小2特別活動 学級活動編「思い出いっぱいのクラス文集を作ろう」指導アイデア
文部科学省視学官監修による、小2特別活動の指導アイデアです。2月は、学級活動(1)「思い出いっぱいの文集を作ろう」を紹介します。
1年生からの2年間、同じ学級で過ごしてきた子供たち。本校では、3年生に進級する4月には、初めてのクラス替えを経験することになることもあり、「このメンバーで過ごすのもあと少しか…」と寂しさを口にする子供たちもいました。そのような声を聞き、子供たちから思い出に残るものを作りたいという考えが生まれ、クラスの思い出がいっぱい詰まったオリジナルの文集をつくることになりました。これまでの経験を生かし、みんなで1つのものを作り上げる活動に挑戦する機会となりました。思い出を振り返り、「楽しい2年間だったな。3年生になってもがんばりたいな」という前向きな思いをもたせて進級させたいものです。
執筆/青森県公立小学校教諭・井沼志穂
監修/文部科学省視学官・安部恭子
青森県八戸市総合教育センター所長・河村雅庸
目次
年間執筆計画
04月 クラスの合言葉をつくろう
05月 ワクワクして楽しい運動会にするための工夫を考えよう
06月 雨の日の遊びを決めよう
07月 夏祭りをしよう
09月 夏休みの思い出発表会をしよう
10月 なわとび集会を開こう
11月 なかよし学きゅうまつりをしよう
12月 1年生と遊ぼう会を開こう
01月 思い出パーティーを開こう
02月 思い出いっぱいのクラス文集を作ろう
03月 『2年生のバトン』をわたす会をしよう
事前の活動
議題の選定について
これまで議題については、議題ポストを設置して議題を集めていましたが、今回は朝の会で、日直が「2年生の最後にみんなでやりたいことはありませんか」と問いかけて議題を集めることにしました。子供たちからは、「お別れの会をしたい」「みんなの顔が見えるように、コの字型に座って給食を食べたい」「何か思い出になるものを作りたい」などの意見が出ました。
お別れの会も、いつものお楽しみ会みたいに話し合ったらできそうだね。3月にやろうよ。
給食は、すぐにでもできそう! 最後の給食の日にやる? それとも何回かやってみる?
このように、いくつかの意見については、子供たちもすぐに活動の見通しをもつことができました。一方で、思い出になるものの制作についてはなかなかイメージがわかなかったようで、様々な意見が飛び交いました。
思い出になるものを作りたいけど、何を作ればいいんだろう。
家に持ち帰って、ずっと持っていられるものがいいな。
アルバムがいいんじゃない? 6年生の卒業アルバムみたいなものはどうかな。お兄ちゃんのを見たことがあるよ。
作文ものっていたよね。私たちもそういう文集を作ってみたらおもしろそう!
このような話にみんなが「いいね!」と盛り上がり、議題が決定しました。いつもは計画委員会が議題を収集し選定していましたが、今回は学級全体で話し合う時間をつくったことで「みんなで話し合う必要のあるもの」の共通理解がより深まりました。
計画委員会の準備
計画委員会の子供たちと教師の話の中で、「作文だけではなく、卒業アルバムみたいにいろいろなページを作ってみたい」という意見が出ました。そこで、教師の方で学校にある卒業アルバムを準備し教室に並べ、1週間自由に見られるようにしました。
話し合う前に、子供たちのイメージを揃えることが大切です。子供たちは今まで経験してきたことをもとに意見を出します。経験してきていないもの、イメージできないものについて話し合うというのはとても難しいことです。「こんなページがあるんだ」と知ることで、イメージの共有がしやすくなり、話し合うときの意見も広がります。
そして、計画委員会の話合いで、文集に載せる、①個人のページ、②みんなのページの内容について学級会で話し合うことにしました。
また、「出し合う」活動を事前に行いました。事前に「出し合う」活動を行うことで、「くらべ合う」活動にたくさん時間を使えることにつながりました。
【掲示の工夫】
具体的にこのページの中の「ここを決める」というのが分かりやすいように、学級会の数日前から個人のページの拡大図を掲示しました。話合いの際もこの掲示を見ながら進めることができ、役立ちました。
本時のねらい
「クラスの思い出を振り返ることができるページを作る」という目標に向かって話し合い、決めることができる。
本時の活動
学級活動(1)議題「思い出いっぱいのクラス文集を作ろう」
〈提案理由〉
3年生になるとクラス替えがあるので、1年生のときから2年間いっしょに過ごしてきたこのクラスとももうすぐお別れです。そこで、2年2組の思い出文集を作って、「こんなことがあったな」、「このメンバーで過ごしたんだな」という思い出を残したいと思ったから提案しました。
〈決まっていること〉
・個人のページは自己紹介。決めることは自己紹介の項目2つ。
・みんなのページは、学級みんなで考えたものをのせる。作るページは1ページ。
話し合うこと①「自己紹介のページに何をのせるか」
【くらべ合う】
私は、「将来の夢」がいいと思います。みんなの将来の夢を聞いてみたいと思ったからです。
ぼくも、「将来の夢」がいいと思います。みんなの将来の夢を聞いて、応援したいと思ったからです。
将来の夢に賛成の人が多いのですが、決めてもいいですか。
「将来の夢」については賛成の意見が多く出され、反対の意見もなかったため、1つ目として決まりました。
ぼくは、「できるようになったこと」をのせたいです。こんなことをできるようになったんだなと振り返れるからです。
私は、「一番楽しかった思い出」をのせたいです。理由は…考え中です。
「これにしたい」という気持ちはあるけれど、理由をどう言ったらいいか分からないという子供もいます。理由が言えないから手を挙げられないという子供のために、私の学級では「考え中」という意見もありにしていました。しかし、それで終わりにしては話合いが進みません。友達の意見を聞いて理由を思いついたら、あとでもいいから発表するということを繰り返し子供たちに伝えるようにしていました。そのときは手をチョキにして挙げ、司会の子供に分かりやすいようにしました。
ぼくも、「一番楽しかった思い出」をのせたいです。どうしてかというと、この人は
これが楽しかったんだなと思えるからです。
さっき、「一番楽しかった思い出」に賛成したのですが、理由を思いついたので言い
ます。みんなの楽しかった思い出のほうが、楽しくうれしい気持ちでこんなことが
あったなと振り返ることができるからです。
【まとめる・決める】
「将来の夢」と「楽しかった思い出」に多くの賛成意見が出され、この2つに決まりました。
話し合うこと②「みんなのページに何をのせるか」
【くらべ合う】
私は、「2組の思い出ランキング」がいいと思います。いろいろな思い出があるけど、その中の1位を知りたいからです。
ぼくは、「友達へのメッセージ」をのせたいです。今まで仲よくしてくれた友達にメッセージを送りたいからです。
私は、「好きな本コーナー」をつくりたいです。みんなのおすすめの本を読んでみたいからです。
ぼくは、「お絵描きコーナー」をのせたいです。みんなの絵がのったら、楽しい文集になると思ったからです。
話し合うこと①のときとは違い、意見が割れました。ここで子供から質問がありました。
このみんなのページには、1つのものしかのせられないんですか。
ここで、司会グループが悩んでいたので、教師が助言に入りました。
どれもよい意見ですね。こんなときには、学級会忍法を参考にしてみてはどうでしょうか。
※私の学級では、これまでの学級会で、意見を合わせたり、優先順位を決めたりするなど、いろいろなまとめ方をしてきたので、それを分かりやすく「学級会忍法」というネーミングでまとめて、教室に掲示しています。子供たちは、学級会忍法を参考にしながら、よりよい合意形成に向けて話し合うようにしています。
うんうんとうなずく子供たち。司会から、相談タイムのお知らせがあり、近くの友達と相談して考えをまとめていました。
どれものせたいから、「もり合わせの術」(少しずつのせる)を使ったらいいと思います。
少しずつのせたらみんなの意見も通って、みんなが嬉しい文集になると思います。
【まとめる・決める】
みんなの思いが叶うようにしたいということに意見がまとまり、学級会忍法の「もり合わせの術」を使って1ページを分割し、思い出ランキング・友達へのメッセージ・好きな本紹介をのせることになりました。お絵描きコーナーについては、みんなが描いた絵を小さくしたら学級のページや裏表紙に載せられるのではないかということになりました。みんなのページは1ページにすると決まっていたので、その中で子供たちなりに考え決めることができました。
1つに絞るだけでなく、こういった合意形成の仕方もあるのだと実感できる機会となりました。多様な議題で話し合うことで、様々な合意形成の仕方を学ぶことができます。
◆板書例
事後の活動
1:思い出の作文の作成
国語科の「楽しかったよ、2年生」の学習で書いた作文を活用しました。
2:個人のページ(自己紹介)の作成
話合いで決まった項目を加え、1人ずつ書きました。
3:みんなのページの作成
①思い出ランキング…計画係が アンケートをとり、集計しました。
②友達へのメッセージ、好きな本の紹介…枠を教師が作り、一人ずつ書き込みました。
③お絵描きコーナー…イラストを描き、それを縮小コピーして、みんなのページと裏表紙に散りばめました。貼るのは子供たちが担当しました。
思い出文集は、3学期最後の「2年2組お別れ会」 の日に渡しました。渡したときには「わあ!」と歓声があがりました。話合いと実践を通して、みんなで1つの物を完成させることの難しさと楽しさを感じることができたのではないかと感じています。自分たちで考え、それを実現したという達成感を味わったことで、「またやってみたい!」「次はこんなことをしてみたいな」という前向きな気持ちにつながっていくことでしょう。