「ティーム・ティーチング」とは?【知っておきたい教育用語】

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「ティーム・ティーチング」とは、単に複数の教師が授業や指導を担当するということに止まらず、教授(ティーチング、teaching)組織を改善するための一つの方式であると言えます。その普及の歴史を振り返るとともに、今後の課題について解説します。

執筆/茨城大学大学院教育学研究科教授・加藤崇英

ティーム・ティーチングの定義

今日、ティーム・ティーチング(team teaching)は、外来語(カタカナ言葉)として、直接このように呼ばれることが一般的ですが、頭文字をとって「TT(ティーティー)」と呼ばれるほか、日本に紹介された当初は、「協力教授」と訳されました。教師がティームを作って、協力して授業を行うことで、教育効果を高めようとする取組です。

ティーム・ティーチングの生みの親とされるアメリカのシャプリンによれば、ティーム・ティーチングとは、「授業組織の一様式で、教職員とかれらに割りあてられた生徒を含み、ふたりもしくはそれ以上の教師が、協力して、同じ生徒グループの授業全体、または、その主要部面について、責任を持つものである」としています。

学級制、学年制とティーム・ティーチング

ティーム・ティーチングは、単に複数の教師が授業や指導を担当するということに止まらず、教授(ティーチング、teaching)組織を改善するための一つの方式であると指摘できます。一般的に小学校や中学校の組織は学年と学級をベースに構成されています。中学校は教科で担当の教員が異なります(教科担任制)。小学校については、近年、高学年を中心に教科担任制を取り入れているところも多くなってきましたが、担任する学級においてすべての教科を担当する学級担任制が基本といえます。

しかし、一方でこうした学年制と学級制は、固定された授業形態や指導形式になってしまうことで、子どもの多様化や教育内容の高度化への対応が進まないことや、さらに様々な教育方法の試みを阻害し得ると指摘されてきました。よって、一人の教師と1学級という関係性に柔軟性を与え、教育効果を高めるべく、とりわけ教師がティームを構成し、複数で指導にあたるティーム・ティーチングが研究され、実践されてきました。 

ティーム・ティーチング開発の経緯とその普及の動き

ティーム・ティーチングは、1957年、アメリカ合衆国・マサチューセッツ州レキシントンのフランクリン小学校で始められた試みとされます。当時は職階制を導入して優秀教員の転出を防止したり、教員不足を解消するなど、様々な課題への対処がなされていましたが、協力体制をもとにした授業の改造も教育課題の一つであったとされます。

わが国では1964年には下村哲夫(当時香川大学)によって紹介されるなど、アメリカでの実践から比較的早く日本で紹介や実践がなされ始めました。1968年の学習指導要領改訂の頃を契機として、大学等の研究者の指導のもと、研究会を組織するかたちで学校現場においてティーム・ティーチングの実践に取り組む教員が増えていったとされますが、必ずしも全国的に共通した認識によって普及していたわけではありませんでした。ただ、「ティーム・ティーチング」や「協力教授」という名称やそうした実践の存在は、教育関係者のなかでは徐々に広まっていったと推測されます。

こうしたなかで、ティーム・ティーチングの認知度を飛躍的に高めたのは、1993年、文部省(当時)が第6次公立義務教育諸学校教職員配置改善計画(1993年度~2000年度)を発表し、その計画を進めるなかで、ティーム・ティーチングが位置づけられたことであったといえます。これに先んじて、「個に応じた多様な教育を推進するためには、一斉授業の中で指導上の工夫をすることに加えて、教育指導の展開に応じて、適宜、個別指導、グループ指導、ティーム・ティーチングなどの新しい指導方法を積極的に実施できる教職員配置をする必要がある」として提言されていました(教職員定数の在り方に関する調査研究協力者会議「今後の教職員配置の在り方について―個に応じた多様な教育の展開のために―」最終報告、1993年。)

第6次教職員配置改善計画では、「指導方法の工夫など個に応じた教育の展開」を目的とする「ティームティーチングの導入等」に対して、小中学校14,297人として、6カ年の計画における教員の加配全体(30,400)の半数近くをこれに当てました。これを契機に実態調査、実施学年の選定、実施の教科の選定、学習集団の構成、指導効果の検証など、研究や実践が各地で進められました。

ティーム・ティーチングの意義と課題

日俣周二は、ティーム・ティーチングを以下のように定義しています。

ティーム・ティーチングの方式は,学校の学年制を維持し,同学年段階において,数人の教師対数学級という仕組みに変えること,さらに,数学級を合わせた児童生徒の集団を,大集団・中集団・小集団および個というように,必要に応じて弾力的に集団編成を行い,それらの集団の編成の仕方に応じ,協力・分担して,各教科等の指導にあたる方式である。

日俣周二「ティーム・ティーチング」安彦忠彦『新版 現代学校教育大事典』ぎょうせい、2002年、117-118頁

ここで「必要に応じて弾力的に集団編成を行い」という指摘にもあるように、そもそも一つの学級の、一人の担任教師と、一つの学級の児童生徒というような固定された関係性ではなく、目的や内容に応じて柔軟な指導形態をとることによって高い教育効果を得ようとするところに特徴や特色があると指摘できます。ただ、そうした効果を得るためには、計画性が重要となることが多くの関連書籍で指摘されています。そしてその計画は、児童生徒の集団編成、教科・教材の特徴、指導の進め方などですが、当然、ティームを組む教員の構成も重要な要件となってくるといえます。また、こうした計画立案やそのための研究、打ち合わせが重要になってくることから、学校においていかにこれらのための時間を確保するかが鍵となってきます。

今日では、教育関係者のなかでティーム・ティーチングそのものの認知度が一般化されてくるなかで、ティーム・ティーチングの実施の仕方そのものは多種多様であり、一律に定義づけられるようなものではなくなっているといえます。もちろん、これまでの関連文献・書籍等において紹介されているように、いわゆる指導案としてティーム・ティーチングの進め方をしっかりと計画した実践や研究も必要と思われます。

例えば「全国学力・学習状況調査を活用した少人数教育の効果検証について(速報)」(平成25年度)では、「少人数学級」「ティームティーチング」「習熟度別指導」に取り組んだ学校の効果測定について検討されています。ティーム・ティーチングについては、「小学校においては、学習集団を分けずに複数の教師が協力して指導するティームティーチングに取り組んだ学校の平均正答率が向上。(国語A、算数A)」など、効果が指摘されています。こうした学力向上の効果に関する検証についても引き続き、取り組んでいく必要があります。

他方で、小学校英語(3・4年の外国語活動、5・6年の外国語)では、学級担任の教師と外国語活動を担当する教師とのティーム・ティーチングが重要であり、むしろ、例えば教師とALT(Assistant Language Teacher)は日頃からごく自然なかたちで互いに協力し、一緒に指導にあたることも少なくありません。ティーム・ティーチングの特徴が柔軟性や弾力性であり、一種の自由度も許容するものであるとすれば、協力することで楽しさや親しみやすさなどを生み出し、そのことで児童生徒の関心や意欲を引き出そうとする実践も、意図的、計画的なティーム・ティーチングの効果として積極的に評価していくべきではないでしょうか。

▼参考資料
新井郁男・天笠茂「学校の総合化をめざす ティーム・ティーチング事典」教育出版、1999年
加藤幸次「ティーム・ティーチングの技術」教育開発研究所、1995年
教職員定数の在り方に関する調査研究協力者会議「今後の教職員配置の在り方について―個に応じた多様な教育の展開のために―」(最終報告)、1993年
教職員配置改善研究会「教師のためのティームティーチング実践事例集」ぎょうせい、1993年
国立教育研究所「ティーム・ティーチングによる学習効果に関する研究(第1次報告書)」1997年
日俣周二「ティーム・ティーチング」安彦忠彦『新版 現代学校教育大事典』ぎょうせい、2002年、117-118頁
J.T.シャプリン・ H.F.オールズ共編、平野一郎・椎名万吉訳編『ティーム・ティーチングの研究』黎明書房、1966年
文部科学省(PDF)「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編」2017年7月

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