小5特別活動 学級活動編「異学年交流集会をしよう」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア
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帝京大学教育学部教授(元文部科学省視学官)

安部恭子

文部科学省視学官監修による、小5特別活動の指導アイデアです。11月は、<「異学年交流集会をしよう」学級活動⑴>を扱います。

異学年の子供が共に活動することで、「上級生へのあこがれ」「社会性の高まり」「下級生への思いやり」「規範意識」などの効果が期待できます。そのような異学年交流の活動の工夫を紹介します。

執筆/愛媛県公立小学校教諭・先田昂平
監修/文部科学省視学官・安部恭子
  愛媛県公立小学校校長・小笠原陽二

年間執筆計画

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4月 学級活動⑴ 学級会オリエンテーション、5年〇組スタート集会をしよう
5月 学級活動⑴ 学級の合言葉をつくろう
6月 学級活動⑴ キャンプファイヤーの出し物を決めよう
7月 学級活動⑶ イ よりよい学校生活をつくる委員会活動
9月 学級活動⑴ 運動会を盛り上げる工夫を考えよう
10月 学級活動⑵ 大切な目 ─養護教諭とのTT
11月 学級活動⑴ 異学年交流集会をしよう
12月 学級活動⑴ 〇年〇組オリンピックをしよう
1月 学級活動⑶ 最高学年に向けて
2月 学級活動⑴ 6年生を送る会の企画を考えよう
3月 学級活動⑴ 5年生がんばったね会をしよう

◇異学年交流について◇

1 異学年交流活動の意義とは?

近年、スマホやテレビゲームに代表される遊びの変化や核家族化などの影響もあり、異年齢の子供が交流をする機会が減り、その中で得られる貴重な学びも失われています。そのため、学校の特別活動において、各活動、学校行事の特質や内容に応じて、上学年の児童が主体的に下学年の児童をリードする活動ができるような内容や時間確保の工夫が必要となります。異年齢の児童が共に活動することで期待される効果については、次のようなことが考えられます。

2 異学年交流活動をよりよいものにするために

⑴ 1年間を通して意図的・計画的に活動しよう

異学年交流活動を意図的・計画的に取り組むことで、子供たち自身も見通しをもって活動に取り組むことができるようにします。学級活動の経験を生かして、年度当初は互いを知り人間関係を築く活動に取り組むことで、緊張感が解け、少しずつ人間関係が築かれていきます。異学年交流活動をすることに喜びを感じたり、トラブルを解決したりしながら、仲間意識や所属感が高まります。さらに、学校の実態によって、清掃活動や給食時のお手伝いなどの日常生活に縦割り班の活動を取り入れることで、異学年で交流する機会が増え、充実した活動になるでしょう。

⑵ 子供たちの力でチャレンジできるようにしよう

子供たち自身が活動内容を考えたり、創意工夫したりするような場をつくることで、異年齢交流活動に主体的に取り組めるようにしましょう。一人一人が役割をもつことで自己有用感が高まり、仲間と協力して活動するという協働的な活動が、子供同士の絆づくりにつながります。

⑶ 高学年への「憧れ」を誘う掲示物

子供たち同士がいっしょに活動する時間があまり取れない場合でも、異学年を意識する場をつくることはできます。例えば、校内掲示板や廊下のスペースを活用することです。上学年が行っている係活動や話合い活動、クラブ活動や委員会活動、児童会集会活動などの様子を、下学年の子供も目に入る場に掲示することで、「すごい!」「こんなことをしてみたい!」と上学年に憧れの気持ちを抱きます。このように、掲示物を通して異学年とのつながりを根付かせていくことも可能です。

⑷ グループの名前や約束事を決めよう

学校で縦割りグループで交流する時間が年間を通して設定されている場合は、年度当初にグループの名前や約束事を話し合って決めるのもよいでしょう。どんなグループにしたいか、どんな交流活動にしたいかということを同じグループになった子といっしょに話し合いましょう。そして、その思いをもとに、グループの名前を決めたり、活動する上での約束事を決めたりすることも考えられます。約束事は、例えば「グループの全員の名前を覚える」「相手を名前で呼ぶ」「みんなを大切にする」など、上学年だけでなく、みんなが意見を出し合って決めるようにし、決定していく過程も互いのつながりを育てる一歩につながります。

⑸ 6年生と協力して、学校や地域に役立つ活動をしよう

5年生は学校のプレリーダーであり、来年度は学校を背負う立場になります。そのためにも、6年生と協力して年間活動計画を立てることが大切です。例えば、学校や地域に役立つ清掃活動や交流活動などを取り入れ、高学年としてリーダーシップを発揮したり活躍したりする場や機会となるようにします。集団の中で役割を果たすことは自己有用感の向上につながり、誰かのために活動を続けることで喜ばれたりほめられたりすると自己肯定感も高まります。1年間の終わりには、6年生のために5年生が主体となって活動を計画することで、さらにリーダー性が育まれていきます。

3 異学年交流集会に向けて学級会にチャレンジ!

STEP1 事前の準備

①子供たちの「思い」を引き出す
異学年交流集会を実施する上で大切なことは、子供たちの「思い」です。どうして異学年交流集会をするのか、担任の先生はうまく気持ちを引き出してあげましょう。そのために、学級に議題箱を設置することや日々の教育活動で様々な学年と交流するとよいでしょう。継続した取組が子供同士の関係を深めて、異学年交流集会を成功へと導くことができます。

議題箱に他学年と関わりを深めたいとありました。何年生がよいと思いますか?

ペア学年の2年生とは運動会で協力して活動していたので、もっといっしょに遊びたいです。

運動会だけで終わるのはもったいないと思います。

2年生と異学年交流集会をして仲良くなり、さらに絆を深めたいな。

このように、運動会でのペア学年や縦割りグループなどの継続した取組が、子供たちの「異学年交流集会」への意識を高めます。
今回は、「運動会を盛り上げよう」編のペア学年2年生を対象とします。

②「なぜ交流集会をするのか」目的を明確にする
交流集会への準備のスタートです。自分たちが下学年に対してどんな上級生でいたいか、活動が終わったときにどうなっていたいかなどの具体的な姿を話し合うのもよいでしょう。「交流する目的」を明確にすることでイメージがわきやすくなります。

どんな交流集会にしたいですか?

みんなが楽しいと思える活動にしたいです。

2年生の子たちに喜んでほしいな。

みんなが笑顔になるような時間になるといいなあ。

「目的」を明確にするとイメージがわきやすくなりますね。


異学年交流集会を進めるうえで、学級担任同士の連携が必要不可欠となります。学年の垣根を越えて、打合せや進捗状況の確認などをしながら、教員同士が協力して取り組むようにしましょう。
また、単学級(1学年が1学級のみ)ではない場合は、学年会などで子供たちの思いや取組について説明して共通理解を図ることが大切です。場合により、学年全体で取り組むようにすることも考えられます。そして、「子供たちが交流したいと言ったから行う」のではなく意図的・計画的に行います。

STEP2 学級活動⑴「2年生とのなかよし交流集会をしよう」

【事前の活動】計画委員会
①提案理由を明確にする。

運動会でペア学年の2年生とはいっしょに練習をするなどして仲良くすることができました。しかし、運動会以降はあまり関わることができていません。そこでもっと仲良くなるために、なかよし交流集会をして、2年生に喜んでもらったり、お互いのことを知ったりしたいです。そして、なかよし交流集会を通して私たちも学級のみんなともっと仲を深めたいと思います。

仲良くするとはどういうことでしょう?

2年生のことをもっと分かったり知ったりするということだと思います。

5年生のことも知ってもらうことも大切だと思います。

※学級活動ですから、「2年生に何かをしてあげる」「喜ばせる」という視点だけでなく、自分たちの学級生活の充実・向上に、交流活動をどう生かすのかを考えるようにすることが大切です。

仲を深めるためにはどのようにしたらよいでしょう?

交流集会で、お互いが笑顔になるような楽しい時間を過ごし、もっと仲良くなりたいです。

普段の時でも、学校で困っていたら声をかけたり、いっしょに遊んだりしたいです。

話し合うことを決める 。
話し合うこと1
:交流集会の内容を決める。(何をするか)
事前に計画委員会で、学級会ノートに書かれたみんなの意見を把握しておくと、学級会での話合いがよりスムーズになります。その際、タブレット端末を活用し、提案理由を座標軸においたシンキングツールを用いて、出された意見を分類・整理することができます。

計画委員会の様子
計画委員会で活用したシンキングツール

話し合うこと2:仲良くなるためにどんな工夫や準備が必要か
話し合うこと3:必要な役割は何か

条件設定となる、「決まっていること」を何にするか話し合う。
日時や場所:11月○日5時間目 体育館
ゲームを3つ行う。

【話合い】


自分の意見を考えたり、発表したりする際に、右のようなシンキングツールを活用し、その遊びのメリットや工夫点を書き込んでおくことで、より具体的な姿を想像しながら話し 合うことができます。
話し合うこと①では、事前に計画委員会で、学級会ノートに書かれた意見をタブレット端末を活用して分類・整理しておき、意見を比べやすくしたり、分類・整理したことをもとに短冊に書くなどして事前に示しておき、「くらべ合う」段階から始めたりすると、工夫や準備について話し合う時間を十分に確保することができます。
話し合うこと②では、「交流会までに」「当日」の2つの視点に分けるとより整理しやすくなります。

STEP3【事後の活動】交流集会の準備

交流集会の内容や役割が決まったら、ゲームに使うグッズ作りや招待状の作成など活動に向けた準備を各係で協力して進めます。その際、教師は子供たちの様子を観察しながら、支援したり、がんばっていることを認めたりしましょう。また、実践への準備の段階で、各係で工夫できること以外の全体に関わることについて子供たちから「さらにこうしたい」という声が上がった場合は、朝や帰りの会の時間を使って時間をかけずに話し合うなどして、子供たちの創造性や自主性を大切にしましょう。

交流集会に向けてどんな準備が必要でしょうか?

2年生への招待状を作りたいです。クラスに作るのか、一人一人に作るのか、どうしようかな。

タブレット端末で招待状を動画にしてみるのもおもしろうそうだね。

『自己紹介カード』を作って交換するのもいいね。

互いを知るために、ルールを工夫してみるのもいいと思います。

みなさん、2年生と楽しく遊ぶことだけでなく、互いのことを知るためにどうしたらよいかを考えて準備を進められていますね。みんなで協力しながら準備をしましょう。

 
交流会に向けて実際に準備が始まったら、ペア学年の先生と体育館でのけがの防止を含めた注意点をしっかりと話し合っておきましょう。また、個別に配慮が必要な子供がいたり、学年の発達の段階の違いによる危険が予想されたりする場合は、事前に打合せを十分に行い、適切な支援や指導について確認し、安全にできるようにしましょう。

STEP4【異学年交流集会 本番】

これまでの話合いや準備など子供が主体的に取り組んできたことを称え、交流会への意欲を高めます。活動中は、子供のよいところを見つけるように意識し、安全に留意しながら笑顔で見守りましょう。

 
本番では、実際に2年生の教室まで迎えに行って、体育館まで手をつなぎながらいっしょに行くなどすることも考えられます。始まる前から盛り上がることが期待できます。

STEP5【振り返り】

交流集会の後には振り返りカードを活用して、集会当日だけでなく準備についても振り返り、互いのよさやがんばりを認め合うことができるようにしましょう。
教師はよかったところを具体的にほめましょう。がんばりを称揚することで6年生に向けたリーダーシップを育んでいくことにもつながります。また、ペア学年の先生と連携し、下学年からお礼のお手紙や、学級でのメッセージを書いてもらうと、励みや自信となり、「喜んでもらえた」という達成感が大きくなります。 今回はレーダーチャートを用いた振り返りカードを使用しています。振り返ったことをこれからの活動に生かしていくようにします。

<学級会振り返りカード>

学級会振り返りカード ダウンロードはこちら>>

<学級活動振り返りカード>

学級活動振り返りカード ダウンロードはこちら>>

4 交流集会後の継続した取組が子供を育てる!

交流集会を終えた後、いかに継続した交流ができるかどうかにより子供たちの成長に大きく関わってきます。例えば、休み時間や昼休みを活用して遊ぶ、勉強を教えに行くなどが考えられます。その際は、事前にペア学年の先生にも相談するようにしましょう。学級会で何度も同じ議題で話し合うのではなく、経験したことを生かしたり、発意・発想を生かして工夫して取り組むことを積み重ねたりすることにより、子供たちは最高学年に向けてさらに成長を続けていくでしょう。

構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝


監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


楽しい学校をつくる特別活動
すべての教師に伝えたいこと

特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!

楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。

著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
ISBN9784098402106


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