小5 国語科「注文の多い料理店」全時間の板書&指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「注文の多い料理店」(東京書籍)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、ワークシート例、1人1台端末の活用例等、授業実践例を紹介します。

小五 国語科 教材名:注文の多い料理店(東京書籍・新しい国語 五)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/金沢大学人間社会研究域学校教育系教授・折川 司
執筆/広島県竹原市立忠海学園・有松浩司

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、人物像や物語の全体像を具体的に想像したり、表現の効果を考えたりする力を子供たちが身に付けられるようにします。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、物語を読んで、その面白さを説明したり、読んで考えたことなどを伝え合ったりする言語活動を設定します。

本単元で重点的に指導する指導事項が「人物像や物語などの全体像を具体的に想像したり、表現の効果を考えたりすること」ですので、ここでいう「物語の面白さ」とは、「登場人物の人物像の面白さ」「物語の全体像の面白さ」「表現の面白さ」となります。

ただし、読み手の勝手な解釈で、自由に想像を膨らませればよいというわけではありません。

あくまでも登場人物の行動や会話、場面の様子などを表している複数の叙述を結び付け、それらを基に想像させることが大切です。

また、人物像や全体像、表現の効果を捉えることが指導の中心となりますので、必要以上に、解説のしかた(例えば、解説書の書き方指導やプレゼンテーションの技術指導など)に指導時間を割くことがないように留意しましょう。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉語の面白さを自ら発見する喜びを味わう

本教材「注文の多い料理店」の面白さとして、以下のようなものが挙げられます。

① 登場人物の人物像の面白さ
作品の前半部分には、お金に目がなく、自己中心的で、動物の命をなんとも思わない二人の紳士の人物像が、ユーモア溢れる表現で描かれています。

② 物語の全体像の面白さ
本作品は、現実世界―非現実世界―現実世界の三つの構成で描かれています。しかも、非現実世界への入り口や出口場面では、「風がどうとふいてきて、草はザワザワ、木の葉はカサカサ、木はゴトンゴトンと鳴りました。」という表現が2回繰り返されています。

非現実世界では、二人の紳士をだまして食べようと、山猫が巧みなしかけを行っています。
一つは、戸の言葉。巧みな言葉で二人の紳士を誘惑します。もう一つは、色によるしかけ。「白い瀬戸のれんが」「金文字」など、高級感のある色で巧みに二人の紳士をおびき寄せています。
こうしたしかけにまんまと引っかかる二人の紳士もさることながら、肝心なところでミスを犯す山猫の姿も、ユーモラスに描かれています。

また、最初の現実世界で死んだはずの犬が、なぜか最後の現実世界では生き返っています。
また、非現実世界を体験した二人の紳士のくしゃくしゃな顔が、現実世界に戻ってきても元に戻りません。こうした謎めいた出来事を自分なりに解釈することも、本作品を読む面白さといえます。

③ 表現の面白さ
②で挙げた色彩語に加え、本教材は、比喩や反復などの表現の工夫が数多く見られます。これらの表現やその効果について考えさせることも、本教材を読む醍醐味といえます。

児童はこれまでに様々な教材を読み、登場人物の気持ちの変化や場面の移り変わりについて学習しています。しかし、上記に示したような、登場人物の人物像や物語の全体像を想像したり、反復・比喩・色彩語などの表現の効果を考えたりする活動は、この段階では、それほど多く経験していません。
児童がこれらの面白さを自力で発見し、物語を読む楽しさをしっかりと味わうことができるように、単元の導入で動機付けを図ったり登場人物の人物像や物語の全体像などに着目させる発問を工夫したりしましょう。

〈対話的な学び〉友達や作品・作者との関わりを重視する

(1)友達との関わりを重視する
登場人物の人物像や物語の全体像、表現の工夫などを読み取った際、子供同士で考えを交流し合う活動を重視します。
具体的には、ペアやグループで気付きや考えを話し合わせたり、タブレット端末でお互いの振り返りの記述を交流させたりします。友達と関わる中で、自分とは違う見方・考え方に触れ、一層自分の考えを広げることができます。

(2)作品・作者との関わりを重視する
物語の学習では、作品や作者との関わりも大切です。「二人の紳士はどのような人物か」「山猫はどのような手口で二人の紳士をだまそうとしたのか」など、作品に対して様々な問いをもち、その問いに対する自分の考えを、叙述を基にしながらまとめ、表現する活動を重視します。
特に本単元では、表現の効果について考えることが重要な指導事項の一つですので、「作者はなぜこのような書き方をしたのか」「この書き方によってどのような効果が生み出されているか」について問うことで、しっかりと考えることができるはずです。

〈深い学び〉 発見した物語の面白さを解説文にまとめる

本単元では、1時間ごとに発見した物語の面白さを、その都度ノートや端末にまとめます。学習したことを自分の言葉でまとめることで、一層学びが深まります。

さらに単元末には、これらのメモを基に、解説文を書きます。解説文を書く際は、登場人物の人物像や物語の全体像、表現の効果など、自分で視点を決めて書くように促します。
完成した解説文は、学校の図書館などに掲示したり、学級通信に掲載したりします。不特定多数の人に向けて、作品の面白さを解説する文章を書くことで、子供たちの学びをさらに深めることができます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

本単元は、1人1台端末を使用することなく、ノートやワークシートを活用することでも十分実践可能です。しかし、短時間でより深く学習を進めるため、以下のように1人1台端末を効果的に活用しましょう。

(1)1時間ごとに見つけた物語の面白さを、端末を利用して簡単に記録する

1時間ごとに発見した物語の面白さを、その都度ノートやワークシートに書かせるという方法もありますが、後半の解説文の作成に向けて、端末を活用することも考えられます。
例えば、本校の児童はChromebookを使用していますので、Jamboardを使って、簡単に自分の考えを記録するという方法をとりました。

Jamboardは自分だけでなく友達の記録も閲覧することができるので、端末を通した対話を生み出すことができます。授業時間には限りがあるので、どうしてもクラス全員の見方や考え方に触れることはできません。その点、Jamboardを使えば、「こういう見方・考え方があったのか」と自分の考えを広げることに役立ちます。

※Google Jamboardは2024年12月31日にサービス終了します。

<作品の面白さに関する毎時間の記録(Jamboard)>

Jamboard

(2)端末を使って解説文を書く

手書きには手書きのよさがありますが、高学年という発達段階も考慮し、思い切って端末で解説文を書くことにしました。端末を用いれば、後々簡単に修正を行うことができるので、効率よく学習を進めることができます。また、一度書いた文章はデータとして保存・加工が可能であるため、本の帯やPOPづくり等、様々な形で表現の幅を広げることができます。

6. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名: 物語の面白さを解説しよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
物語の面白さを解説するという単元の見通しをもつ。
○ 物語を通読して、初発の感想(自分が捉えた物語の面白さ)を交流する。

・第二次(2時3時4時5時6時
登場人物の人物像や物語の全体像、表現の工夫を捉える。
○ 物語の叙述を手がかりに、人物像や物語の全体像、表現の工夫を捉える。
・ 二人の紳士の人物像を捉える。
・「現実世界」と「非現実世界」の境目に気付き、物語の構成を捉える。
・ 戸に書かれた言葉に込められた山猫のねらいと、二人の紳士の誤った解釈を捉える。
・ 色の表現に着目して読み、山猫のねらいを捉える。
・ 比喩や擬音語・擬態語など、表現の工夫とその効果に気付く。

・第三次(7時8時
物語の面白さを解説する文章を書く。
○「注文の多い料理店」の面白さを解説する。
・ 作品の「謎」についての自分の解釈を交流する。
・「注文の多い料理店」の面白さを解説する。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

① これまでに学習した物語を想起し、どのような点が面白かったのかを交流するとともに、単元の目標を共有する。

2学期になって最初に出会う物語です。
まずは、これまでに学習した物語を想起することから学習をスタートさせます。その上で、どのような点が面白かったかを自由に話し合う時間を設けましょう。例えば、以下のようなやりとりです。

これまでに学習した物語で何が一番面白かったですか?

「ごんぎつね」です。

「世界でいちばんやかましい音」です。

どのような点が面白いと感じましたか?

「ごんぎつね」は、ごんが一生懸命つぐないをするところが感動しました。最後はかわいそうだったけど、心に残りました。

なるほど。最初はいたずらばかりしていたごんが、だんだんと一生懸命つぐないを行うようになった。結局その思いは、撃たれてしまうまで伝わらなかったという点が心に残ったということですね。

「世界でいちばんやかましい音」は、とにかくギャオギャオ王子の性格が面白かったです。

登場人物の性格が面白かったということですね。

 こうして、様々な物語の面白さを交流したところで、次のように話します。

登場人物の面白さ、物語の展開(ストーリー)の面白さ、いろいろな面白さがありますね。これからみんなで宮沢賢治の「注文の多い料理店」という物語を学習していきますが、この物語には、たくさんの面白さが隠されています。それをみんなで見つけてみませんか。

楽しそう! ぜひ見つけてみたいです。

面白さを見つけた後はどうしますか。

このお話の面白さをまだよく分かっていない人に教えてあげたいです。

それはいいですね。ぜひいろいろな人に解説してあげましょう。

このような流れで、単元の目標を共有します。「物語の面白さを見つけて解説する」というのは、単元全体を通した目標ですので、特に意識付けておきましょう。

② 教材文を通読する。
次に教科書を開かせて、教材文「注文の多い料理店」を通読します。ここでは教師が範読を行います。「注文の多い料理店」は、文体が古いので、初めて読む場合、多少読みづらさを感じることもあるでしょう。教師自身も事前に練習をしておくことをおすすめします。

③ 初発の感想(物語の面白さ)を交流する。
読み終わった後は、まず児童に「どう?面白かったですか?」と問いかけます。
ほとんどすべての児童が「面白かった!」と反応するので、「では、どのような点が面白かったですか?」と展開します。
数分後、一人一人が感じた物語の面白さを発言するように促します。実際の授業では、児童から以下のような反応がありました。

  • 二人の紳士が明らかにだまされているのに、なかなか気が付かないところ。
  • 二人の紳士が勝手に自分達の都合のいいように解釈をしているところ。
  • 山猫が、なんとかして二人の紳士を食べようとしているところ。しかも、最後は失敗して終わるというのがさらに面白い。
  • 最初の場面で死んだはずの犬が、なぜか最後に生き返っているところ。
  • 文の書き方が少し変わっていて面白い。

児童の意見は板書例にあるように、ウェビングにしてまとめました。可能であれば、児童にも同様にノートに整理するように促すとよいと思います。

④ 作品の面白さを見つけるための今後の学習計画を立てる。
最後は以下のような流れで、児童と大まかな学習計画を立てます。

みんな1回読んだだけで、いろいろな面白さを見つけることができましたね。でも、この「注文の多い料理店」には、もっともっと面白さがたくさん隠されているかもしれませんよ。

それなら、もっとたくさんの面白さを探してみたいです。

それはいいですね。では、どのような学習を行えば、面白さが見つかると思いますか。

二人の紳士がどんな人物なのか考えてみたいです。

二人の紳士がいつ、どうやって不思議な世界に迷い込んだのかを探してみたいです。

山猫がどうやって二人の紳士をだまそうとしたのかについても、もっと詳しく考えてみたいです。

作者がどんな工夫をしているのか考えてみたいです。

読んだ後に、いろいろな疑問があったので、そのことをみんなで話し合ってみたいです。

それはいいですね。では、学習計画を一緒に立てましょう。
① 二人の紳士の人物像を考える。
② 二人の紳士がいつ、どうやって不思議な世界に迷い込んだのかを考える。
③ 山猫のしかけについて考える。
④ 作者の工夫を考える。
⑤ お話を読んで生まれた疑問をみんなで話し合ってみる。
⑥ 最後に面白さを伝える解説文を書く。
このような流れでこれから学習を進めていきましょうね。


【2時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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