小3 国語科「はんで意見をまとめよう」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小3国語科 「はんで意見をまとめよう」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都練馬区立向山小学校・岡崎智子
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、考えを一つにまとめる話合いを行います。
日常生活に関する話題に対して班で意見をまとめるために、グループの中で司会や記録などの役割を分担して話し合うことで、目的や進め方を確認して話し合い、互いの意見の共通点や相違点に着目して考えをまとめる力を育てます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
「はんで意見をまとめよう」は、少人数のグループで考えを一つにまとめる話合いを行う単元です。
グループの中で、司会や記録、時間を計るといった役割を分担し、自分の役割を意識しながら話し合っていきます。
「話すこと・聞くこと」の領域は、「話すこと」「聞くこと」「話し合うこと」の三つに分かれており、本単元は「話し合うこと」の学習です。
これまでの学習経験を振り返ってみましょう。
2年生の「そうだんにのってください」では、班の一人の相談したいことについて、他の三人が自分の意見を順番に話し、相談した人が出された中から一つを選ぶという学習をしました。
3年生の「山小屋で三日間すごすなら」では、付箋を活用し、考えを広げたり整理したりする話合いを経験しています。付箋に書かれた考えを見ながら話し合い、共通点や相違点で分類や整理をしました。
本単元では、4人グループで意見を出し合い、考えを一つにまとめる話合いを行います。
司会などの役割は、本単元が初登場です。それぞれがどのような役割なのかがしっかりと理解できるようにしていきましょう。話し合って意見をまとめる場面は、学校生活の中にたくさんあります。ここで丁寧に基礎を学び、他教科や他領域の学習の中で経験を重ねることで、グループで話し合う力を定着させることができます。
話合いには、話題の設定が重要です。多くの児童が話題を共有して話合いに参加できるように、児童の日常生活に基づいた話題を設定するようにします。
本実践では、「1年生に読み聞かせをする本を1冊選ぶ」ために班で話合いを行います。
学習計画を立てる際に、子供たちとやりとりをしながら「何のために」という目的を明確にしします。考えを一つにまとめるためには、話合いの目的を意識することが大切です。何のためなのかという目的が、考えを選んだりまとめたりするときの判断基準となります。
本実践では、「1年生に読み聞かせをするため」という目的が、本の選定や読み聞かせの方法を検討する際の判断基準となります。相手意識や目的意識を明確にすることや、目的から逸れていないかを確かめることで、話題が脱線するのを防ぐこともできます。
実際に話し合う際には、モデル動画を見たり話合いの台本を読み合わせたりして、話合いの進め方やそれぞれの役割のイメージをもってから話し合うようにします。
話し合った後に振り返ることも大切です。役割に応じた発言ができていたか、どのような発言がよかったのかを振り返ります。話し合うグループとその様子を見るグループのようにグループを組み合わせ、他のグループのよいところを探すようにします。友達の話し方のよいところを探したりアドバイスをしたりすることで、よりよい話し合い方への気付きも増えていきます。
本単元の学習は、4年生の「クラスみんなで決めるには」につながります。3年生で身に付けたグループで話し合う力を生かし、4年生では学級全体で話し合っていきます。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 児童にとって身近で魅力的な話題の設定
「話し合って決めたい」という思いをもつためには、話題が児童にとって日常的で身近であることが大切です。加えて、話合いをして終わりではなく、話し合って決めたことを実行できるような話題にしましょう。実際に行うことについて話し合うことで話し合う必然性や、よりよく話し合いたいという思いが生まれます。
本実践では、教科書の例示と同じ「秋の読書週間で一年生に読み聞かせをする絵本」を話題にしていますが、時期や学校、学級の実態に合わせて変えてもよいでしょう。
単元の導入は、児童から「やりたい!」という声が上がるように工夫します。
「一年生がどんな本を読んだらいいか困っているんだって」「司書の〇〇先生からのお願いなんだって…」など、児童にとって取り組む必要を感じさせるスタートにします。依頼の動画を見せてもよいでしょう。
児童とやり取りしながら「秋の読書週間で一年生に読み聞かせをしよう」という話合いの目的となる活動を決め、その後学習計画を立てていきます。やりとりしながら学習計画を考えることで、児童が学習への見通しをもつことができ、自ら計画的に取り組もうとする主体的な学びが生まれます。
1時で話し合ってみることで、「時間内に決まらなかった」「一人ずつ言って終わってしまった」「途中で否定されて最後まで話せなかった」などと、自分たちの話合いの課題が見えてきます。
そこから「よりよく話し合うためにはどうしたらよいだろうか」という問題意識が生まれ「話合いのコツを見つけよう」という単元の学習課題をつくることができます。よりよい話合いにするという視点から最初につくった学習計画を見直し、修正するとよいでしょう。
〈対話的な学び〉 話合いの振り返りを生かし、よかったところや改善点を伝え合う
話合いを行った後に、振り返る時間を設けます。目的を踏まえ、話題に沿って話し合うことができていたか、役割に応じた話し方はできていたか、どのような話し方がよかったかなど、話合いの進行や参加者の発言についてよかったことを伝えたり、改善策を考えたりしていきます。
話合いの中で、客観的に自分や友達を見ることはなかなか難しいものです。そこで、「話し合うグループ」「見るグループ」に分かれて互いに見合うことができるようにします。
2グループが一緒に振り返ることで、「こんな話し方や聞き方がいいんだ。」「話題がずれたら司会が戻すんだ。」「目的のために全員が一生懸命話し合っていたね。」などの気付きが広がります。
友達からの評価やアドバイスは「よりよい話合い」への意識や意欲を高めることにつながります。話し合いっぱなしにせず、しっかりと振り返りの時間を確保することが大切です。
〈深い学び〉 話合いの中で使いたい言葉や話合いのコツを整理する
単元の終わりには、今回の学習で気付いた「話合いのコツ」を整理します。
「話合いのコツ」とは、使うと話合いがスムーズに進んだり、理由を詳しく聞き出せたりする言葉や、話合いの進め方、それぞれの役割で大切なことや気を付けること、話合いに向かう姿勢や意識などです。
毎時間の振り返りで「今日のイチオシ!話合いのコツ」として、その時間に一番大切だと思った「話合いのコツ」を書いていきます。
第8時には、書き溜めた「話合いのコツ」や教科書38ページ「使ってみたい司会の言葉」や39ページ「たいせつ」を参考にしながら、自分たちが気付いたことを出し合い、一つにまとめます。
これらの「話合いのコツ」は、教科の垣根を越えて、これからの話合い活動で活用することができます。今回の学習を生かしながら、他の活動で新たに見つけた「話合いのコツ」を加えていくことで、単元終了後も話合いが発展していくことが期待できます。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)話合いを記録し、振り返りで活用
話合いの様子を後から振り返ることができるよう1人1台端末で録画をしておきます。グループの振り返りや全体での共有の際に活用します。また、評価や個に応じた指導に生かすこともできます。
付箋を出し合って貼った直後の画用紙と、話し合って付箋を整理した後の画用紙、の写真も記録し、提出させるとよいでしょう。
(2)気付いた「話合いのコツ」の蓄積
第2時からは、毎時間の終わりに「今日のイチオシ!話合いのコツ」を考えさせます。
ロイロノートやオクリンクなどの学習支援ソフトを活用して、1日1枚のカードに書き込み、溜めていきます。溜めたカードを見返すことで、児童が自分の気付きを振り返ることができます。提出されたカードから教師が一人一人の状況をつかみ、評価や指導に生かすこともできるでしょう。
(3)話合いのモデル動画
話合いの進め方や役割に応じた話し方のイメージをもつことができるよう、モデル動画を作成します。デジタル教科書が導入されている場合は、そちらを活用しましょう。
第3時には全員で視聴して話合いの進め方などを学習しますが、児童の1人1台端末に配信したり共有フォルダに保存したりするなど、学習の様々な場面で、児童がタイミングよく見ることができるようするとよいでしょう。必要な部分を繰り返し見たり、話し合ってみて困った部分をどうすればよいか確かめたりすることができます。個に応じた支援の一つとして活用できます。
6. 単元の展開(8時間扱い)
単元名: はんで意見をまとめよう
【主な学習活動】
・第一次 単元の学習課題を設定し、学習計画を立てる。
(1時)
① 話合いの目的となる活動「秋の読書週間で一年生に読み聞かせをしよう」を設定する。
② 大まかな学習計画を立てる。
③「何のために読み聞かせをするのか」をグループごとに話し合う。〈 端末活用(1)〉
(2時)
① 第1時の話合いを振り返る。〈 端末活用(1)〉
② ①で気付いたことをクラス全体で共有し、単元の学習課題「話合いのコツを見つけよう」を設定する。
③ 教科書を読み、話合いの進め方(大まかな流れや役割)を学ぶ。
④ 1時に立てた学習計画を見直し、必要があれば修正する。
⑤ 学習を振り返り、「今日のイチオシ!話合いのコツ」を記録する。〈 端末活用(2)〉
・第二次 話合いの進め方を知り、話し合う。
(3時)話合いの進め方や役割を知る。
① グループで役割を分担する。
② モデル動画や話合い台本を見て、話合いの進め方や役割に応じた発言の仕方を学ぶ。〈 端末活用(3)〉
③ 学習を振り返り、「今日のイチオシ!話合いのコツ」を記録する。〈 端末活用(2)〉
(4時)1年生に読み聞かせたい絵本の候補を出し合う。
① 1年生に読み聞かせたい絵本を付箋に書き出す。(個人)
② グループで話し合って、絵本の候補を出し合い、整理する。(班)
③ 話合いを振り返る。
④ 学習を振り返り、「今日のイチオシ!話合いのコツ」を記録する。〈 端末活用(2)〉
(5時、6時、7時)出し合った候補の中から、1年生に読み聞かせる絵本を選ぶ。
① 4時の振り返りで気付いたことを出し合う。
② モデル動画や台本を見て、話合いの進め方を確かめる。〈 端末活用(3)〉
③ 班ごとに話し合って、1年生に読み聞かせる絵本を決める。
④ 話合いを振り返る。
⑤ 学習を振り返り、「今日のイチオシ!話合いのコツ」を記録する。〈 端末活用(2)〉
⑥ 話し合うグループと見るグループを交代して③~⑤をやる。
⑦ グループで選んだ絵本とその理由を報告する。
・第三次 単元の学習を振り返る。
(8時)
① これまでの学習の中で自分が見つけた「話合いのコツ」を振り返る。〈 端末活用(2)〉
② クラス全体で出し合い、「〇組、話合いのコツ」として整理する。
③ 単元の学習を振り返る。
全時間の板書例と指導アイデア
●「主体的な学び」のために
ビデオレター(動画)または、お手紙で「1年生に本の紹介や読み聞かせをしてほしい。」という依頼が来るところから単元の学習が始まります。
児童のわくわく感を高め、やってみたいというつぶやきが出れば、導入は成功です。
みなさんに、動画が届きました!
(動画を視聴する)
どうでしたか?
1年生に図書館や本のことを教えてあげたいな。
ぼくたちが、読み聞かせをしてあげたらいいんじゃないかな?
自分が読んで面白かった本とか。
なるほど。もうすぐ読書週間だから、ちょうどよいかもしれません。どんな本を読み聞かせるのかな。
あまり長くない方がいいと思います。
字がいっぱいだと1年生が読むのは大変だから絵本とか。
どうやって読み聞かせるのかな。
何人かで1冊を読んだらいいと思います。
なるほど。じゃあ、読書週間に1年生に絵本の読み聞かせをしてみましょうか。
はい!
児童とやり取りしながら学習計画の板書をしていきます。
本時では、活動の内容と相手を明確にしておきます。児童の発言は、学習の目的や課題を児童の言葉で表す大切な材料となるので、吹き出しなどで板書に残します。
● 端末利用の方法や効果
「何のために読み聞かせをするのか」について、4人程度の少人数のグループを作って、話し合います。課題を見つけるためのものなので、児童に任せて自由に話し合わせます。
その様子から実態を把握し、指導に生かしていきます。このとき、端末を活用して、児童の話合いを録画し、よい部分とうまくいかない部分を整理しておくことで次時の指導に備えます。
●「対話的な学び」のために
1時の話合いを振り返ります。
出された意見をよかったこと(〇)と、うまくいかなかったこと(△)に分けて板書していきます。
うまくいかなかったこと(△)があまり出てこない場合は、「全員意見を言えたのかな。」「せーの、で決めてないかな。」「理由は話し合えたかな。」などと視点を示したり、「〇〇さんが、話合いの中で、ちゃんと聞いてと言っていたけど…」などと声をかけ様子を尋ねたりします。
このとき、前時で撮影した動画を活用して、よかったこと(〇)と、うまくいかなかったこと(△)を確認することで、具体的に話合いを振り返ることができます。
振り返った後に、感想を聞きます。「上手に話合いができるようになりたい。」や「どうやったら話合いがうまく進むのか知りたい。」という言葉が出てきたら、単元の学習課題につなげることができます。ここで聞いた感想は、提示用のカード等にまとめ、児童にいつでも示して、確かめることができるようにしておきます。
●「深い学び」に向けて 端末利用の方法と効果
「今日のイチオシ!話合いのコツ」は、ロイロノートやオクリンクなどの学習支援ソフトを活用して、毎時間書き溜めていきます。
1時間1枚のカードに書き、カードをつなげていくことで、「話合いのコツ」が少しずつ増えていくことが実感できます。
どちらのソフトも提出機能があるので、提出されたカードを教師が確かめることで一人一人がどのようなことを大切だと思っているのかを見取ることもできます。次時の最初に、多くの児童が気付いていないけれども大切な内容を書いた児童のカードを紹介することで、よい気付きを広めていきます。
イラスト/横井智美