《二学期の学級経営》「10歳の壁」について考えよう

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「10歳の壁」と向き合ったことがあるでしょうか? 今回はこの子どもが乗り越えなければならない「10歳の壁」について考えてみましょう。

ハードルのイメージ

「10歳の壁」とは

保護者の方から、「最近、うちの子はなんかイライラしていて、怒りっぽいんです。10歳の壁にぶつかっているんでしょうか?」と聞かれたんですが、うまく答えられなくて ……。「10歳の壁」について、教えてください!

「10歳の壁」(文部科学省は「9歳の壁」としています)とは、子どもが大人に成長するために乗り越えなければならないハードルです。

「10歳の壁」が出現するのはなぜ?

★認知や思考の面から

この時期の子どもは、具体物(例えば、おはじきなど)がなくても抽象的・論理的な思考ができるようになります。学習において高度な思考ができるようになり、少しずつ物事を客観的に見ることができるようにもなります。しかし、このような思考の発達は個人差が大きく、具体的な操作による思考に留まっている子どもも少なくありません。また、抽象的・論理的思考も十分できるわけではなく、大人と子どもの狭間にいる中途半端な時期であると言えます。

★身体の面から

また、10歳前後には、身体的にも大きく成長し、運動能力も発達します。できることが増えることによって、自己肯定感をもち始めます。半面、その発達の個人差は大きく、「できる・できない」の差は目に見える形で表れてきます。自分のことをある程度客観的に見ることができるようにもなるので、「できない」ことが分かると、自己に対する肯定的な意識をもてず、劣等感をもちやすくなります。友達との競争に負けると、「どうせ、がんばっても自分には無理!」とシラケた態度を見せるようになるのも、このためです。

★社会性の面から

社会性の面では、集団の規則を理解して活動に主体的に関わったり、自分たちでルールをつくり守ったりできるようになります。友達関係も、単なる「仲よしグループ」から「信頼できるグループ」へと変化していきます。

この頃の子どもたちは、親や先生といった大人からの評価よりも、同年代の「友達」から「自分がどのように見られるか(評価されるか)」が一番大切であると考えるようになります。そのため、先生に大勢の前でほめられることをいやがるようになることもあります。友達グループも、力関係にアンバランスが発生すると、閉鎖的な仲間集団となり、付和雷同的な行動や同調圧力が生まれ、いじめの温床になるなどの問題をはらんでいます。親や教師の目を気にしたり、秘密をもち始めたりするなど、気を付けて見ていくことが必要です。

「10歳の壁」を乗り越えるために……

以上のような様々な面での発達と、その個人差が、「10歳の壁」となっているのですね。しかし、壁を乗り越えることは、子どもにとっては「飛躍のチャンス」です。4年生の担任として、一人ひとりの発達をしっかりと見極め、次のような点について留意しながら指導を進め、子どもの「飛躍」を後押ししましょう。

① 抽象的な思考への適応を重視し、他者の視点に対する理解を深めることができるようにする。

② 自己肯定感を育成する。

③ 自他の尊重の意識や他者への思いやりの心などを育む。

④ 集団における役割の自覚や主体的な責任意識を育成する。

⑤ グループによる体験活動を実施し、実社会への興味・関心を持つきっかけをつくる。

やる気のある子ども

参考資料:「子どもの徳育に関する懇談会『審議の概要』」(文部科学省)、「子どもの『10歳の壁』とは何か?―乗りこえるための発達心理学」渡辺弥生著(光文社)

執筆/神戸松蔭女子学院大学教授・秋山麗子 イラスト/伊原シゲカツ

『小四教育技術』2017年8月号増刊より

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