小1算数「ひき算」指導アイデア《11~18から1位数を引く繰り下がりのある減法計算の習熟》
![小1算数「ひき算」指導アイデア](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2024/02/7338123dfbfd70531d38684225c4d059-1024x413.jpg)
執筆/新潟市立金津小学校教諭・鈴木康平
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、新潟市立新津第一小学校・新津第一幼稚園 校園長・間嶋哲
![年間指導計画 ひき算](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2024/02/7e1ac55e097a55c2550da714cb66d0ab.jpg)
目次
単元の展開
第1時 「10といくつ」という数の見方に着目し、12-9の計算の仕方を考える。
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第2時 「10といくつ」という数の見方に着目し、減数が8や7の場合の計算の仕方を考える。
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第3時 減数が9~5の場合の計算練習や文章題の解決をする。
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第4時 「10といくつ」という数の見方に着目し、12-3の計算の仕方を考える。
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第5時 11~18から1位数を引く繰り下がりのある減法計算の練習、文章題の解決
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第6~8時(本時)計算カードを使った11~18から1位数を引く繰り下がりのある減法計算の習熟
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第9時 学習内容の習熟・定着
本時のねらい
同じ差になるひき算の仕組みに関心をもち、どのようなきまりがあるかを考えることができる。
評価規準
- 計算カードで示された差が9になる計算を、ブロックや図を用いて正しく計算できる。(知識・技能)
- 差が9になる式について、引かれる数や引く数に着目して、その特徴を説明している。(思考・判断・表現)
- 同じ差になる式の特徴を見付けようとしたり、違う数の場合についても調べようとしたりしている。(主体的に学習に取り組む態度)
本時の展開
けいさんを しましょう。
今日は計算カードを用意してきました。みんなでやってみましょう。
今までひき算をたくさんやってきたからできます。
本時の最初の段階では、答えを即答できない子供もいると考えられます。一問一問ブロックを使って説明するなど、これまでの学習内容をふり返りながら行っていきます。
11-2。
9。
15-6。
9。
18-9。
9。
先生、全部答えが9です。きっとそうです。
本当ですか。もう少し見てみましょう。13-4。
9です。
やっぱりそうです。先生は答えが9になる式ばかり出しています。
本当ですね。では、先生がほかにどのような式のカードを持っているか予想できますか。
問題を解いていくうちに、「答えが9になる」と予想する子供が増えてきます。そこで今度は式に着目させていきます。
難しいな。あと何枚あるんだろう。
出てきたカードを並べ替えたら分かりそうだよ。
12-3も持っていそうだよ。
よく分かりましたね。12-3のカードを持っています。この式も答えは9になりますか。
なります。ブロックで考えたら分かります。
まだほかにもありそうだよ。
答えが9になるひき算には、何か秘密がありそうですね。今日はみんなで考えてみましょう。
答えが9になる式には、どんな秘密があるかな
あと3枚のカードを持っています。残りのカードの式を予想して、ノートに書いてみましょう。
分かります。簡単です。
ちょっと分かりません。
分りました。17-8と16-7と14-5です。
※子供の実態に応じて、ペアで考えさせたり、黒板上でカードを並べ替えて全体で考えさせたりすることで、すべての式を出させます。
見通し
ここまでの活動に時間がかかると考えられますが、この時点で話し合いながら式を見付けたり、式を黒板上で小さい順に並べ替えたりすることで、きまりに気付きやすくします。
すべての式が出そろったタイミングで、子供には被減数の小さい順に並べ替えた状態の式が印刷されたワークシートを配付します。また、式に番号をつけておく(①〜⑧)ことで、式の数にも目を向けられるようにします。
そうすることで、次時でほかの差になる場合の秘密と比較すると、「差の数-1」が式の数になるという秘密を見付けることにもつながります。
見通しをもたせる場面や話合いの場面では、「十の位」「一の位」「引く数」「引かれる数」という算数用語を引き出すことで、考える視点を与えたり、その子がどこを見て話をしているのかを全体で共通理解したりしやすくします。
全部でいくつの式ができましたか。
8つです。
答えが9になる式を出してみて、気付いたことをワークシートに書いてみましょう。
自力解決の様子
A つまずいている子
どこを見ればよいか分からず、手が付けられない。
B 素朴に解いている子
「引く数が1ずつ増えている」「引かれる数が1ずつ増えている」など、一種類の数値に関してのみ着目して特徴を見付けている。
C ねらい通り解いている子
「引く数が1増えると引かれる数も1増える」「引く数が引かれる数の一の位の数より1大きい」など、2数の関係に着目しながら特徴を見付けている。
学び合いの計画
本時では、これまでの学習とは異なり、計算の方法を見出したり、正しい答えを導き出したりすることが目的ではありません。
「秘密を見付ける」という目的にワクワクする子もいれば、何をすればよいか分からず戸惑ってしまう子もいるでしょう。
そこで、1〜2つの考えを全体で共有します。黒板上に示しておくことで、考え方や説明の仕方を理解させます。
そこまで思い付いていなかった子も、友達の考えを聞くことで考え方が分かり、自分の考えをもつきっかけになります。
その後、ペアやグループで話し合う時間を設けます。ここでの目的は、「自分の考えを強化する」ことと「考えを広げる」ことです。これにより、全体発表に向けて自分の考えに自信をもったり、友達と見付けた秘密を学級全体に伝えたいという思いをもたせたりします。
ただ単純に「計算ができる」という知識・技能を磨くことも重要ですが、式どうしの関係や式と式の数値の並びなどに着目し、その規則性や面白さに気付かせることで数学的な見方・考え方を養うことができ、今後の学習にも生かすことができるでしょう。
ノート例
![「ひき算」ノート例](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2024/03/cf18636a82c725c0e35efb8842014541.jpg)
学習の終わりにワークシートを貼り付けます。
ワークシート①(ダウンロード可)
ダウンロードはこちら>>
※後でノートに貼ることができるようにサイズを調整します。また、書き込みがしやすいように、余白や隙間を多くします。
※子供の実態に応じて、本時の学習すべてをワークシートで行ってもよいでしょう。その場合は、本時の学習のねらいを提示した後でワークシート(ワークシート例②)を配付します。
※PDF化したものをタブレット端末で配信してもよいでしょう。その場合、めあてとまとめはノートに記述させます。
ワークシート②(ダウンロード可)
ダウンロードはこちら>>
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
見付けた秘密を教えてください。
11-2、12-3、13-4……のように、引かれる数が1増えると引く数も1増えます。
逆のことも言えます。引かれる数が1減ると、引く数も1減ります。
引かれる数が11から15に4増えると、引く数も2から6に4増えます。
それなら、引かれる数が11から18に7増えると、引く数も2から9に7増えるよ。
※このように、前の子供の発言から「それならこれも……」と言って思い付いたこともどんどん発表させていきたいです。自分の考えだけでなく、友達の発表をよく聞いたり、それに関連付けて考えたりしている子供の発言を価値付けていくことが重要です。
引かれる数の一の位の数が1だったら引く数は2、4だったら5のように、引く数が引かれる数の一の位の数よりも1大きいです。
たくさんの秘密を見付けることができましたね。今日の学習をまとめましょう。
引かれる数や引く数に注目すると、たくさん秘密がある。
※たくさんの秘密が出てくると、すべてをまとめに入れて記述することは難しいです。あえて言葉ではまとめずに、書き込んだワークシートを色で囲んで学習のまとめとしたり、子供が気に入った秘密を1つだけ記述させたりしてもよいでしょう。
評価問題
きょう 見つけた ひみつを つかって、□に あてはまる かずを かきましょう。
15-□=9
子供に期待する解答の具体例
![図式1](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2024/03/4cc67cba90064ca46acc2a8dfa48ac0e.jpg)
※本時の学習内容や1年生という子供の実態からは、どのように考えたかを記述して説明させるのは難しく、上記の評価問題だけではどのように考えたかを十分に見とれないことも考えられます。そこで、ふり返りをノートに記述させたり、どのように考えたかを友達に説明させたりすることで評価をします。
感想例
答えが9になる計算には、たくさんの秘密があることが分かりました。答えが8や7になる計算の秘密も見付けたいです。
1人1台端末活用アイデア
本時では、ワークシートをデジタル化して子供に配付する活用方法も考えられます。文字入力はまだ難しいですが、矢印をかき込んだり、考えを色分けしたりすることに関しては、複製をしたり何度もかき直したりすることができる点で1人1台端末が有効であると考えます。
また、かき込んだワークシートやタブレットの画面を共有することで、矢印や数字から友達が「何を」「どのように」考えたのかを説明する、という活用方法も考えられます。単元を通して使い方に慣れておくことで、口頭での発表だけでなく、画面を見て自分との共通点や相違点に気付ける力を育成できると期待できます。
次時以降に計画している、計算カードを使った神経衰弱(差が同じものがペア)やフラッシュカードでの計算練習なども、タブレットに置き換えて行うこともできるでしょう。
板書例
![本時の板書例](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2024/03/f8854dd16ec73c9c3ce08f08939c2480.jpg)
イラスト/横井智美