小6算数「6年のまとめ①(変化と関係)」指導アイデア
執筆/埼玉県公立小学校教諭・村井幸太
編集委員/文部科学省教科調査官・笠井健一、浦和大学教授・矢部一夫
目次
本時のねらいと評価規準
本時 17/25(変化と関係3/6)
ねらい
速さは単位量当たりに進む道のりであることを振り返り、その考えを用いて実際に競走できないものでも速さ比べができるよさを知る。
評価規準
速さが単位時間当たりに進む道のりであることを理解し、それを踏まえて速さを比べたり速さについて説明したりすることができる。
問題場面
こうたさんは100m走の世界記録がウサイン・ボルト選手の9.58 秒であることを調べました。ここからこうたさんは「人類最速の選手と犬、どちらが速いのだろう」という疑問を持ちました。そして、飼っている3匹の犬に100mを走らせようとしました。
しかし、どの犬もなかなか100mをまっすぐ走りません。とりあえずまっすぐ走った道のりとそのタイムを記録しました。
3匹の犬とボルト選手では、どれが一番速く走れるのか考えましょう。
みなさんは犬たちが人類最速の選手に勝てると思いますか。
どの犬も勝てると思います。
ボルゾイは見た目から速そうです。
チワワは負けそう。
でも、人間の方が速いんじゃないかな。
印象だけで決めてしまうのはだめですね。実際の結果がこれです。(表1提示)

あれ? 3匹の犬はどれも100m走ってない!
どの犬も100mをまっすぐ走れなかったので、まっすぐ走った道のりとそのタイムを調べました。
確かに犬には100mまっすぐ走るのはむずかしいよね。
やっぱりこれでは人と犬の競走は無理ですかね……。この条件を使って、ボルト選手に勝てるかどうか考えることはできませんか。
速さで学習したことを使って、犬も100m走ったとしてタイムを求めればできます。
秒速の考えを使うと、速さで比べられるよ。
なるほど、「速さ」ですか。では、速さを使って比べてみましょう。また、どれが一番速いのか、その理由や、速さを利用することでどんなことが分かるのか、説明できるようにしましょう。
本時の学習のねらい
速さの意味を振り返り、速さ比べから分かることを説明しましょう。
見通し
速さってどういうことだろう。速さを比べるためには、どうしたらいいだろうか。
道のりか時間のどちらかをそろえれば比べられるよ。
速さは、単位時間にどれだけ進んだかを表したものだよね。速さは「道のり÷時間」で求められたから、それを使って求めよう。
速さが分かれば、犬たちが100mを走ったら、どれくらいのタイムになるかも求められるね。
自力解決の様子
A つまずいている子
それぞれの犬の速さについて公式を使って求めたが、犬とボルト選手とどちらが速いか説明できない。
B 一つの階級に着目して考えている子
速さが単位時間当たりに進む道のりであることを理解し、それぞれの犬の秒速を求め、そこから9.58秒で走った道のりや100mを走った時間のどちらか片方を求めて、比べている。
C ねらい通り解いている子
B児の考え方を、道のりや走った時間の両方を求めたり、ボルト選手の速さを求めたりするなど、様々な方法で比べている。また、数直線や式を利用することで比例関係を明らかにし、説明している。
学び合いの計画
A児のように、速さについて公式のみを覚えているだけで、特に意味を理解していない児童がいることが考えられます。そこで、速さは時間と道のりという2つの数量を組み合わせてつくった数量であることや、単位時間当たりに進む道のりであるということをしっかりと押さえ、説明できるようにすることが大切です。
全体発表では、「1秒間に○○m進むから……」と速さ比べについての根拠を説明させることで、「速さは単位量当たりに進む道のり」という意味を捉えさせるようにします。また、B児やC児の考えから「道のり」と「時間」の2つの数量を組み合わせれば「100mを走った時間」や「9.58秒で走った道のり」を求められ、その数値を用いて速さを比べられるというよさを実感させます。また、ここまでの過程で「道のりは速さに比例する」等の変化の関係についても気付かせて、中学校の数学へとつなげてくことが大切です。
ノート例

全体発表とそれぞれの関連付け
B児はどのように考えたのでしょうか。
ボルゾイ、チワワ、柴犬がそれぞれ1秒で何m走ったのかを求めています。
秒速で表すと、ボルゾイは11.1m、チワワは5.8m、柴犬は10.3mです。
そこから、時間=道のり÷速さで求められるので、100m走った時間を求めています。100m走るとすると、ボルゾイは約9秒、チワワは約17.3秒、柴犬は約9.7秒です。
よって、ボルゾイがボルト選手に勝ちました。柴犬はボルトとほとんど同じ速さと言えます。
C児の考えはどうでしょうか。
道のり=速さ×時間で求められるので、それぞれの速さに9.58をかけて走った道のりを求めています。9.58秒間でボルゾイは約106m、チワワは約55m、柴犬は約98mです。ボルゾイが6mの差でボルト選手に勝ったことが分かります。
そろえた数値や単位は違いますが、ここからも速さを比べることができましたね。
速さ比べについてまとめましょう。
速さが分かれば、「100m走るのに何秒かかるか」や「9.58秒でどれだけ走れるか」を求めて比べられます。
C児から、時間と道のりが比例関係になっていることが分かります。
実際に競走できない場面でも、「速さ」を使うことにより、速さ比べができました。
様々なことが分かりましたね。速さについてただ公式を覚えるだけでなく、意味をよく理解して説明できるようになることが大切です。実際に競走しなくても、速さの考え方を使うと、いろいろなものと速さ比べができますね。
学習のねらいに正対した学習のまとめ
- 速さは1単位時間当たりに進む道のりを表し、時間と道のり2つの数量を組み合わせて求められる数量である。
- 速さが分かれば、それをもとに時間や道のりを求めることができる。
評価問題
①ボルト選手の秒速は何mですか。小数第一位までのがい数で答えましょう。また、時速を求めましょう。
②マラソンの世界最高記録は約2時間1分です。時速何kmで走っていると言えますか。
子どもに期待する解答の具体例
①秒速は1秒間当たりに進む道のりで表すので、100÷9.58=10.43…、秒速10.4m。
時速は1時間当たりに進む道のりで表すから、10.4×60×60=37440(m)時速約37.4km。
②42.195kmを約2時間で走るのだから、42.195÷2=21.0…、時速約21km。
(参考 自転車の平均時速〔時速約12~19km〕)
感想例
「速さ」を使うと、いろいろなもので速さ比べができました。ボルト選手と柴犬の走る速さが同じくらいなので驚きました。また、マラソン選手は自転車より速く、2時間も走り続けられることがすごいと思いました。
イラスト/オモチャ
『教育技術 小五小六』2022年2/3月号より