「STEAM教育」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】
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新しい学習指導要領の実施にあたり、これまでのSTEM教育にAを加えたSTEAM教育の推進が求められています。STEAMはスチームと読み、それぞれSはScience(科学)、TはTechnology(技術)、EはEngineering(工学)、AはArt(芸術)、MはMathematics(数学)の頭文字を表しています。

執筆/創価大学大学院教職研究科教授・宮崎猛

STEM」から「STEAM」に

STEM教育は、1990年代に科学技術関連の人材育成を促進し、国際競争力を高めることを目的として米国で始まったと言われています。2000年代後半になるとSTEMは広く世界各国の教育において重視されるようになりました。背景には、ロボットやコンピュータといった技術の急速な進歩があり、高度な理系の知識や技術をもつ人材育成を求める声が高まったことがあげられます。

日本では「Society5.0」の時代に求められる力や教育の在り方として、教育再生実行会議第十一次提言(2019年5月)においてSTEAM教育が言及されました。具体的には「幅広い分野で新しい価値を提供できる人材を養成することができるよう、新学習指導要領において充実されたプログラミングやデータサイエンスに関する教育、統計教育に加え、STEAM教育の推進」を図ることが求められたのです。

STEAM教育推進の背景について、中央教育審議会は次のように述べています。

AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日においては、これまでの文系・理系といった枠にとらわれず、各教科等の学びを基盤としつつ、様々な情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結びつけていく資質・能力の育成が求められている。

文部科学省初等中等教育局教育課程課「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について

STEAM教育の目的

文部科学省はSTEAM教育の目的として、

(1)科学・技術分野の経済的成長や革新・創造に特化した人材育成
(2)STEAM分野が複雑に関係する現代社会に生きる市民の育成

の2つをあげています。また、STEAM教育は先進的な科学技術の担い手育成に有効であるだけではなく、学習に困難を抱えていたり、学習意欲に課題のある生徒にも有効であるとされています。こうしたことから文部科学省はSTEAMのAを「Art、芸術」に限定するものではなく、文化、生活、経済、法律、政治、倫理なども含めて広く捉えるべきであり、STEAM教育がアート、リベラルアーツ、文理の枠を超えた学びを創出するものであると説明しています。

さらにSTEAM教育はその具現化によって、学習指導要領前文(すべての校種)に示されている次のねらいにも寄与するとしています。

自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となる

文部科学省初等中等教育局教育課程課「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について

STEAM教育の方法

STEAM教育は、「社会に開かれた教育課程」の理念のもと、産業界等と連携し、主に高等学校で取り組むべきものとされました。具体的には、

(1)文理の枠を超えたカリキュラム・マネジメントの充実
(2)各教科等における探究的な学習活動の充実
(3)総合的な探究の時間、理数探究等を中心とした探究活動の充実

を図り、次のような学びを実現するものとしています。

理学、工学、芸術、人文・社会科学等を横断した学際的なアプローチで実社会の問題を発見し解決策を考えることを通じた主体的・対話的で深い学びの実現

文部科学省初等中等教育局教育課程課「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について

また、高等学校での学びの土台として、次のような取り組みも重要とされています。

幼児期からのものづくり体験や科学的な体験の充実、小学校、中学校での各教科等や総合的な学習の時間における教科等横断的な学習や探究的な学習、プログラミング教育などの充実に努めることも重要である。

文部科学省初等中等教育局教育課程課「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について

小学校、中学校におけるSTEAM教育導入も提言されました。

発達の段階に応じて、児童生徒の興味・関心等を生かし、教師が一人一人に応じた学習活動を課すことで、児童生徒自身が主体的に学習テーマや探究方法等を設定することが重要である。

文部科学省初等中等教育局教育課程課「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について

すでに各学校や自治体により実践も進みつつあるSTEAM教育。その取組のさらなる充実と成果が期待されます。

▼参考資料
文部科学省初等中等教育局教育課程課(PDF)「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について
教育再生実行会議第十一次提言概要(PDF)「技術の進展に応じた教育の革新、新時代に対応した高等学校改革について
寺子屋朝日(ウェブサイト)「STEAM教育とは?編集部が解説
日本STEM教育学会(ウェブサイト)

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