理科実験中に、子どもの思考をどんどん深める教師の声かけのワザ!【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

理科の実験をすると、子どもたちはワクワクして盛り上がりますね。その一方で、子どもたちの実験がうまくいくかどうか、先生の方はつい心配になってしまいませんか? このとき、落ち着いて子どもたちをよく見取り、適切な声かけをしていけば、子どもたちは、ただワクワクするだけではなく、考えを巡らせながら実験するようになります。今回は、実験中教師が子どもたちにどんな声かけをすれば良いのか、実際の実験場面を想定して考えていきましょう! 優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/神奈川県公立小学校教諭・堀優太
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

1.実験前に必ず見通しをもたせる

今回は、第5学年「流れる水の働きと土地の変化」の中で、「水の量を変えると流れる水の削る力が変わるのか」という問題を解決している場面を想定します。

実験中の声かけの前に、まずとても大切なのが実験前に結果の見通しをもたせることです。「自分の予想が正しかったら、どんな結果になるかな?」と問い掛け、子どもたちが結果の見通しをしっかりもった状態で実験を始めましょう。

2.実験がうまくいっているか確認する声かけ

それでは、いよいよ実験中の声かけに移りましょう。まず、全体を見渡した時に実験があまり進んでいない班を見つけたら、その班に声を掛けましょう。その時は、「実験はうまく進んでいるかな?」と声を掛ければ、きっとうまく実験が進んでいない原因を子どもたちが話してくれるはずです。役割分担がうまくいっていなかったり、実験の手順を忘れてしまったりしている時は、教師が支援して実験ができる状態にしてあげましょう。他の班と違う手順や実験器具の使い方をしている班があれば、直接正しい方法や使い方を示してあげることも重要です。

3.他の班の実験の様子に興味をもてるような声かけ

どの班も実験を進めることができていれば、他の班の実験の様子を見に行くように声を掛けてみても良いでしょう。みんなで納得する結論を出すには、お互いの結果や実験方法をよく見比べることが大切です。この時には、「他の班はどんな結果になったかな?」や「○○班はあなたたちと少し違う結果になったみたいだよ。」など、他の班の結果が気になるような声かけをしてあげると良いです。こうやってみんなで結果を見合い、考察を話し合うときに他の班の実験の様子と比べている子どもを取り上げていくと、だんだん教師が声を掛けなくても、自然と実験中に他の班の結果を見に行くようになるでしょう。

4.支援が必要な子どもに対しての声かけ

結果の見通しを実験前に確認しても、実験結果を見てすぐに何が言えるか考えることが難しい子どももいますよね。そんな子どもたちには、「この結果から何が言える?」と実験中に声を掛けるとよいです。そこで子どもが悩んでいたらもう一度結果の見通しを一緒に確認します。その上で、目の前の実験結果をもう一度見てこの結果から何が言えるか問い掛けましょう。

5.より深く考えるきっかけを与える声かけ

最後に、子どもたちは教師の声かけ一つで、自分で考えること以上に深く考えることができるようになります。例えば、「自分の予想と比べて今回の結果はどんなところが違った?」や、「本当の川もこうなるのかな?」など、予想に立ち返る問い掛けや自然事象と比べる問い掛けをしてみると良いでしょう。

今回事例として紹介させていただいた声かけはほんの一部ですし、きっとさらに良い声かけがたくさんあると思います。何より大切なのは、教師も子どもと一緒に目の前の実験結果に驚き、共感することです。実験しただけで終わってしまわないように、子どもと実験を楽しみつつ、子どもの思考をさらに引き出せるような声かけを考え、試してみてくださいね。

イラスト/難波孝

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堀 優太先生

<執筆者プロフィール>
堀 優太●ほり・ゆうた 神奈川県公立小学校教諭。理科の研究校に着任したことで科学の面白さに気付く。現在は様々な研究会に顔を出し、日々勉強に励んでいる。SSTA横浜支部会員。現在所属する横浜市立立野小学校は、令和5年度に全国小学校理科研究大会を控えている。


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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