「委員長会議」と「学級ミニ会議」で主体性や協働性を育てよう!

東京都公立小学校主幹教諭

丹野裕基

各委員会の委員長が集まる「委員長会議」は、子供の主体性や協働性を育てるだけでなく、委員会活動を充実させ、委員会同士の交流にも発展する実践です。また、委員たちの活動を下支えするため、それぞれの学級において10分程度の手軽な時間でできる「学級ミニ会議」もセットにすると、より効果的です。

子供の自尊感情や学級の集団力を高める実践に定評のある、東京都公立小学校主幹教諭の丹野裕基先生が解説します。

執筆/東京都公立小学校主幹教諭・丹野裕基

活動を充実させ協働性などを育む「委員長会議」

委員会活動は、委員会ごとの担当の先生に任せきりになりがちです。それではいけないと思って考えた実践が、「委員長会議」です。

委員長会議」とは、委員長の子供と担任とで休み時間に行う会議です。今年度は、6年生の担任2人でこの会議に関わっています。

委員会は、多くの子供にとって1年限りの活動です。だからこそ、多くの子供は活動の見通しをもっておらず、この委員会で「どのようなことを」「どのようにして」取り組んでいきたいのかを主体的に考えたり、活動したりすることは難しいものです。また、教員の指導も「例年通りの決まった仕事」を「確実にこなせるように」「役割に責任をもてるように」といったことに偏りがちです。

主体性や協働性を育む大きな機会であることが分かっていても、なかなかそうした機会にできていない実態を乗り越えるために、「委員長会議」を始めたのです。

【目的】
①委員長の子供が1年間という長期的な視野で自分の成長や変容に気が付けるようにする
②委員長の子供の「困った」に担任が寄り添う
③委員長同士の情報交換や話合いによって、子供の主体的な学校づくりへの参画を促す
④委員長の子供が話合いを進めたり意見の合意形成を行ったりするためのスキルを学ぶ
⑤委員長の子供が、「計画→実施→振り返り」のサイクルで委員会を運営する習慣をつくる

【準備する物】
・振り返りノート

各委員長の振り返りノート

【実施日】
・委員会活動の1週間程度前
・委員会活動の翌日

【進行例】
①会議室や教室に委員会ノートを持って集合。
(机の形態は、円形になることが多い)
②黒板に、その日の実施内容を書く。
③内容に沿って進行する。

〈委員会前の内容例〉
1.次の委員会の活動予定(各委員会から報告)

2.話合い
(例)
・委員会コラボはできる?
・魅力ある委員会発表とは?
・副委員長の仕事ってなに?

3.作業分担
(例)委員会掲示板

〈委員会後の内容例〉
1.委員会ノートへ振り返りを記入する
2.振り返りの交流
3.次回委員長会議に向けて話し合いたいことを出し合う

【委員会前の委員長会議 展開例】
教師:次が3回⽬の委員会だね。今⽇は先⽣からテーマを出してもいいかな?
放送委員長:いいですよ。
教師:それぞれの活動が分かってきたところで、「委員会がコラボ」することはできないかな? 1つの委員会の活動がもっと広がるんじゃないかなと思って。
放送委員長:「図書委員会が読み聞かせやるよ」っていう呼びかけとかを放送で流せば、もっと⼈が集まってくれるかも。
図書委員長:いいね、集まりそう! 放送委員の⼈に機械の操作をお願いして、図書委員が直接話したいな。
(中略)
集会委員長:話は少しずれるんだけど、放送委員とか集会委員は、放送したり全校で遊んだりするときに前に出ているから知られているけれど、全校の人が何をしてくれているかあまり知らない委員会もあるよね。保健委員とか。
代表委員長:確かに。何か活動が伝わるようにしたいね。

上の写真は、この話合いの中で生まれたアイデアを基にして作った「委員会掲示板」です。委員長が、他のメンバーと協力して委員会ごとの仕事内容を書いています。2学期には、内容を工夫して更新していけるといいなと期待しているところです。

主体性や協働性を育むためのポイントは、「振り返り」と「対話」です。それは、子供の経験不足を補うことになるからです。

教員として、委員長が活動を振り返ったり、困っていることを言葉にしたり、今後の見通しをもったりできる時間をつくり、同じ目線で話し合い、ファシリテーターとして委員長同士をつなぐことで、子供が主体的に活動したり、異学年が集まっていても協働的に活動したりすることができるようになっていきます。教員は指導者や反省を促す役としての参加ではなく、子供が振り返ったり、自分の言葉で問題意識を語ったりすることができるように、共感者やファシリテーターとして参加するよう心がけます

話合い力と進行力を育む「学級ミニ会議」

委員会の少人数での話合いを進行するのが苦手な委員長や、話合いで意見を出せない委員会のメンバーに対する指導に困った経験はないでしょうか。異学年が集まっている集団で、協働的に活動するのは難しいことですが、その原因も「経験不足」にあります。

少人数による話合いの進行の仕方や下級生への言葉がけの仕方を学ばないままに、6年生に進級した途端「話し合いを進めてね」「話し合いをしてね」と急に任されてもできないのは当たり前。

協働的に話し合ったり活動したりする力を育てるために学級で取り組んでいるのが「学級ミニ会議」です。ランダムに決められたテーマについて、学級の委員会ごとのメンバーが10分間の話合い活動の進行を務めるという実践です。

【進め方】
〈事前〉
・委員会ごとの実施日を決める。
・委員会ごとに役割分担(進行や板書、必要なものの準備など)を決める。
・委員会ごとに紙に書かれた「テーマカード(担任が作成)」を引き、テーマを決める。

〈話合い〉
①担当の委員会メンバーが全員前に出る。
②今日のテーマや進め方を伝える。
③話合いを進行する。
④話合いの結果をまとめる。
※話合いのゴールは、1つに決める場合もあれば、ある程度拡散した状況で終わるものもある。

〈事後〉
・話合いの振り返りを学級全員で行う。

【ルール】
・委員会ごとに与えられたテーマについて、10分で話合いを行う。
・10分の使い方は、自由。
・10分が経過したら、話合いの途中でも進行役がまとめる

【テーマ例】
・この1週間を色で表すと何色か
・学校で必ず守らなければならない約束を3つ決めるとしたら何か
・このクラスのよさを漢字1字で表すと?
・この委員会が苦手なことを熟語で表すと?
・先生(担任)のことを色で表すと何色か?

学級ミニ会議

この写真は、運動委員会の子供が話合いの進行役をしているものです。テーマは、「自分のたてわり班に一番いらない言葉は何か」でした。

委員会のメンバー全員で、1つのテーマに対する解を出す進行役となります。この場面は、司会役の子が挙手を求めた場面ですが、その他、板書役、時間管理役などを分担しています。活動を繰り返すことで、時間の管理や話合いの形態、意見の取り上げ方などの工夫が進んでいきます。

話合い後の振り返りは、「進め方の方法」だけでなく「参加者として感じたこと」を大切にしています。参加者の気持ちを考えて進行することの大切さを学んでほしいためです。

話合いの進行は、子供に任せて介入しませんが、特に初期の段階においては、技法を紹介したり、端的に話すことや使う言葉、雰囲気づくりについてなど、モデルを示しながら「教える」ことも大切にしています。

おわりに

主体性や協働性ものも学力と同じように「育てるものだ」と考えてみてください。経験が不足していることで、主体性や協働性を発揮できない子供が多くいます。そうした子供たちが何の手立ても講じられないままに、委員会で活動をしていくと「できなかった」「苦手なんだ」というマイナスの自己認識が刷り込まれていきます。具体的な手立てを取れるのは、担任だからこそ。まずは委員会活動から、担任にできることを工夫し、子供がよりよく成長していけるように実践していきましょう!

丹野裕基(たんの・ゆうき)●1986年、東京都生まれ。東京都公立小学校主幹教諭。菊池道場東京支部支部長。総合質問紙『i-check』商品開発協力委員(東京書籍)。学級経営機関誌『げんきの根っこ』(東京書籍)、『温かい人間関係を築き上げる「コミュニケーション科」の授業』 『「白熱する教室」を創る8つの視点』(中村堂)などに分担執筆者として参加。

イラスト/フジコ

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