小6算数「6年のまとめ②(考える方法と表現)」指導アイデア
執筆/埼玉県公立小学校教諭・白田飛鳥
編集委員/文部科学省教科調査官・笠井健一、浦和大学教授・矢部一夫
目次
本時のねらいと評価規準
考える方法を1時間、考えるときの表現を1時間で扱う。本時は2/2時
ねらい
物事を数理的に考える際の数学的表現の機能やそのよさについて再確認し、意義付ける。
評価規準
石を正三角形状に並べ、大きくしていく際の正三角形の1辺に使われる石の個数と総数の関係についての問題について、考えるときの表現(表、式、図)を用いて解決することができる。
問題場面
下の図のように1辺の石を1つずつ増やしながら並べて正三角形を作っていきます。
1辺に使う石の数が50個のとき、正三角形を作っている石は全部で何個ありますか。
図のように1辺の石を1つずつ増やしながら並べて正三角形を作っていきます。1辺に使われる石の個数が50個のとき、石の個数が全部で何個になるか考えていきます。
50個も並べると、すごく大きな正三角形ができるね。石もすごく多いんじゃないかな。
図をかいて数えればいいんじゃないかな。
1辺が50個の場合は石の数が多すぎて、図にかくのが大変です。
表を書いて、増え方にきまりがあるか調べてみるといいと思います。
うまく言葉の式で表せるといいんだけれど……。
きまりを見付け、1辺に使う石の数が50個のとき、正三角形を作っている石は全部で何個になるか個数を求めましょう。
本時の学習のねらい
使われる石の数のきまりを見付け、どのように考えたか説明しよう。
見通し
きまりを見付けるにはどんな方法があるかな。
図をもう少し増やしてみて、いつでも同じ数え方ができないか調べてみたい。
1辺に使われている石の個数と全部の個数の関係を表にしてみると、見付けやすそう。
少ない個数の場合で考えて、いつも同じ式の形で全部の個数を表せないかな。
自力解決の様子
A つまずいている子
図をかくことはできるが、きまりを見付けることができない。
B 素朴に考えている子
表に整理することができ、1辺の石が1つ増えると、全体で3個ずつ増えるきまりがあることに気付いている。
C ねらい通り解決する子
図や表からきまりを見付け、式に表している。式に表すことでどんな正三角形でも合計の個数が求められることを理解している。
学び合いの計画
自力解決では、きまりを見付け、どのように考えたか説明できるようにします。1つの方法でできたら、他の表現方法を考えさせます。
きまりが見付けられない児童には、例えば「見通しで友達が表に整理すると言っていたね。まずは表をかいてやってみよう」と個別に支援をします。練り上げでは、表を使ったり、図を使ったり、式で表したりして考えたことを価値づけ、数学的表現の機能や良さについて考えを深めていきます。また、言葉の式に表し一般化することにより、きまりについて理解が深まるようにします。
さらに、自分だったらどの表現方法を使うかを考えさせ、問題場面に応じてその表現の良さを感じながら思考できるようにします。
練り上げでは、単に表を使ったことだけに留まるのではなく、表をどのように見たのか(横に見る、縦に見る)ということに注目することで、きまりが見付けやすいことを押さえ、表を使うことのよさに気付かせるようにします。
表や図から見付けたきまりから数式を作り、単に答えを導くだけでなく、そこから公式(言葉の式)を考えることで、どんな場合もその式に数値を代入するだけで手際よく求められる良さに気付かせることも大切です。
ノート例

全体発表とそれぞれの関連付け
では、やり方を発表してください。
【C1さん】ぼくは、表に整理してみました。表を横に見ていくと、1辺の石の数が1増えると、合計の個数は3個増えるというきまりがあることが分かりました。1辺が50個の場合は、1辺が2個のときから(50-2)回、3個ずつ増えているから、3+3×(50-2)=147となり、147個です。
1辺の石が1つ増えると全体では3個ずつ増えるきまりを使ったのですね。
【C2さん】わたしは、図で考えました。どの正三角形もそれぞれの辺を囲んだときに、頂点の石を2回数えてしまうから、1辺に使う石の個数の3倍から頂点の石が2回数えられているので、3を引いて求めました。50×3-3=147となり、147個です。

【C3さん】C1さんに似ていますが、ぼくは表を縦に見たときに、1辺の石の個数から1引いた数に3をかけると、必ず合計の石の個数になることに気付きました。だから、1辺が50個の場合は、(50-1)×3=147となり、147個です。
なるほど、表や図を使うと、式に表して答えを見付けられましたね。では、これらの考えから、言葉の式が作れますか。
C2さんの考えでは、50は求める1辺の個数、それを3倍して3を引いたのだから、求める1辺の個数×3-頂点の数=全体の個数、だと思います。
上の式の“3”は三角形の辺の数が3だからだと思います。
求める1辺の個数×辺の数-頂点の数=全体の個数、ということになります。
これなら1辺の個数が何個になっても、すぐに全体の個数が求められるね。
このようにして、C1さんやC3さんの式を基に、言葉の式が作れそうですね。
(注)児童の実態として、数値の式を基に言葉の式が作れることに気付かせる程度とし、この後の式変形については、中学校で学習することを知らせ、深く触れないこととする。なお、求める1辺の個数a、正N角形では、全体の個数Sは、S=(a-1)×N と式変形できる。
それでは、正方形(正四角形)の場合も、求められるのでしょうか。確かめてみましょう。
学習のねらいに正対した学習のまとめ
- 考えたり説明したりするときには、図・表・式を使うと、きまりが分かりやすくなる。
評価問題
このように、石を正方形に並べると、どのようなきまりになるでしょう。
子どもに期待する解答の具体例
・表に整理したり図に表したりして、きまりを見付ける。
(例)1辺の数が1増えると、全体の個数が4増える。
・四角形の場合も表や図から、(1辺の個数-1)×頂点の数=全体の個数 という言葉の式(公式)になることに気付く。
感想例
- 図や表を使うときまりが分かり、考えやすかった。これからも積極的に使っていきたいです。
- 図や表を基に言葉の式で表すと、1辺の個数が大きくなっても簡単に求められました。
『教育技術 小五小六』2022年2/3月号より