小3国語「モチモチの木」京女式板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は、物語文の「モチモチの木」です。単元課題は、「登場人物の性格や気持ちを考えながら読み、登場人物について話し合おう」です。3年生の物語文では、登場人物がどんな行動をしたかということと、その時々の気持ちについて考えることが主な学習内容になります。気持ちの変化が分かるように、全体と部分を見通し、関連させながら「場面ごとに比べる」板書の工夫を紹介します。

監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・酒井愛子

 

教材名 登場人物について、話し合おう「モチモチの木」(光村図書出版)

単元の計画(全12時間

1 「登場人物のせいかくや気持ちを考えながら読み、登場人物について話し合おう」という学習課題を設定し、学習計画を立てる。
2 教材文を読み、初発の感想を書く。
3・4 登場人物の性格や気持ちを考える。「豆太」と「じさま」がどんな人物かを捉える。
5~7 登場人物の性格や気持ちを考える。それぞれの場面での「豆太」と「じさま」の行動や会話、様子を確かめ、「霜月二十日のばん」と「豆太は見た」の場面の「豆太」を比べる。
8・9 「豆太」がどうして、モチモチの木の灯を見ることができたのかを考える。
10・11 「豆太」の気持ちの変化や性格について、感じたことや考えたことを、友達と話し合う。
12 学習を振り返る。

板書の基本

〇教材「モチモチの木」の学習内容は、「登場人物について、話し合おう」です。「話し合う」という学習活動になっていますが、その前提として、性格や気持ちを表す言葉について見付け、考え、理解を深めることが大事になります。

〇3年生の物語では、登場人物がどんな行動をしたかということと、その時々の気持ちについて考えることが主な学習内容です。気持ちの変化は、起承転結の場面ごとに表現されています。したがって、それぞれの場面ごとに「登場人物の変化」という視点で理解を深めることが大切です。

〇本教材の「登場人物について、話し合おう」は、印象的な感想の話し合いではなく、作品全体と意図部分を関わらせて理解することが必要です。そのために、板書では、全体と部分を見通し、関連させながら「場面ごとにくらべる」ことを目標にしました。

板書のコツ(11/12時間目前半)

板書
11/12時間目前半の板書

板書のコツ①

最初に、日付、題名、作者名を板書します。次にめあて「豆太の変化を場面ごとにくらべよう。」を板書します。この板書の説明として、「登場人物について、話し合う」という学習の予告をします。つまり、話し合いの場合に使いたい言葉を見付けることが本時の学習では大事であることを理解させます。
 
板書のコツ②

「豆太の変化」というめあての言葉から2つのキーワードを板書します。1つは「おくびょう豆太」、もう1つは「弱虫でもやさしけりゃ」という小見出しです。これは物語の小見出しとして教科書で示しているのでどの子も理解することができました。
 
板書のコツ③

はじめと終わりの2つの言葉をつなぎ、変化した場面として、「じさまのはらいた」を板書しました。これは、物語の小見出しでは「豆太は見た」となっていますが、分かりやすい場面として子供たちがはじめの感想で書いた言葉を大切にしたものです。
 
板書のコツ④

板書の右と左に横書きで「おくびょう豆太」と「弱虫でもやさしけりゃ」を板書し、中央に「じさまのはらいた」と板書しました。その板書をもとに「話し合う」ときに使いたい言葉として、変化を見通し「おくびょう」「祭りを見た」などの関連語句を板書しました。めあての「くらべよう」が学習活動であることも指導しました。

板書のコツ(11/12時間目中盤)

板書
11/12時間目中盤の板書

板書のコツ①

「じさまのはらいた」という出来事に対しての豆太の様子を読み取りました。その発言の中で押さえたい言葉「半道・はだし・霜が足にかみつく」を板書しました。豆太の様子を「助けたい・ひっ死」と捉えた子供たちの言葉を付け足しました。
 
板書のコツ②

豆太の気持ちを読み取った「助けたい・ひっ死」という言葉から、豆太にとってじさまはどんな存在なのかを考えました。「大好き・大切・大事な人」という発言を板書し、そんな大好きで大事なじさまだからこそ、おくびょうな豆太が「ひっ死」で医者様を呼びに行ったことを押さえました。
 
板書のコツ③

根拠となる語や文を話し合って書き入れた板書の意図は、思い付きの感想の発表や話し合いではなく、根拠となる語や文をよりどころにした話し合いへと力を高めたいというものです。

板書のコツ(11/12時間目後半)

板書
11/12時間目後半の板書

板書のコツ①

授業のまとめの板書です。学習活動として、めあての「豆太の変化を場面ごとにくらべよう。」の「場面ごと」の各場面は「おくびょう豆太」と「弱虫でもやさしけりゃ」になります。変化のキーワードは「おくびょう」と「勇気のある子ども」です。
 
板書のコツ②

「おくびょう豆太」の場面と「弱虫でもやさしけりゃ」の場面を比べ、「豆太の変化」について「変わった」(黄色チョーク矢印)、「変わらない」(赤チョーク矢印)という考えを出し合う中で、「どちらも」(緑色)という意見が出ました。違いや同じ視点を読む学習活動として「場面を比べる」という課題は、自分の言葉で発表する学習活動へと意識を高めました。
 
板書のコツ③

物語の終末の「-それでも、豆太は、じさまが元気になると、そのばんから、『じさまぁ。』と、しょんべんにじさまを起こしたとさ。」については、「あまえている。安心している」の発言を取り上げました。そして、最後に豆太について、赤チョークで「やる時はやる!! やさしさ」とまとめました。

 

構成/浅原孝子

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