子どもに身近なブロックで、5年「振り子の運動」の導入を分かりやすく 【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

振り子の運動の授業では、実験用のスタンドと専用のおもりを使う場合や、身近な部材をおもりに使う場合がよくありますが、今回は、おもちゃのブロックを使って導入する実践紹介です。理科でブロックというのはなじみがないかもしれませんが、子どもたちにとっては身近で、ブロックならではの授業でのメリットがありそうです。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/東京都公立小学校主任教諭・木月里美
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

はじめに

5年「振り子の運動」での導入、みなさんどうしていますか。振り子のおもりに粘土やビー玉を使ってみたり、ブランコの様子を見て考えさせたり、いろいろと工夫されていると思います。生活の中では、ブランコの他にもランドセルにくくりつけた給食袋が揺れていたり、地震で照明が揺れたりと、振り子と同じような現象が起きていますが、なかなか子どもたちにはなじみがないように思います。そこで今回は、子どもたちにとって遊び慣れた素材であるブロックを使った、振り子の導入を紹介します。

学習の流れ

①班に、複数のブロックを配る(4人の班に30~40個くらい)

②一人一人、ブロックで好きな形を作る
→ブロックの数は、班の中で均等に分けてもよいし、差があってもよいです。
均等に分けていれば、この後、「ブロックの数は同じなのに、人によって1往復する時間が違うのはなぜだろう?」となりますし、差があれば、ブロックの数も違うので、それも含めた問題につながります。ちなみに、私は、班で相談して決めてよいことにしました。
このとき、好きな形ではなく直方体や立方体に制限する方法にすれば、揺らしたときにバランスがとりやすくなります。

③糸を配り、ブロックに付ける
→糸の長さも適当で構いません。長さをそろえて配っても、子どもたちの貼り付け方や結び方によって、自然と長さにバラつきが出ます。私は、小さいブロックをダブルクリップで挟み、クリップにテグスを付けて渡しました。人数分となると、ひと手間かかってしまいますが、ワンタッチで付け外しができ、おもりのバランスがとりやすくなります。

④みんなで揺らしてみる
→音楽に合わせて揺らしてみると、人によって1往復する時間が違うことに注目しやすくなります。

⑤気付いたことや疑問に思ったことを共有し、問題を見いだす
→ブロックの数や形、紐の長さが違うので、いろいろな視点が出てくると思います。私は「1往復する時間は何によって変わるのだろうか。」と集約し、子どもたちが調べたいと思った要因について、計画を立て、調べる活動を行いました。

<子どもたちが計画した実験の様子(一部)>

私は、子どもたちが自由に実験方法を計画する活動を行いましたが、いきなりこれをすると先生は大変です。そこで、まずは導入でブロックを使って問題を見いだしたら、おもりの重さ、振れ幅、振り子の長さに絞り、以降は実験用振り子を使って調べていく活動に入る流れをお勧めします。
実験用の振り子には、体積が同じで重さが異なるおもりが用意されていて便利ですが、最初から使用するには子どもたちにとってもなじみがなく、唐突な気がします。
最初にブロックを使った導入を行うことで、おもりの形や体積を同じにしたり、振り子の長さを同じにしたりして、条件をそろえないと正しく調べることができないのだ、ということに、子どもたちが気づきやすくなると思います。

ブロックを使った振り子の運動の学習は、いろいろな先生方の先行実践もありますので、興味をもった方はぜひ調べてみてください。

イラスト/難波孝

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木月里美先生

<執筆者プロフィール>
木月里美●きづき・さとみ 東京都公立小学校主任教諭。大学では理科専攻にて学び、卒業後は学級担任、理科専科を経験。教科書の編集委員として教科書作りに携わる。共著に「これからはじめる “GIGA” 全学年・全単元×1人1台端末×活用事例 小学校理科5・6年」(日本標準)、「小学校理科『フローチャート型』授業ガイド」(東洋館出版社)など。


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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