小1 国語科「ものの名まえ」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「ものの名まえ」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属大泉小学校・山下美香
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元で身に付けたい資質・能力は、身近なことを表す語句の量を増し、言葉には意味による語句のまとまりがあることに気付く力です。
この単元では、動物や果物の名前を表す語句など、相互に関係のある語句を状況に応じて、適切に使い分けて使用することができる力を付けます。そのためには、日常で使用している言葉には、個別の名称と、全体の名称があることを理解することが大切です。
また、「おみせやさんごっこ」の活動を通して、相手の発言を受けて話をつなぐ経験を重ねることも大切にしていきます。「おみせやさんごっこ」には、相手と聞き合ったり言い合ったりするやり取りで人間関係が円滑になるという効果もあると考えます。多くの友達と関わりを深めていくこの時期に、「おみせやさんごっこ」の活動で相互に関係のある語句を扱うことで、言葉を介して楽しい思いを共有する経験をさせたいと考えました。
そして、言葉の面白さを味わうとともに、日常的に言葉を意識して生活することで、児童の語彙を広げ、言葉に関する興味・関心を高めていきたいと考えます。
本単元で高まった言葉への興味・関心はその後の日常生活の中で生かされます。言葉へのアンテナや感覚を高くして日々の生活を送る中で、新たな言葉を獲得したり、無意識だった言葉を意識化して語彙を広げたり深めたりすることにつながっていくと考えます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
店員と客の役に分かれ、相互に関係のある語句を区別して売り買いのやり取りを行い、尋ねたり応答したりする活動です。今回の単元では、主に指導事項の知識・技能(1)オとA(1)オの話し合うことの事項に関わります。
「おみせやさんごっこ」が好きな児童は多く、生活経験からイメージをもちやすく、比較的容易に活動に取り組むことができます。自分の開きたいお店(例:八百屋さん)を選び、看板やポスターを作ることが、まとめて付けた名前の言葉への理解につながります。
また、そのお店の品物カード(例:じゃがいも、にんじん、たまねぎ)を作るということは、一つ一つの品物の名前の言葉をたくさん収集することにつながります。
友達とのやり取りそのものが楽しく、話し合うことに苦手意識をもつ児童にも取り組みやすい活動でしょう。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 一つ一つの品物の名前の言葉の収集
児童にとって、お店で買い物をした経験は身近な経験として少なからずあると思います。
また、幼稚園や保育園でも「おみせやさんごっこ」遊びの経験がある子もいて、好きな活動の一つであり、意欲的に取り組むことができると考えます。
「おみせやさんごっこ」では、自分の開きたいお店を選び、看板やポスターを作る活動を通して、まとめて付けた名前の言葉を理解します。また、そのお店の品物カードを作ることを通して、一つ一つの名前である言葉を理解します。
「おみせやさんごっこ」では、一つの品物を売るよりも、たくさんの品物を取り扱った方が楽しい活動になります。品物カードの作成において、自然と意欲的な一つ一つの名前言葉の収集へとつながっていき、主体的な活動になるでしょう。
「好きな品物を伝えられてよかった」「一緒におみせやさんごっこをして楽しい」「他のお店もやってみたい」「他には、どんな言葉があるのかな」という思いを生み、今後の学習や生活にもつながる学習であると考えます。学習の中で終わるのではなく、今後の児童の生活へとつなげていけるとよいでしょう。
〈対話的な学び〉 話をつなぐ
店員と客の役に分かれ、相互に関係のある語句を区別して売り買いのやり取りを行い、尋ねたり応答したりします。「おみせやさんごっこ」の活動の前に、「おみせやさんごっこ」には何が必要か、お店がどんな工夫をしているのか考えるとよいでしょう。相手の発言を聞いて、質問する、復唱して確かめる、共感を示す、感想を言うことができるとよいでしょう。
例えば、「鰺をください。」「はい。一匹でいいですか。」などのように、相手の話を受けてさらに詳しく尋ねるやり取りができることを期待します。
また、「こんにちは。」「いらっしゃい。」「ありがとうございます。」など、「おみせやさんごっこ」の活動だからこその挨拶の言葉や丁寧な言葉遣いについても考えていきます。このような言葉を使えると、相手の発言を受けて話をつなぐことができます。話合いの工夫ができ、さらに臨場感たっぷりの活動ができます。
そして、このような活動を通して、話がつながることの楽しさやよさを実感させるようにしていきたいものです。もっと多くのお店の友達の話を聞きたい、話をつなげたいという意欲につながっていくとよいでしょう。
〈深い学び〉 相互に関係のある語句
この学習では、相互に関係のある語句についての教材文があります。教材文の中で、魚屋のおじさんと、客であるけんじさんとお姉さんとのやり取りの中で、「さかなをください。」「さかなじゃわからないよ。」と、おじさんが笑いながら言います。このおじさんがそう答えた理由を考えます。その理由を考える学習を通して、相互に関係のある語句を理解します。
本単元では「あじ」「さば」「たい」などの個別の魚の名称が「一つ一つの名まえ」です。個別の名称をまとめた名前である「魚」が「まとめてつけた名まえ」です。そして、相互に関係のある語句として一つのまとまりを構成していることを理解します。
教科書に掲載されている「果物」と「魚」の例以外にも、「パン」「野菜」など、児童にとって身近な相互に関係のある語句は多数あります。相互に関係のある語句を考える学習活動を通して、相互に関係のある語句は一つのまとまりを構成していることを理解できるとよいでしょう。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
タブレット端末に品物の名前の言葉を収集していくとよいでしょう。自分でまとめて付けた名前の言葉を決め、学校にある物の中から写真を撮り、それを一つ一つの名前の言葉として収集していきます。
また、インターネットで検索をして、イラストや写真を収集してもよいでしょう。
集めた一つ一つの名前の言葉は、その後の「おみせやさんごっこ」の品物につなげてもよいですし、「まとめた名前は何?」というまとめてつけた名前の言葉は何かを当てるクイズをしてもよいでしょう。いろいろな一つ一つの名前の言葉を収集し、その収集した言葉が次の活動に生きると、児童がより意欲的に学習に取り組むことができます。
6. 単元の展開(6時間扱い)
単元名: いらっしゃい! もののことば
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時、3時)
① 学習の見通しをもつ。
買い物をしたときの経験を出し合い、店での言葉のやり取りに関心をもつ。教材文を読み、物の名前には相互に関係のある語句があることを理解する。「ものの名まえをあつめて、おみせやさんごっこをしよう」という学習課題を確認する。
・第二次(4時、5時)
② 教材文に出てくる物の名前を、相互に関係のある語句として整理する。
(課外)身の回りの物の名前を集める。
③ 相互に関係のある語句を整理し、ノートにまとめる。
集めた言葉を発表し、クイズを出し合う。
④「おみせやさんごっこ」の準備をする。
③で発表し合い、クイズにした身の回りの物の名前を参考にして、開きたいお店ごとにグループを作る。
⑤ まとめてつけた名前で看板やポスターを作り、一つ一つの名前の言葉で品物カードを作る。
教科書を参考にして、グループごとに「お店の人」と「お客さん」の話し方を練習する。
・第三次(6時)
⑥「おみせやさんごっこ」をする。
「お店の人」と「お客さん」の言葉のやりとりを楽しむ。
全時間の板書例と指導アイデア
イラスト/横井智美