ザ・まる付け!【マスターヨーダの喫茶室】

連載
マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

せんせい稼業は、授業づくりがいちばん大事。そして授業と切っても切れない関係性にあるのが評価であり、評価の基本的な仕事は「まる付け」だと言えます。しかし単に「できているか、できていないか」を見る方法としてだけではなく、児童のやる気を高めたり、学びの力を上げていくことにも使えたりすると素晴らしいのではないでしょうか。今回は、そんな工夫を考えていきたいと思います。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

1 時間の無駄になってしまっては…

プリントやノートなど、児童が書いた様々なものに丁寧に「まる付け」をすると、「わたしは仕事をしている。児童のためになっている!」という気になりますよね。
それは確かに大事なことですが…。
例えば、算数の計算問題のときなど、授業中に児童全員の「まる付け」をするようなことってありますよね。
皆さんはそんなとき、どうしてますか?
私が見たあるせんせいは、算数の計算を解き終わった児童から席を立ち、せんせいの机の前で「まる付け」待ちの列を作る、という方法をとっていました。そして、児童が間違っていたら、×だったところを一人一人に丁寧に教えていました。
列に並んでいる子は中々順番が回ってこないので、友達同士でおしゃべりしたり、ふざけたりして時間を潰しています。
せんせいの丁寧な姿勢は大切だと思いますが、こんな時間の無駄になるような「まる付け」なら、やらないほうがマシでしょう。

その違いは何なのでしょうか? 「まる付け」にはコツがあるようです。

①回数を分けてチェックする。例えば5問解く場合、最初の2問だけ解いて「まる付け」し、次は残りが全部終わったら「まる付け」する。
②間違っているとき、「ブッブー! もう1回チャレンジ!」などと、自力で解決させる。
③問題数が多く、解き終わった児童が増えてきたら、その児童に困っている友達を助けてもらう。

というようなルールをつくっておけば、児童は列に並ばないし、無駄な時間がなくなります。
これで、すべての児童が動いています。すべての児童が学んでいます。

2 気になる児童はスキマ時間で

上記のような、まるで流れ作業の「まる付け」は人間味がない、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。すべての児童を拾っていくぞ、という気構えと、人間味のある指導。もちろん大賛成です。
だから、スキマ時間を使って、そんな対応をしていきましょう。
例えば、中間休みや給食の準備のとき。気になる児童に耳打ちします。
「○○さん、3校時目の算数のプリント、後で持ってきて。難しかった? ちょっとやり方を確認するね」などなど…。
できていない児童を一人だけ呼ぶとプライドを傷つけてしまうので、何人か一緒に呼ぶのがいいです。
そして最後に、
「よーし、全部できたね。大きなハナマルをあげる」
と盛大に褒めて終わりましょう。
算数の計算の他にも、漢字があやしい児童に、書き順の指書きをさせているせんせいもいました。
こうして何気なく確実な基礎力をつけていきます。

3 必殺! まる付けショルダーポーチ

そして、人間味のある素晴らしい「まる付け」としては、同僚のせんせいのこんな取組みも挙げられます。
机間指導での「まる付け」をすごく頑張ってらしたせんせいです。いつも、肩から何か下げています。
サコッシュ(ショルダーポーチ)に、色とりどりのペンや色鉛筆、メモ用紙などを入れているのです。
おおっ、「これは出張まる付けマンだっ!」と思いました。
何も机の上だけでやるのが、「まる付け」ではありません。
教室をまわりながら、児童のノートにチェックを入れていくのです。
もちろん、採点ペンのようなインクを入れた赤ペンが1本あれば事足りるのですが、次のような使い分けをすると便利ですよ。

①赤鉛筆…お手本をうすく書いて、なぞらせる
②青鉛筆…キーワードを書き入れたり、大事な箇所を囲んだりする
③赤ペン…「いいね!」的なほめことば等、コメント用
④採点ペン…まる付け専用。インクがきれたらスペアカートリッジを交換!
⑤メモ用紙…ヒントを書いてあげる
⑥のり…児童が貼ったものが剥がれそうな場合の補助に

<まる付けサコッシュ>
<メモ用紙やスペアインクも入れています>

メモ用紙は意外と便利ですよ。ヒントカードをその場で作ったり、計算式のモデルをささっと書いたりして、児童に渡すことができます。

4 親切すぎる「まる付け」からの…

…と、このように様々な工夫をして、児童への「まる付け」を頑張ったとしても、当の児童本人はと言うと、
「やったあ」「あれ、3個間違えた」
…と、そんな感想で終わってしまうというシーンも見受けられます。これもまた、もったいない話です。

そこで、児童自身が「まる付け」役になることも大切です。そうすることで、より正誤について意識するようになることもあるからです。

こんな方法でセルフ「まる付け」します!
①時間に余裕のないとき、児童の記入が終わったら正解を掲示し、おのおのが自分で「まる付け」。
②答え合わせが容易なものは、隣の人と2人で答え合わせ。
③厳密さが必要な漢字の書き取りなどは、隣同士で用紙を取り替えて「まる付け」。「とめ、はね、点」まで厳しく採点する。
④時間に余裕があるときは、4~5人で連帯「まる付け」。

 リーダー「1問目、36です」 次の児童「36です」 次の児童「36です」……。
 リーダー「みんなの答えは36です」(最終確認)
と、全員が正答したら「まる付け」。違っている人がいるときは、全員で検討する。

この方法で、見事にやっている学級がありました。
「まる付け」は一人で黙々やっていては飽きてしまうので、いろんなパターンを導入してあげましょう。

担任が不在でも、自分たちで学び合っていける学級が理想です。少なくとも、プリント学習をしたら「まる付け」をし、間違ったところを修正する、というところまで自主的に行えるようにしたいですね。昨今の社会の変化は著しく、ずっと新しい仕組みやルールが生まれ続け、生涯にわたって学び、適応していかなければなりません。将来的にずっと「まる付け」してくれたり、丁寧に教えてくれたりする人がいるとは限りませんから、人生は独学が基本だということを念頭に置き、自力で学び自力で点検できる「自分まる付け力」を育てていきたいですね。
ショルダーポーチはぜひ用意してください。おすすめです!


  こんな問題を抱えているよこんな悩みがあるよ、と言う方のメッセージをお待ちしています!

その他にも、マスターヨーダに是非聞いてみたい質問やアドバイス、応援メッセージも大募集しています! マスターはすべての書き込みに目を通してますよ!


マスターヨーダの喫茶室は土曜日更新です。

山田隆弘先生

山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。

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