子どものアンガーマネジメント ~怒りを表す言葉をたくさん知っておこう~

クラスに、すぐに「むかつく」と言う子どもがいませんか? また、教師である自分自身が、その言葉が出そうになるのをぐっと堪えるようなこともあるかもしれません。
松下先生も以前、「教室は、なんでも言っていい場所じゃない! 『むかつく』という言葉が、むかつく!」などと感情的に怒鳴ってしまったことがあるそうです。
自分が怒りっぽいことを自覚した松下先生は、10年ほど前にアンガーマネジメントの資格(ファシリテーターとキッズインストラクター)を取得して、怒りの感情のメカニズムを論理的・心理学的・脳科学的に学びました。ただ、大人向けの小難しい話を講和形式でしても、子どもには効果はありません。
そこで今回は、「むかつく」という言葉を使わないで済むようになる楽しい授業の工夫(対象:小5以上)を紹介します。
指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司
劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。

目次
1.「『むかつく』とは?」の授業①
発問:腹が立った時に、何と言いますか?
「むかつく」が、すぐに出ます。
説明:「むかつく」とは、何かが自分に「とりつく」ことです。
発問:何がとりつくと思いますか?
思い思いに発表させます。「鬼」「妖怪」といった具体的なものもいろいろと出てくるでしょう。「むかつく」という言葉が、怒りの感情を表すネガティブな言葉だということを再認識させます。
説明:「むかつく」に当てはまる漢字を、先生が考えてみたんだ。みんなにも教えたいな。
指示:「むかつく」の「む」を「無」として、漢字で書いてみて。
説明:自分が「無理」だと思うから「無(む)かつく」のです。簡単に「無(む)かつく」と思ったり言ったりするのが習慣になると、人づきあいもできなくなってしまいます。様々な人との関係を「無理」にしてしまいます。
発問:「むかつく」の「か」を「我」として、漢字で書いてみて。
説明:「むかつく」は、自分が期待した通りの反応や結果にならなかったときに出てくる言葉です。つまり、「我がまま」が出ているのです。「むかつく」と言っている人は、「無理」な事態を次々に引き寄せ、「我」の強い人間になってしまいます。「むかつく」という言葉を簡単に使い続けると、どんどん我がままになってしまいます。
2.「『むかつく』とは?」の授業②
発問:「むかつく」って、どんなふうに言いますか?
指示:先生が2種類で言うのでどちらか手を挙げてください。
①無表情、普通の大きさの声
②激怒の表情、大声
①の「無表情、普通の大きさの声」に多く手が挙がります。
発問:①と②、どちらで言うのをたくさん聞きますか?
①の「無表情、普通の大きさの声」に多く手が挙がります。
指示:国語辞典で「むかつく」の意味を調べてみよう。
説明:1つめの意味として、「吐き気をもよおす」、2つめとして「腹が立つ。不愉快になる。しゃくにさわる」などと書いてありますね。つまり、吐き気を感じるほどに腹が立つということなんだと考えられます。②「激怒の表情、大声」に当てはまることになりますよね。
指示:「吐き気がするくらい腹が立つ」感じで「むかつく」って言ってみて。
言えなさそうな子どもを指名します。
説明:「吐き気がするほど」「むかつく」というのは、毎日のように言う言葉ではありませんね。つまり、自分の怒りの度合いに合った言葉を知って使うことが大切なんです。