小5算数「わり算と分数」指導アイデア《分数倍の意味について考える》
執筆/富山市立保内小学校教諭・高井慈美
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一
前・富山県南砺市立福光東部小学校校長・中川愼一
目次
単元の展開
第1時 分数の意味に着目し、整数の除法の結果を分数で表す方法を考える。
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第2時 商分数の適用問題
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第3時(本時)整数倍や小数倍の意味を基に、分数倍の意味について考える。
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第4時 分数の意味に着目し、分数を小数や整数で表す方法を考える。
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第5時 小数や整数の意味に着目し、小数や整数を分数で表す方法を考える。
本時のねらい
整数の除法の結果を分数で表す方法を基に、整数倍・小数倍から分数倍へと、倍の意味を広げて考える。
評価規準
分数の表現に着目し、整数倍・小数倍から分数倍へと、倍の意味を広げて考えている。(思考・判断・表現)
本時の展開
赤、青、黄、白の4本のテープがあります。赤、青、黄のテープの長さは、白のテープの長さのそれぞれ何倍ですか。
赤、青、黄のテープの長さは、白のテープの長さのそれぞれ何倍になるか分かりますか。
簡単に分かります。今までに習っています。
まず、赤のテープは白のテープの2倍とすぐ分かります。式は60÷30=2です。
白のテープの長さ30㎝を基にする数にして、わり算をすればいいね。
基にする数で割れば、何倍になるのかを求められるよね。
青のテープは、白のテープより短いから1より小さい数の倍になるね。
青のテープは0.5倍です。式は15÷30=0.5です。
黄のテープは40㎝だから、40÷30。割り切れるかな。
割り切れないときは、どうやって何倍であるのかを表すのかな。
黄のテープは、1.3333……倍になります。40÷30=1.3333……だからです。
きちんとした数にならないと落ち着かないな。
40÷30=[MATH]\(\frac{4}{3}\)[/MATH]だから、[MATH]\(\frac{4}{3}\)[/MATH]倍と言えばどうかな。
倍に分数を使ってもよいのかな。
みんなで、分数でも倍を表すことができるのかを考えていけばよさそうですね。今まで学習したことを生かして、何倍を表す方法について考えていきましょう。
整数や小数だけでなく、分数でも倍を表すことができるのかを考えよう。
見通し
何倍になるのかを、見当を付けて考えよう。(方法の見通し)
整数倍や小数倍の求め方を基にして考えよう。(方法の見通し)
比べる数を基にする数で割ると、何倍になるのか分かるので計算しよう。(方法の見通し)
自力解決の様子
A つまずいている子
「15÷30=0.5だけど、1より小さくなるので、どうすればよいのかな」
(整数倍のように、いくつ分と数えることができないので、どうしてよいか分からない。)
・倍を求めるために、わり算を使うということは分かっている。
・「いくつ分」のイメージが抜けきらないので、1より小さい数の倍が腑に落ちないでいる。
B 素朴に解いている子
「40÷30=1.333……。 割り切れないので困ったな」
(小数倍までは表せているが、割り切れないために、その処理に困っている。)
・何倍かを求めるためには、比べる数を基にする数で割ればよいことを理解している。
・何倍かを整数や小数を用いて表すことができることは理解している。
・基にする数と比べる数との大小関係によって、1より小さい倍があることも理解している。
C ねらい通り解いている子
「40÷30=[MATH]\(\frac{4}{3}\)[/MATH]。[MATH]\(\frac{4}{3}\)[/MATH]倍とすればよさそう」
(小数倍ではすっきりと表せないので、分数で倍を表すことを考えている。)
・整数のわり算の結果を分数で表したことを生かして、分数で倍を表そうと考えている。
・整数や小数と同じように、分数にも倍の意味をもたせることができると考えている。
・分数で倍を表すことができるのかを、図で表しながら説明しようとしている。
・整数倍や小数倍の意味を基に、倍について「1と見たときに〇にあたる」というように統合的に捉えている。
学び合いの計画
本時の学習は、これまでに学んできた「整数÷整数=分数」を用いて、何倍かを表すときに、分数でも表してもよいのかを考えていきます。
その際、割合の素地となる見方をする「何倍かを求める計算」が苦手な子供もいるので、まず、基にする数と比べる数をテープ図や数直線図で表したり、問題文から題意を明確にしたりすることがポイントです。
また、1より小さい倍の意味を理解しきれていない子供も想定されます。子供たちそれぞれのつまずきへの対応策を準備して、学習に入るとよいでしょう。
そして、分数倍も、整数倍や小数倍と同じように数量の関係で表せることを数直線から捉えさせ、「〇〇を1と見たとき、△△が□分の□倍にあたる」という倍の意味を分数倍も含めて統合的に捉えることができるようにしましょう。
既習の内容を生かすことを意識して進める時間になるので、自立解決の前に、本時につながる既習の内容を子供たちと確認することが大切でしょう。
この学習では、整数でも小数でも表せない数を分数で表すことのよさを実感する時間にもなります。
小数で表すことができない数を分数で表すことを通して、これまで学んできた分割分数、量分数、割合分数、商分数などをふり返りながら、分数の意味を大きく拡張して捉えることができるようにしていきましょう。
1人1台端末活用アイデア
分数倍も整数倍や小数倍と同じ数量の関係で表すことが理解できるように、全体発表の場では、数直線図をスクリーンなどで大きく提示して全体の学習を進めていきましょう。
そうすることで、分数と小数、整数の相互関係とともに、整数倍や小数倍と同じように分数で倍を表すことができることを理解していけるでしょう。
そのために、子供たちの考えを表現させるときには1人1台端末を利用して、共通の数直線図に何倍であるか、または、割合をかき入れる□を作成しておくと考えも焦点化できます。
そして、発表の際にはかき入れた数直線図を映して説明させましょう。パソコン上でいろいろな考えをかき入れたり、大きく映して考えを共有したりしながら、分数倍についての理解を深めていきましょう。
ノート例
A つまずいている子
B 素朴に解いている子
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
※第3時 割り切れないときに、何倍かをどのように表すかを説明し、考える場面
赤のテープは、すぐに白のテープの2倍と分かりましたね。それでは、ほかのテープはどうですか。
イラスト/横井智美