【相談募集中】小5の体育を楽しい授業にできない
思春期に差し掛かり、周りの目が気になってくる高学年。初めて高学年を担任する先生から「みん教相談室」に届いたのは「恥ずかしがる子や諦めムードの子がいて、体育の授業を全体で楽しめない」というお悩みです。答えていただくのは大阪府の公立小学校で12年間勤務後、大阪府箕面市教育委員会に勤める日野英之先生。子どもの「やりたい!」を引き出し、恥ずかしさを薄める手立てをこちらでシェアします。
目次
Q.恥ずかしがる子や諦めモードの子がいる高学年の体育を全体で楽しむには?
小5担任です。今までずっと低学年の担任で今年初めて高学年の担任になりました。体育科の授業が上手くいきません。
鬼ごっこをすると、走るのが苦手な女子が数人で固まり最初から諦めモードで全体で楽しめなかったり、別の遊びでは、男子の一部がちょっと恥ずかしがって参加しようとしなかったりします。どの内容でも、恥ずかしがったり、苦手意識からか諦め気味で、その雰囲気につられたりする児童が数名出てしまいます。どうしても、全体で楽しむことができません。
普段の授業では真面目に取り組む児童が多く、決して不真面目な児童たちではないです。なんとか、全体が楽しみながら体育をできたらと思っています。小5の体育科の指導方法やおすすめの導入の仕方などを教えていただけると助かります。どうかよろしくお願い致します。
(山田山男先生・30代男性)
A.子どもの「超したい!」を生み出し、恥ずかしさを薄める工夫を!
山田山男先生、ご質問ありがとうございます。初めて高学年担任を受け持たれるのですね。時代の多様化と共に、子どもの多様化も進んでいます。高学年にもなりますと多様化にも幅が生まれ、対応が一筋縄ではいかない案件が増えてきます。そこを任された山田山男先生は、期待の星! 私も遠くからではありますが、応援しています。
◎子どもの「超したい!」を生み出すために
本題に移ります。体育科は他の教科と異なり教科書や指導書がなく、授業づくりが大変ですよね。私が体育授業づくりでこだわっていた点は1点しかなく、どのようにして子どもの「超したい!」を生み出すかでした。
質問にもありました、鬼ごっこ。
「どうせ逃げても捕まるし、鬼になっても誰一人として捕まえられないし」
運動の苦手な子どもの思考です。では、運動の苦手な子どもが「超したい!」と思える鬼ごっこにするには、どんな手立てを講じましょうか。私なら……
A:逃げられる範囲をドッジボールコートの半面程度にグーンと縮める
or
B:鬼の数を逃げ手よりも多くする
といった手立てをうちます。
Aならば、たとえ捕まったとしても「きっと誰かを捕まえられる!」という前向きな気持ちが沸いてくることでしょう。Bならば、捕まっても多数派に所属できるので、捕まることへの恐怖感や抵抗感が弱まります。鬼が1人ではないため、恥ずかしいといった気持ちも薄らぎますね。ABの合わせ技ももちろんOKです!
◎体育授業における「恥ずかしさ」を薄めるために
恥ずかしさを薄めるためのヒントが、上記の「鬼ごっこ」に記されています。
- 「きっと捕まえられる!」➡できそうだなと感じさせる
- 多数派に所属できる➡注目を浴びさせない
この2点を押さえた授業ならば、子どもが恥ずかしさを感じることのない体育授業となるということです。
走り幅跳びを例にしてみます。
- 評価の軸を跳んだ距離ではなく、「自分のベスト記録を10cm伸ばそう!」等の、自己の比較とする。
- 試行の場を1つ2つではなく、8つ程度設定する。
この条件ならば子どもは「できそうだな」と感じ、場が多いことで人数が分散するため、注目を浴びることはありません。たったこれだけのことで、恥ずかしさが薄まる体育授業へと変貌を遂げます。
◎導入で大切にしたいこと
こちらも同様です。「できそうだなと感じさせる」「注目を浴びさせない」2点を押さえましょう。
「できそうだ」と全員が思えるレベルのことに取り組む
➡ 初めから「できない経験」をすると、心は折れてしまいます。全員ができるように教具やルールを簡易化しましょう。ボールを扱う場合なら、硬くて小さいボールよりも柔らかくて大きなボールの方が「できそう」って思えそうですよね。そのレベル感で構いません。
評価の軸は「あなた」であることを伝える
➡ 競走や競争は、能力で結果が決まってしまうことがほとんどです。私たちが評価するのは「学習の成果」であり、成果は一人一人の「成長」や「伸長」です。誰かとの競走や何かとの競争で、誰かに注目が注がれないことを共有してあげましょう。
長々と失礼いたしました。つたない私の回答が山田山男先生の一助となることを願っております。初の高学年担任生活、大いに満喫してくださいね!
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。