小6算数「小数と分数の計算」 指導アイデア《百分率と分数の混じった計算の仕方》

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

執筆/北九州市立若園小学校教諭・増田大地
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、福岡教育大学教授・清水紀宏

単元の展開

第1時 小数と分数の混じった加法や減法の計算の仕方を考える。

第2時 小数と分数の混じった乗法や除法の計算の仕方を考える。

第3時(本時)百分率と分数の混じった計算の仕方を考える。〈生活場面での活用〉

第4時 学習内容の習熟・定着を図る。

本時のねらい

百分率と分数の混じった計算をする問題において、続けて掛ける方法と、小数倍または分数倍にそろえ、まとめて掛ける方法を比較検討する活動を通して、まとめて掛ける方法で解決する方法について考察する。

評価規準

百分率と分数の混じった計算をする問題について、小数倍または分数倍にそろえ、まとめて掛ける方法で解決することができる。(思考・判断・表現)

本時の展開

最近、世界でごみ問題が注目されています。

四年生や五年生の環境の学習で、ごみが増えて大変って学びました。

紙や空き缶、プラスチックなど、ごみにもいろいろな種類があります。

映像を見てください。(プラスチックのごみ問題に関する簡単な映像を見せる)

たくさんの重さのプラスチックが海に捨てられていますね。

たしか、捨てられたプラスチックを海の生き物が食べて、困っていると聞いたことがあります。

それを減らそうと、世界や日本でリサイクルなどの取組をしていたはずです。SDGsに関係もあったと思います。

プラスチックのごみってどれくらいの重さあるのだろう。リサイクルなどもされているのかな。

今日は、皆さんが今言っていたような問題を考えます。(問題を提示する)


プラスチックのごみの重さは、1年間に出るごみ全体の重さ4200万tの[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]の重さです。
プラスチックのごみのうち、20%がリサイクルされています。
リサイクルされたプラスチックのごみの重さは何tですか。

今日の問題で分かっていることと、求めることを確認しましょう。まず、求めることは何でしょうか。

プラスチックごみのうち、リサイクルされた重さです。

そうですね。では、問題で分かっていることは何でしょうか。問題文に出てくる順番に確認していきましょう。

1年間に出るゴミ全体の重さは4200万tです。

プラスチックのごみの重さはごみの全体の重さの[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]の重さです。

プラスチックのごみのなかの、20%がリサイクルされています。

※円グラフを提示し、視覚的に問題把握できるようにする。

前回の学習とは、どこが違いますか。

昨日までは、小数と分数が混じった計算をしていたけど、今日は小数でなく、パーセントになっています。

%を小数にしたらいいと思います。

%を分数にしてもいいと思います。

どちらでも、解けると思います。

では、今日の学習のめあてはどのようにしたらよいですか。

「百分率と分数が混じったときの計算の仕方を考えよう」がよいと思います。


百分率と分数が混じった計算の仕方を考えよう。

見通し

  • プラスチックの重さ→リサイクルされた重さの順に求める。
  • 関係図や線分図を使って考える。

本単元は、小学校における四則計算のまとめとなる単元です。本時は、百分率と分数の混じった計算の仕方を考える場面です。

本時の素材は、他教科(社会科や総合的な学習の時間)の学習で学んでいる内容と関連しているため、子供にとって身近で関心のあるものです。そのため、解決への必要感をもつことのできる内容と考えます。

導入では、まず子供にごみ全体に対する場面を提示し、プラスチックのごみ問題に関する映像を見せることで、問題解決への意欲や必要感をもつことができるようにします。

また、問題提示では、問題場面を分けて提示することも考えられます。

子供の実態に応じて、問題の場面を円グラフで提示し、求めるものの重さを視覚的に捉えることができるようにしてもよいでしょう。

本時へのめあてへとつなげるために、前時の問題をふり返り、本時の問題が分数だけでなく、百分率(%)が混じっていることを確認します。

自力解決の様子

A つまずいている子

・20%を20倍としている。


B 素朴に解いている子

・20%を0.2と見て、順に計算している。


C ねらい通り解いている子

・0.2を[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]と見て、リサイクルの重さがごみの重さの何倍かを分数で求めている。


Aの子供には、「リサイクルの重さがプラスチックの重さより多くなっていてもよいかな」などと問いかけ、プラスチックの20%がプラスチックの重さの20倍ではないことに気付かせます。

次に、20%がプラスチックの重さを100と見たときに、20にあたる重さであることを確認し、線分図を書かせて、リサイクルの重さの求め方を考えるよう促します。

百分率は子供が難しさを感じ、つまずきが多く見られる場面です。BやCの子供でも20%を形式的に0.2(倍)と捉えているかもしれないので、Aの子供だけへの対応ではなく、全体の学び合いでもこの誤答を取りあげ、20%の意味をふり返っておくとよいでしょう。

BやCの子供は正しい解答を導くことができています。1人1台端末を活用して、ほかの子供の解法や表現を見て、いろいろな考えや表現に触れることも大切でしょう。

学び合いの計画

学び合いの場面では、まず、上で述べたように、百分率の意味の捉え直しを行います(Aさんに発表させるのではなく、必要に応じて教師から誤答として提示することも考えられます)。

このとき、「20%は0.2倍である」などの形式的なやりとりで終わらないようにしたいものです。

まず、20%を考える前に、4200万の[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]倍について、「4200万を1と見たときに、[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]にあたる重さが4200万×[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]で求められること」を確認しておきましょう。

次に、百分率が基にする重さを100と見たときに比べる重さがどれだけにあたっているかを表していることを確認し、基にする重さを1と見たときに、いくつにあたるかを考え、700万を0.2倍すればよいことを筋道立てて確認していきます。

このとき、1や100と見ることを捉えさせるために数直線図を活用しましょう。

ノート例

B 素朴に解いている子

C ねらい通りに解いている子

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

このように考えた人がいます。順に確認していきましょう。この人の気持ちになって、どのような考えか説明できる人はいますか。

まず、1年間に出るごみの重さの[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]倍がプラスチックのごみの重さなので、4200万×[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]をして、700万tになります。

ここでストップ。プラスチックの重さは700万tで、ごみの重さ4200万tより少なくなっていますね。少なくなっているのに、かけ算でよいですか。

プラスチック以外のごみもあるから、少なくなるのは当たり前だと思います。だからよいと思います。

倍だからかけ算でよいと思います。

「倍だからかけ算でよいこと」を数直線を使って確認しましょう。□に数を入れてから説明してもらいます。隣どうしで考えてみましょう。(次の数直線図をICT機器で提示し、ペアで考えさせる)

まず□にどんな数が入るか、なぜその数が入るかを説明してもらいましょう。

プラスチックの下の□が[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]、ごみの下の□が1だと思います。

では、プラスチックの重さがごみの重さの[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]倍であることを説明してもらいましょう。

倍のところを見ると、1から[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]は×[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]をします。だから、4200万の[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]倍は、4200万×[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]でよいと思います。

上手に説明できましたね。ところで、割合の学習で「基にする量」と「比べる量」という言葉を使いました。ここでは、どちらが基にする量でどちらが比べる量ですか。

ごみの重さが基にする量で、プラスチックの重さが比べる量です。

そうですね。基にする量を1と見ていることを思い出しておきましょう。では、答えの続きを考えていきましょう。700万×20=1億4000万についてはどうでしょうか。

答えが1億4000万tになっていて、全体のごみの重さよりも、リサイクルされた重さのほうが多くなっているのでおかしいと思います。

なるほど。でも、このように考えた人はどうして×20をしたのか気持ちが分かりますか。

20%だから20を掛けたんだと思います。

[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]倍も20%も割合の仲間だから、×20でもよいのではないですか。

〈C1〉20%は0.2倍だから、×20はおかしいと思います。

×20と考えている人に、「×0.2だからおかしい」といっても納得してもらえないかもしれませんね。

やっぱり、×20はおかしいです。×20だとリサイクルの重さではなくて、プラスチックの重さの20個分になってしまいます。

(最初の円グラフを見て)プラスチックのうち、一部分だけリサイクルされるから20個分になるのはおかしいということですね。では、パーセントの意味について復習してみましょう。リサイクルの重さがプラスチックの重さの20%というのはどういう意味か、さっきと同じように数直線で考えていきましょう。

まず、基にする量と比べる量をはっきりさせましょう。問題文を確認しましょう。「プラスチックのごみのうち、20%がリサイクルされているそうです。」2つの量について、どちらが基にする量で、どちらが比べる量でしょうか。

※ペアで確認させる。

プラスチックの重さが基にする量で、リサイクルの重さが比べる量です。

そうですね。では次に、問題文に20%とあるので、20がどこに入るか考えましょう。どこだと思いますか。

リサイクルの重さが20%だから、リサイクルの重さの下の□だと思います。

だんだんできてきました。プラスチックの重さが「基にする量」だから、割合は1を入れてよいですか。あれ? 下を見ると1と20になっています。やっぱり700万×20でよいのでしょうか。

20より1が右に来ています。

なるほど。では、左右を逆に書き直せばよいかな。

違うと思います。パーセントのときは、基にする量は1ではなく100にしないといけません。

大切なことを言ってくれましたね。パーセントの別の呼び方を覚えていますか。

百分率です。

そうですね。今、言ってくれたように、パーセントは基にする量を100と見たときに、比べる量がいくつにあたるかを表していますね。プラスチックの重さ、リサイクルの重さ、100、20を使って、この割合の関係をきちんと言えますか。隣の人と言い合ってみましょう。

きちんと言えましたか。

プラスチックの重さを100と見ると、リサイクルの重さは20にあたります。

きちんと言えましたね。では、計算を確認しましょう。実は、さっきC1さんが言ってくれたように、多くの人が700万×0.2という計算をしていました。この図で説明できますか。

基にする量を1にします。基にする量を1にするためには、100で割ります。比べる量の20も100で割ると0.2です。さっきの[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]と同じように、700万×0.2をすればよいです。140万になります。

ほかにもあります。20÷100を分数にすると[MATH]\(\frac{20}{100}\)[/MATH]になって、約分すると[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]になります。だから、700万×[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]でもよいと思います。140万になります。

なるほど。百分率は基にする量を100と見ているけれど、それを1と見ると、小数倍や分数倍として考えることができるんですね。

これだと1年間に出るごみの重さよりもリサイクルされている重さのほうが少ないからよさそうです。

700万tの内の、140万tしかリサイクルできていないなんて。ごみとなっているプラスチックの重さが多すぎます。

これだけしかプラスチックのごみをリサイクルできていないなら、プラスチックのごみがあふれてしまいます。

※次に、Cの考えを取り上げ、「倍をまとめて掛ける」方法を検討します。このような倍と倍を合成するイメージをもたせる場合は、関係図が有効です。この問題の場合、Bの考えでは、「(大きな数)×分数(または小数)」を2回しなくてはいけませんが、Cの考えでは「(大きな数)×分数(または小数)」が1回で済むよさにも気付かせましょう。

次のように考えた人もいるみたいですよ。(Cの考えをBの考えと並べて提示) さっきの考え方と、どこが違うか隣どうしで話し合い、気付いたことを発表しましょう。

<Bの考え方>

<Cの考え方>

Bは2回かけ算としています。Cは1回です。

Bは小数のかけ算も使っています。

Cは[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]と[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]を掛けて[MATH]\(\frac{1}{30}\)[/MATH]倍と求めています。

まとめて考えると、求めたい重さを一気に計算することができます。

「一気に」というのは分かりやすい表現ですね。「まとめて掛ける」と楽に計算ができるということですね。ところで、この[MATH]\(\frac{1}{30}\)[/MATH]倍とは、どういうことでしょうか。

ごみ全体の重さからリサイクルされている重さまでを一気につないだ矢印のことです。(Cの考え方の関係図に赤で矢印を書く)

(Cの関係図を指しながら)1年間に出るごみの重さの[MATH]\(\frac{1}{30}\)[/MATH]倍がリサイクルされている重さだということだと思います。

最初に予想した円グラフだと、この赤い部分がごみ全体の重さを30個に分けた1つ分で、リサイクルされた重さだということになります。

ところで、Cさんは「まとめて掛けている」けれど、ある工夫をしています。分かりますか。

×0.2を×[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]と分数にそろえています。

どうして分数にそろえるのでしょうか。

小数にそろえるために[MATH]\(\frac{1}{6}\)[/MATH]を変えようとすると、1÷6=0.1666……、になって割り切れないから、小数にそろえると正確に計算できません。

昨日の学習でも、小数と分数が混じった計算では、分数か小数にそろえるとよいと学習しました。

昨日の学習を生かすことができていて素晴らしいですね。


百分率と分数を続けて掛ける計算でも、分数か小数のどちらにそろえてまとめて掛ける。

評価課題

SDGsの取組として、食品ロスを減らすため、全校児童400人に給食についてのアンケートを取りました。その結果、全校児童のうち、[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]が給食を残すことがあると答えました。また、給食を残す人のうち、その理由として「きらいなものがあるから」と答えた子供が70%いました。給食を残している人のうち、好ききらいで残している子供は何人でしょうか。

子供に期待する解答の具体例

①小数にそろえて考える

②分数にそろえて考える

※問題を個人で解かせた後に、時間があれば小数と分数のどちらにそろえたかを話し合う場面を設定する。

今回の問題でも、分数にそろえてまとめて計算することができました。

今回は分数が[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]だから、2÷5で0.4と割り切れて求めやすいから、小数にそろえてまとめて考えてもよかったです。

でも、さっきの問題みたいに、0.1666……と割り切れない場合は、分数にそろえないとだめです。

問題や数字によって、分数と小数のどちらにそろえるか選べばよいと思います。

なるほど。昨日の学習で学んだように、分数にそろえるとどんなときでも計算ができるんですね。でも、問題によっては、小数にそろえて計算することもできると分かりましたね。

感想

  • 最初は、百分率(%)を整数のまま考えて計算していたけれど、友達の考えを聞いて、小数や分数に変えることが大切だと気付きました。
  • 百分率を小数に変えて計算していたけれど、「何倍にあたる部分」を分数にそろえてまとめて考える方法もあると分かりました。昨日の学習で学んだように、小数と分数が混じったときは、分数にそろえるほうがよいと自分は考えました。
  • 百分率を分数に変えてまとめて考えていたけど、小数にそろえて計算できるときもあると分かりました。小数と分数どちらで計算すると求めやすいのか、自分で考えながら計算していきたいと考えました。

ワークシート(ダウンロード可)

ダウンロードはこちら>>

板書例

イラスト/横井智美

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました