を振り返ったりして、学習問題を追究し、解決しようとしている。
学習の流れ(6時間扱い)
問題をつくる 1時間
- 海津市の航空写真を見て、自分たちの住む地域と比べて、土地の様子を話し合うことで、低い土地の地形の様子や人々の生活について疑問を整理し、学習問題をつくる。
(学習問題)
大きな川に囲まれた海津市に住む人々のくらしや産業には、どのようなくふうがあるのだろう。
- 学習問題に対する予想を立て、低い土地の歴史や暮らしの工夫、産業の様子など調べる視点を決める。
追究する 4時間
- 海津市の治水の歴史や水害から暮らしを守る工夫を調べ、輪中の人々の水害を防ぐ努力や工夫について考える。
- 輪中に住む人々が水はけをよくする工夫、揚水や排水の管理の工夫を調べることで、稲作や野菜づくりなどの農業に豊かな水をどのように生かしているのかを考える。
まとめる 1時間
- 海津市の人々の豊かな水を生かした暮らしや産業の様子について振り返り、端末を活用して低い土地の特色を協働的にまとめる。
問題をつくる
低い土地の航空写真や地図帳の読み取りや自分たちの地域と比較する活動を通して、低い土地の地形と人々の暮らしや産業についてわかったことや疑問に思ったことを基に学習問題をつくる。(1/6時間)
導入のくふう -比較する場を構成して単元の学習問題を生む-
低い土地の航空写真を提示し、自分たちの住んでいる地域と比較することで、3つの大きな川に挟まれた土地である地形的な特色に気付くようにする。また、1人1台端末のGoogle Jamboardのアプリを活用して一人一人の疑問を付箋紙に貼って共有していくことで、単元の学習問題を設定していく。
※Google Jamboardは2024年12月31日にサービス終了します。
1時間目
自分たちの住んでいる土地と低い土地の様子を比較することで単元の学習問題をつくる。
岐阜県海津市の航空写真です。私たちが住んでいる地域と比べると、どんなことが分かりますか?(Google Earthを活用し、自分たちが住む地域の様子と比較すると効果的です。)
ビルやマンションなど高い建物がたくさんあるね。
ぜんぜん様子が違う。たくさんの川に囲まれているね。
ぼくたちが住んでいる地域と違うところは、どんな様子かな?
高い建物が少ない。田んぼが見えるから米づくりが盛んなのかな?
自分たちの地域と比べることで、低い土地の様子の違いに気付きましたね。では、地図帳を活用して詳しく調べてみましょう。
私たちのまちも平らな土地が広がっているけれど、川に囲まれてはいないよ。
3つの川は木曽川、長良川、揖斐川だとわかるよ。本当に川に囲まれているね。大雨が降っても大丈夫なのかな?
私たちが住んでいるまちと比べると、川に囲まれて、低い土地だとわかりましたね。川に囲まれた土地のことを「輪中」と言います。輪中に暮らす人の暮らしや産業についての疑問をGoogle Jamboardに貼っていきましょう。
大きな川に囲まれた海津市に住む人々のくらしや産業には、どのようなくふうがあるのだろう。
主体的な学びにつながるポイント
自分たちの地域の土地の高さと比較すると、海津市の土地の低さを実感できます。また、低い土地の暮らしについての「疑問」を1人1台端末にあるGoogle Jamboardのアプリを活用すると、お互いの疑問を共有でき、疑問を束ねて学習問題を設定しやすくなります。
追究する
教科書の資料や1人1台端末を活用して、「①水害と戦ってきた歴史や生活の工夫」「②豊かな水を生かした農業」「③豊かな水を生かした生活や文化」を調べる活動を通して、低い土地の暮らしや産業の工夫について理解する。(2、3、4、5/6時間)
対話活動を生むくふう
教科書に掲載されているグラフや写真の一部を隠して、子供の予想や気付きを促しながら段階的に提示していくことで、資料を見る目が育ちます。また、1人1台端末を活用して低い土地のまちのホームぺージなどを検索し、調べてわかったことを、授業支援ソフトのオクリンクに視点①②③ごとにまとめて共有していくことで、対話活動を促進し、協働的に学んでいくことが期待できます。
2時間目
輪中に住む人々の歴史や暮らし、水害を防ぐための努力や工夫について調べる。
このグラフからどんなことがわかりますか?(グラフを隠しながら提示していく。)
水害がどんどん増えているような気がする。
あれ? 1901年から、急に水害が減っているよ。どうしてかな? 何か工夫があるはずだよ?
江戸時代に薩摩の武士たちによる治水工事によって、千本松原がつくられたんだ。
明治時代には、オランダ人技師デレーケによって、大規模な工事が行われ、80ほどの輪中が30ほどにまとめられたんだ。
水害の心配が少なくなったのに、何をしているのかな?
市と市民が協力して水防演習を行うなど、今でも水害の防止に努めているんだ。
3時間⽬
輪中の人々が豊かな水を農業(稲作や野菜)に生かしていることを調べる。
イラスト/(資)イラストメーカーズ