小4体育「投の運動|ロングスロー&ダッシュゲーム」指導アイデア

執  筆/山口大学教育学部附属山口小学校教諭・紀村修一
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・高田彬成、山口県公立小学校教頭・前川孝

授業づくりのポイント

2020年度からの学習指導要領では、走・跳の運動のなかで「児童の実態に応じて投の運動を加えて指導することができる」ことが明記されました。ここでいう「投の運動」は、「遠くに力一杯投げること」に指導のねらいが置かれています。

しかし、投げる経験が少ない子供の多くは、正しい投げ方を知りません。そこで、投の粗形態の確認が重要です。

具体的には、
①横向きになる
②両腕を左右に開いて肘を上げる
③体重を後ろ足に移動した後、前方の足を1 歩前に踏み出しながら、
④スナップを利かせて腕を振り下ろす
といった一連の動きです。慣れるまでは、「1、2、3」と声を出して、投げ方の確認をすると効果的です。

体育科における「投げる」という動きは、体つくり運動では用具を操作する動きとしての「巧みに投げる」であり、ゲームでは味方が捕りやすいようなパスや相手がいない場所をねらうシュートとしての「投げる」という動きになります。

投げる目的が異なることを子供自身が理解して、「遠くに力一杯投げることを楽しむ」学習に取り組んだり、休み時間に友達とボール遊びをしたりすることが、投力向上を図るうえで重要なのです。

いつでも、だれでも、簡易に実施できるような場や状況をつくっておきましょう。ただし、ソフトボール投げは危険を伴うので、必ず周囲の安全を確認し、教師とともに行うようにしましょう。

単元計画(例)

※1・2 時間目は、主に個人を主体とした運動を楽しみ、3・4 時間目は、集団をつくってゲーム化して楽しむことを想定しています。

単元計画
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投の運動に意欲的でない子供には

・単元のはじめに、いろいろな種類のボールを選んだり、いろいろな投げ方をしたりすることで、投げることへの抵抗感を弱めていくようにしましょう。

・「遠くに投げる」ことへの見通しをもつことができるように、新体力テストのソフトボール投げの記録から、少し努力すれば達成できる範囲での目標記録を設定できるようにしましょう。

・遠くに投げる投げ方がわかりにくい子供には、よい動きの友達を観察できるようにするなど、動き方のモデルを示すようにしましょう。

運動を楽しもう~投の運動を楽しもう~

思い切り投げる機会が少ない子供にとっては、投げる経験を重ねることが大切です。とはいえ、投の運動は、投能力の向上のみをめざしてトレーニング的に経験を積ませても、遠くに投げることを楽しんだり技能が飛躍的に向上したりすることは期待しにくく、また、単調な運動は長続きしづらいです。

そこで、自ら進んで運動に取り組み、友達と十分に関わり合いながら、自分なりに遠くに投げることを楽しみ、ボール投げそのものを好きになるような学習内容を工夫していく必要があります。

種まきゲームを楽しもう

楽しみながら投げることができるゲームです。運動場で行うときは高跳び用スタンドを利用します。体育館で行うときはバレーボールやバドミントンのネットを利用するとよいでしょう。

ゲームを開始する前に、安全に行うためのルール(例えば、顔に向かって投げない、蹴らないなど)を話し合うと、けがなく、みんなが楽しむことができ、ルールを守ることの大切さを学ぶこともできます。

種まきゲーム

いろいろな種類のボールで、いろいろな投げ方を試してみよう

ここでは、「いろいろな投げ方を楽しむ」ことが目標ではありません。いろいろな投げ方(投げる方向や投げる手、投げる姿勢など)を試すなかで、体を上手に使って投げることの重要性に気付くことが大切です。

真上に

真上に

両手で

両手で

利き手ではない手で

利き手ではない手で

座って

座って

気を付けの姿勢で

気を付けの姿勢で

いろいろな種類のボールを

いろいろな種類のボールを

いろいろなボールを上手に投げるには、どうしたらいいかな?

「スロー&バウンドキャッチ」をしてみよう

スロー&バウンドキャッチ

相手が捕りやすいように投げるパスではありません。遠くに力一杯投げたボールを捕るのです。けがの防止のため、バウンドキャッチで行います。ただし、バウンドは1 回までです。捕る人は、投げる人の投力から構える位置を決めます。投げる人は、その位置を見て指示を出します。このようにして、自然と対話が生まれてくることを期待しているのです。

ボールを投げることが苦手な子供には、自分ができる投げ方でよいことを伝えたり、遠くに投げることができる子供とペアをつくり、投げるこつを教え合うことができるようにしたりします。

できるだけ遠くに投げるには、どうすればいいかな?

もっと運動を楽しもう~投の運動をゲーム化して楽しもう~

投の運動を中核としたゲーム化を工夫し、チームで協力して取り組むことで個々の楽しみ方を広げていきます。

個人的な運動を集団化する際には、チーム編成やルールの工夫などの欠かせない要素を整理しておく必要があります。

本単元のねらいとして設定している「遠くに力一杯投げる」という動きの要素に、仲間と協力し合って勝敗を競う楽しみ方を取り入れることで、さらに意欲的に活動できるようにしていきましょう。

「ロングスロー&ダッシュゲーム」をしよう

イラスト/栗原 清、横井智美

『小四教育技術』2019年1月号より

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