小5算数「帯グラフと円グラフ」指導アイデア《帯グラフや円グラフの仕組みを理解し、データの特徴を読み取る》

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
小5算数「帯グラフと円グラフ」指導アイデア

執筆/富山県高岡市立木津小学校教諭・屋鋪善祐
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一
   前・富山県南砺市立福光東部小学校校長・中川愼一

年間指導計画 帯グラフと円グラフ

単元の展開


第1時 単元の導入

第2時(本時)帯グラフや円グラフの仕組みを理解し、データの特徴を読み取る。

第3時 帯グラフや円グラフのかき方を理解する。

第4時 複数のグラフから情報を適切に読み取り、データの特徴を読み取る。

第5時 帯グラフや円グラフを使った統計的な問題解決の方法について知り、身の回りの統計的事象の問題解決に生かす。

第6時 学習の内容の理解を確認する。

本時のねらい

帯グラフや円グラフの仕組みに基づいて、データの特徴を正しく読み取り、問題に対する結論を考える。

評価規準

帯グラフや円グラフの仕組みに着目し、データの特徴を読み取り、問題に対する結論を多面的に考えている。(思考・判断・表現)

本時の展開

帯グラフ 二酸化炭素の排出量の割合
円グラフ 二酸化炭素の排出量の割合

問題
このグラフから、何が分かるだろう。

前の時間に、地球の温暖化について調べるために、各国の二酸化炭素の排出量を見てきましたね。全世界の総排出量の323億tを100と見て、各国の割合を見やすくするために、あるグラフを知りましたね。どんなグラフでしたか。

「帯グラフ」と「円グラフ」です。

そうでしたね。(グラフを提示する。)この2つのグラフからどんなことが読み取れますか。

パッと見ただけで、いろいろなことが読み取れます。

それでは今日は、帯グラフや円グラフからどんなことが読み取れるのか、考えていきましょう。

学習のねらい
帯グラフや円グラフから、どんなことが読み取れるのか考えよう。

見通し

1目盛りが1%で全体が100%だから、全体を100と見て、その割合を読み取っていけばよさそうだ。(方法の見通し)

部分どうしの割合の大きさを見ると、比べやすそうだよ。(方法の見通し)

自力解決の様子

A つまずいている子
・グラフが表している割合の読み取りがうまくできていない。
全世界の量を合わせると、323億t。


B 素朴に解いている子
・割合の数値や大小関係を正しく読み取っている。
中国が一番多い。アメリカの割合は15%。


C ねらい通り解いている子
・問題の解決に照らし合わせて、部分どうしや部分と全体の割合を比べながら、データの特徴や傾向を読み取っている。
中国は、日本の7倍の二酸化炭素を排出している。中国、アメリカ、インドを合わせると、世界全体の約[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]にあたる。

学び合いの計画

本単元では、目的に応じたデータの収集や分類整理を行い、事象にある数量の関係を割合で捉えます。それを、基準量と比較量の関係として視覚的に捉えやすいように、グラフに表していきます。

具体的には、データの示す割合を帯グラフや円グラフなど適したグラフで表現することになります。そして、それらから結論について多面的に捉え、考察していきます。

因果関係や傾向を漠然と捉えるだけでなく、データに基づいて判断する統計的な問題の解決方法を知り、その方法で考察していくことができるようにすることが大切です。

本時の学習では、帯グラフや円グラフの仕組みに着目し、データの特徴や傾向を読み取る過程を大切にします。

そこで、一人一人が帯グラフと円グラフからどんなことが読み取れるのか考え、互いに読み取った特徴や傾向を共有する時間を十分に設けましょう。

その際、全体が100%として、1目盛りが1%であることを確認しておくことで、自信をもって自力で解決する活動に取り組むことができます。

子供一人一人の考えに寄り添い、主体的に学びに向かう姿を大切にしながら授業を展開していきましょう。

ノート例

A つまずいている子

帯グラフと円グラフ ノート例1

B 素朴に解いている子

帯グラフと円グラフ ノート例2

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

帯グラフや円グラフから、どんなことが読み取れますか。

帯グラフを見ると、中国が一番多いことが分かりました。割合にすると28%でした。

僕は、円グラフを見ていたけれど、同じことに気付いたよ。

私は、中国と日本を比べました。すると、中国は、日本の7倍の二酸化炭素の排出量だと気付きました。

7倍だとどうして分かったのですか。

だって、このグラフのここを見ると、中国は28%で、日本は4%でした。だから、28÷4=7なので、中国は日本の7倍だと分かりました。(ICT機器を用いて説明する。)

部分どうしを比べて、28%という割合と7%という割合どうしの割合を調べてみたのですね。みなさん、○○さんの考えを聞いてどう思いましたか。

本当だ! 1位と4位で、こんなに違いがあることに気付いて驚きました。

僕も部分どうしを比べて、中国、アメリカ、インドに着目しました。この3つを合わせると、全体の約[MATH]\(\frac{1}{2}\)[/MATH]にあたることが分かりました。だから、世界の二酸化炭素の排出は中国、アメリカ、インドで占めていることが分かりました。(ICT機器を用いて説明する。)

ということは、日本は4%しか出していないから、地球に優しいと言えるね。

そうとは言い切れないのじゃないかな。

そうとは言い切れないと思ったのは、どうしてですか。

日本は世界の4位だし、世界全体で323億tを排出しているのだから、二酸化炭素の排出量が少ないとは言い切れないと思います。

たくさん出してくる国に比べると少なく見えるかも知れないけれど、323億tの4%は、約13億tだよ。小さい自動車1台を1tとして考えたら、13億台にもなるよ。しかも、それが気体なんだから、とんでもなく多いと思うよ。

確かに。もっと日本も二酸化炭素の排出量を減らすために、努力をしていかないといけないね。

部分どうしを比べるだけでなく、部分と全体を比べてみたのですね。友達の考えを聞いて、帯グラフと円グラフについてどんなことに気付きましたか。

帯グラフや円グラフは、部分どうしを比べることができるので、違いが分かりやすくて便利だと感じました。

全体を基にしたときの部分の大きさが分かるので、帯グラフや円グラフは全体の傾向が分かって便利だと思いました。

話合いでは考えを共有し合い、自分の考えと友達の考えを比較し合う場を設けましょう。「○○さんと、同じ考え方だ」「僕も○○に注目したよ」「自分とは違った考え方だ」など、友達の考えから、自分では見いだせなかった帯グラフや円グラフの見方に気付く姿が生まれます。

また、子供が新たな気付きを見出した瞬間に、そのつぶやきをしっかり拾い、「どうして○○だと思ったのですか?」など、根拠を尋ねる発問を投げかけましょう。すると、「だって…!」「部分どうし、部分と全体を見ると……と言えるよ」など、帯グラフや円グラフの部分や全体の割合を基に、根拠を明確にしながら積極的に発言しようとする子達が出てくるでしょう。そして、それぞれの考えを聞き、追体験していくことで、データの特徴や傾向を正確に読み取り、問題に対する結論を考える姿が生まれます。

その際、ICT機器を使って帯グラフや円グラフのどの部分を考えているのか視覚的に分かりやすく提示したり、考えを表現する場で用いたりすることで、互いの考えのよさをしっかり理解することができます。

また、自分の考えを1人1台端末に入力する場を設けることで、教師は子供一人一人の考えを把握し、円滑に話し合いを進めていくこともできます。

学習のまとめ

帯グラフ  円グラフ
・どちらのグラフも、割合を表している。
・全体の中に占める割合の大きさがひと目で捉えられる。
・一番割合の大きい項目が何かを見付けやすい。
・どんな項目が全体に大きく占めているのかが捉えやすい。
・項目どうしの大きさの関係を捉えやすい。

下矢印

帯グラフや円グラフは、全体を基にしたときの各部分の割合を見たり、部分と部分の割合を比べたりするのに便利である。

評価問題

たかしさんは、都道府県ごとのみかんのしゅうかく量について気になったので、みかんのしゅうかく量の都道府県別のわり合を表した帯グラフと円グラフを調べています。

帯グラフ 県別みかん収穫量の割合
円グラフ 県別みかん収穫量の割合

①各県のわり合は、それぞれ何%ですか。
②和歌山県は、熊本県の何倍ですか。
③たかしくんは、みかんのしゅうかく量を上位3県(和歌山、愛媛、静岡)のデータをもとに考えています。たかしくんがどんなことを考えているのかを予想して書きましょう。

子供に期待する解答の具体例

①和歌山県20%、愛媛県16%、静岡県15%、熊本県10%、長崎県6%、その他33%

②2倍


・上位3県だけで、全国の半分を占めている。
・半分より多いというのは、帯グラフよりも円グラフから読み取りやすい。
・みかんの栽培は、暖かく日がよく当たる土地が向いているのかもしれない。
・沖縄や鹿児島が上位にないということは、ただ暖かいだけでよいというものではないのかもしれない。 など

本時の評価規準を達成した子供の具体の姿

帯グラフや円グラフの仕組みに着目し、データの特徴や傾向を読み取り、問題に対する結論を考えている。

感想

  • 帯グラフや円グラフにすると、それぞれの割合がぱっと分かり、どちらの割合が大きいのかすぐに比べることができると分かりました。
  • 帯グラフは、積み上げ棒グラフに似ているけれど、割合を表すことが目的なので全体はいつでも100%になるんだなと考えました。
  • 表は数が書かれているので、数の大きさや数の違いが分かりやすいけれど、帯グラフや円グラフは割合の大きさが見やすくて、部分どうしの割合の違いが分かりやすいなと思いました。
  • 今回、帯グラフや円グラフの読み取り方が分かったので、今度は帯グラフや円グラフを実際にかいてみたいです。
  • 割合を捉えやすいという特徴をうまく生かして、帯グラフや円グラフを使っていきたいです。
  • 帯グラフや円グラフを比べると、世界で一番中国が二酸化炭素を排出していることが分かりました。日本は4%しかなかったので少ないと最初は思ったけれど、世界全体の4位だし、全体の二酸化炭素の排出量は323億tなので、決して少なくないと思いました。これからも、二酸化炭素を排出しないように、自分にできることを考えていきたいです。

ワークシート(ダウンロード可)
ワークシート 帯グラフと円グラフ
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板書例

本時の板書 帯グラフと円グラフ

イラスト/横井智美

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