「漢字ドリルを1冊まるごと音読しよう」漢字の苦手な子も無理なく学べる!土居正博流メソッド①

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漢字が苦手な子、漢字学習が嫌いな子はどの学級にもいるものです。そんな子どもたちが、無理なく楽しく漢字を学べる学習メソッドを、漢字学習の著書も多くもち、東京書籍小学校国語科教科書編集委員でもある土居正博先生が解説します。全3回の短期集中連載で送る第1回は、読みの学習についてのメソッドです。

執筆/神奈川県公立小学校教諭・土居正博

「読み」と「書き」をいったん区別して考える

漢字を覚えていく際は、読みと書きをいったん区別して考え、読みを優先して、先に覚えていくようにしましょう。

そもそも、同じ子どもでも、「読める漢字」の数と「書ける漢字」の数が大きく違います。では、「読める漢字」の数と「書ける漢字」の数では、どちらが多いでしょうか。普通に考えて、「読める漢字」のほうが「書ける漢字」よりも圧倒的に多いものです。そして、これも当然のことですが、「読めない漢字」よりも「読める漢字」のほうが、圧倒的に「書ける」ようになりやすいのです。

漢字の苦手な子にとって「読み」と「書き」を同時に覚えるのは難しい

漢字が苦手な子にとって、新しく学ぶ漢字は「書ける」はおろか、「読める」という段階にすらなく、「見慣れ」てもいません。ですから、いきなり新しい漢字を「書ける」ようになるのではなく、十分「見慣れ」、「読める」ようになることを目指していくほうがよいのです。読めるようになりさえすれば、やがて「書き」も習得していくことができます。

それに、少し極端な話をすれば、漢字を書く機会の減ってきた現代社会では、書くことがどうしても難しい場合は、読めさえすれば、何とか生活していくことはできるでしょう。しかし、読むこともできないとなると、生活さえもかなり厳しくなってきます。ですから、まずは、漢字が苦手な子ほど、特に「読み」を優先して学習していくようにしましょう。

このように、漢字習得を考えていくにあたり、「読み」と「書き」とは区別して考えていくこと、そして「読み」の学習を優先していくことが重要なのです。

漢字ドリルの音読で漢字がどんどん読めるようになる

漢字を読めるようになるためには、たくさん本を読むことが最も効果的です。しかし、漢字が苦手な子は普段からあまり読書をしない傾向があります。普段からあまり読書をせず、漢字を見慣れていないからこそ、漢字が苦手になっているのだとも言えます。

漢字ドリルを書いている子と読んでいる子。漢字ドリルは書くだけのものではない。

そこで、学校で配られる漢字ドリルを活用します。漢字ドリルであれば、普段から読書をしない子も学校で渡されているので必ず持っています。

さて、漢字ドリルは、「書くもの」という印象を強くおもちなのではないでしょうか。私自身も以前は、漢字ドリルは「書かせるもの」という固定観念をもっていました。

しかし、ある時、漢字が苦手な子の多くはそもそも読めていないということに気付いた私は、クラスの子どもたちに漢字ドリルを読ませてみることにしました。すると、漢字が苦手だった子どもたちも漢字を見慣れ、読めるようになっていき、やがて漢字を書けるようになっていきました。こういった背景があり、私はまず子どもたちに漢字ドリルを音読させるようにしています。

漢字ドリルは毎日「1冊まるごと音読」する

宿題としておすすめなのは、漢字ドリルを「1冊まるごと音読する」ことです。漢字ドリルには、漢字の音訓だけでなく用例や例文まで載っていますので、これらを音読することで、漢字を見慣れ、読めるようになっていきます。

漢字ドリルを配る段階で、「毎日、音読するだけでよいので続けていきましょう」と指導するのもよいでしょう。

このように指導しておくと、書く練習をするまでに見慣れ、読めるようになります。いざ書く練習をする際には、「あぁ、この漢字ね! もう読めるよ!」となり、書きもスムーズに習得していくことができるのです。

漢字ドリルの音訓を読んでいく。

漢字ドリルを音読する際は、漢字の音訓を第一優先に、余裕があれば熟語などの用例、次に例文、というステップで音読するようにしましょう。

初めから、すべてを音読しようとすると、疲れて1冊まるごと音読するのが難しくなることがあります。初めのうちは音訓だけでも十分です。音訓だけであれば、1冊1〜2分くらいで終わります。これなら毎日無理なく続けられると思います。

土居正博流「漢字学習」メソッドを詳しく知りたい先生方に

『家庭学習で100倍「漢字力」を伸ばす!』

『家庭学習で100倍「漢字力」を伸ばす!』表紙

宿題としてほぼ毎日のように学習しているにもかかわらず、定着率が低く、学年が進むにつれて漢字嫌いになる子が多い漢字の学習。
本書は、今までの漢字学習の問題点を説き明かしながら、漢字嫌いの子どもも、宿題の漢字ドリルや練習ノートを使いながら漢字力を楽しく確実に身に付けられる、とっておきの方法を紹介します。子どもの漢字学習に悩んでいる先生方や保護者の方にぜひお薦めしたい1冊です。

2023年8月22日発売 著/土居正博 小学館 1650円(税込)

「練習ノートは縦でなく横に書こう」漢字の苦手な子も無理なく学べる!土居正博流メソッド②
「学習した漢字の熟語を集め意味を推測しよう」漢字の苦手な子も無理なく学べる!土居正博流メソッド③

【土居正博プロフィール】

どい・まさひろ●1988年、東京都八王子市生まれ。神奈川県川崎市公立小学校教諭。東京書籍小学校国語科教科書編集委員。国語教育探究の会会員。全国国語授業研究会監事。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。国語科を中心に、子どもに力を付け、育てる指導を日々追究している。
〈受賞歴〉「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)「新採・新人賞」(2015年)・「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)「特別賞」( 2016年)・「読売教育賞」(読売新聞主催)「国語教育部門優秀賞」(2018年)・「国語科学習デザイン学会優秀論文賞」(2020年)

参考文献/
土居正博著『クラス全員が熱心に取り組む!漢字指導法』(明治図書出版)
土居正博著『イラストでよくわかる!漢字指導の新常識』(学陽書房)

イラスト/霜田あゆ美

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