小3社会「市の様子の移り変わり(土地利用を中心に)」指導アイデア
執筆/高松市立亀阜小学校教諭・角昌平
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登
高松市立十河小学校校長・大嶋和彦
目次
年間指導計画
・身近な地域の様子
・市の様子
・私たちのくらしと農家の仕事
・わたしたちのくらしと工場の仕事
・わたしたちのくらしとスーパーマーケットの仕事
・火事から地域の安全を守る
・事故から地域の安全を守る
・市の様子の移り変わり(人口の変化を中心に)
・市の様子の移り変わり(土地利用を中心に)
・市の様子の移り変わり(交通の違いを中心に)
目標
市の様子の移り変わりについて、交通や公共施設、土地利用や人口、生活の道具などの時期による違いに着目して、聞き取り調査をしたり地図などの資料で調べたりして、年表などにまとめ、市や人々の生活の様子を捉え、それらの変化を考え、表現することを通して、市や人々の生活の様子は、時間の経過に伴い、移り変わってきたことを理解できるようにするとともに、主体的に学習問題を追究・解決し、これからの市の発展について考えようとする態度を養う。
評価規準
知識・技能
①交通や公共施設、土地利用や人口、生活の道具などについて博物館や資料館などの関係者や地域の人などへの聞き取り調査をしたり地図などの資料などで調べたりして、必要な情報を集め、読み取り、市や人々の生活の様子を理解している。
②調べたことを年表や文などにまとめ、市や人々の生活の様子は、時間の経過に伴い、移り変わってきたことを理解している。
思考・判断・表現
①交通や公共施設、土地利用や人口、生活の道具などに着目して、問いを見いだし、市や人々の生活の様子について考え、表現している。
②市の様子の変化と人々の生活の変化を結び付けて、市や人々の生活の様子の変化を考えたり、これからの市の発展について考えたりして、適切に表現している。
主体的な学習に取り組む態度
①市の様子の移り変わりについて、予想や学習計画を立てたり、学習を振り返ったり見直したりして、主体的に学習問題を追究し、解決しようとしている。
②学習したことや市役所が作成している資料などを基に、これからの市の発展について考えようとしている。
学習の流れ(16時間扱い)
問題をつくる 4時間
- 昔の道具を調べて、今の道具との違いをまとめる。
- 時期の違う高松市の写真を比較して気付いたことを話し合い、学習問題をつくり、見通しを立てる。
(学習問題)
わたしたちの住む高松市は、どのように変わってきたのだろう。
追究する 10時間
- 高松市の土地利用、人口、交通、公共施設の時期による違いを調べる。
- それぞれの視点での時期による違いについてわかったことを地図や年表にまとめる。
- 地図や年表を基に、高松市や人々の生活の移り変わりをまとめる。
- 高松市がよりよくなるために、どうすればよいかを考え、話し合う。
まとめる 2時間
- 高松市の移り変わりについて学んだことや、よりよい高松市の在り方について話し合い、「高松市移り変わりパンフレット」にまとめる。
問題をつくる
道具の時期による違いについて調べたり、時期の違う高松市の写真を見比べたりして、高松市の移り変わりについて調べる単元の学習問題をつくる。(1、2、3、4/16時間)
導入のくふう
いろいろな昔の道具を実際に見たり触ったりする活動や、自分たちになじみのある場所の今と昔の写真を比較しながら気付いたことを話し合う活動を通して、高松市や人々の生活の様子がどのように移り変わってきたか調べたいという意欲を高める。
1、2時間目
昔の道具を調べて、今の道具との違いをまとめる。
これらの道具は、実際に昔に使われていた道具です。どのように使っていたのでしょうか? 使い方や今の道具との違いを調べましょう。
【道具の移り変わり年表】
年表に整理すると、道具がどのように移り変わったかがわかりやすいね。
時代とともに、道具が人の力や火を使うものから電気を使うものに変わってきたことで、生活が便利になってきたね。
変わったのは道具だけなのかな。高松市や私たちの住む町の昔の様子はどのように変わってきたのだろう。
≪導入のポイント≫
実際に使われていた昔の道具の体験を通して、昔の人々の知恵や工夫、苦労などをより具体的にイメージすることができます。また、1人1台端末を活用して、インターネット等で昔の道具の使い方や種類を調べることも有効です。このような体験を通じて、今と昔の生活の変化について関心を高めていきます。また、道具の移り変わりを年表に整理することで、時代の大まかな枠組みを理解し、これからの高松市の移り変わりの学習にその枠組みを活用していけるようになります。
3、4時間目
時期の違う高松市の写真を比較して気付いたことを話し合い、学習問題をつくり、見通しを立てる。
前の時間には、昔の道具を調べましたね。道具はどのように変わってきましたか。
道具は、人の力や火を使うものから電気を使うものに変わっていきました。道具が変わってきたことで、ぼくたちの生活は便利になりました。
道具の移り変わりによって、私たちの生活も変化してきたのですね。では、高松市の様子はどうでしょう。
昔の写真では、右下の地域は田畑が多いけれど、2021年頃の写真では、家などの建物がたくさんあるね。土地の使われ方が変わったのかな?
写真左下の峰山は今も昔も変わらないね。ぼくが習い事に行くときに、車で通っている峰山の栗林トンネルも昔からずっとあるのかな?
どちらの写真にも、学校の近くの広い道路である観光通りや中央通りがあるね。
亀阜小学校 は今年で150周年。昔と今では、様子が変わっているね。最初は、木造の校舎だったんだね。
わたしたちの住む高松市は、どのように変わってきたのだろう。
学習問題への予想
家が増えているから、土地の使い方もきっと変わっていて、高い建物とかお店が増えたと思うよ。
電車の駅が増えたり、新しい空港ができたりするなど、交通の様子が変わっていると思うよ。
家などの建物が増えているから人も増えて、公共施設も増えているんじゃないかな。
【学習計画】
①高松市の土地の使われ方の変化を調べる。
②高松市の人口の変化を調べる。
③高松市の交通の変化を調べる。
④高松市の公共施設の変化を調べる。
⑤高松市の移り変わりについてまとめる。
⑥調べたことをパンフレットにまとめる。
≪学習計画のポイント≫
単元の学習問題を解決するために、何を学習するのか、どの順番で学習していくのかなど、学習計画や追究の方法を児童と共有し、児童が学習の見通しをもち、主体的に学びに向かうことができるようにしましょう。
追究する
高松市の土地利用(市域の広がり)、人口、交通、公共施設の時期による違いを調べ、高松市や人々の生活の移り変わりについてわかったことを地図や年表にまとめる。 (5、6、7、8、9、10、11、12、13、14/16時間)
高松市を調べる視点を関連付けながら話合い活動をするためのくふう
本単元では、土地利用(市域の広がり)の視点を軸に、高松市の移り変わりを学習していく。そのため、まずは高松市の市域の広がりや土地利用の移り変わりを学習していく。その後、人口増加の原因を考えたり、交通網の整備について考えたりするなかで、土地利用(市域の広がり)の移り変わりと、その他の視点と結び付けてその時期の変化について考えるようにする。
5~11時間⽬
高松市の土地利用(市域の広がり)、人口、交通、公共施設の時期による違いを調べ、わかったことをまとめる。
土地利用、人口、交通、公共施設のそれぞれの視点で、昔と今では高松市の様子が違いますね。時代によってどのように移り変わってきたのでしょうか。
家や店が増えた高松市の中央部には、東西にのびる高速道路がつくられているね。短時間で車での長距離移動ができるようになったね。
昭和50(1975)年から現在にかけて、高松市の中央部に家や店が増えて、空港が高松市南部の自然が多い高台のある地域に移ったね。
以前に高松空港があった地域には、空港の跡地に、香川大学や香川県立図書館ができているね。この地域に家や店が増えたことと関係しているのかな。
1970~1990年代にかけて、図書館や体育館、中央公園などが家や店が多く集まる中心部にできているね。ぼくも休みの日に中央公園によく行くけれど、すぐ近くに公園や図書館があるのはうれしいね。
≪調べ学習におけるICT活用のポイント≫
資料から気になったことを、インターネットで検索することはもちろんのこと、1人1台端末にインストールされている授業支援ソフトなどを活用して、タブレット型端末上で調べたことをまとめていくことで、容易に友達の考えを知ることができます。本実践では、高松市の変化を示した地図をタブレット型端末上に表示し、気付いたことを書き込んだり、書き込んだ地図をグループで共有して比較したりすることで、友達の考えとの相違点を見いだすなど、社会的な見方・考え方を働かせることができるように、タブレット型端末を活用しました。
12~14時間⽬
高松市の昔と今の違いについてわかったことを年表に整理し、高松市の移り変わりをまとめるとともに、高松市が抱える課題から深まった課題を設定し、よりよい高松市の在り方について、必要なことを話し合う。
イラスト/(資)イラストメーカーズ