年度末のキャリア・パスポート 〜がんばる気持ちを育てる〜
年度末には、子供一人一人がキャリア・パスポートを記入すると思います。キャリア・パスポートは単なる記録ではありません。子供が書いているとき、教師からのコメントを読むとき、進級するとき、大人になったとき……。いつ読んでも、「がんばろう」という気持ちになるようなキャリア・パスポートをめざしましょう。
執筆/神奈川県公立小学校教諭・源憲一
目次
キャリア・パスポートを書く前に
めあてが書かれているキャリア・パスポートを配り、突然「1年間をふり返って書きましょう」と伝えても、すべての子供たちがすぐに書き始められるとは限りません。一人一人が自分の学習や活動、生活について具体的に思い出すことができる資料を用意しましょう。
例えば理科や総合的な学習の時間などの学習カードや、集会や当番活動の様子が分かる写真、ふり返りの記録などの資料があるとよいでしょう。
キャリア・パスポートを書いているときに
資料を準備していても、なかなか書くことができない子もいるでしょう。そんなときは、教師がその子ががんばったことや、成長したことを具体的な場面と共に伝えます。「この写真見てごらん。給食当番で△△さんのこと手伝ってくれたよね。△△さん、喜んでいたよね」「このホウセンカの観察カード、よくかけていたね。葉の形や大きさを正確に記録することができていたね」などと声をかけると、その子がキャリア・パスポートに何を書けばよいかに気付くきっかけを与えられます。
キャリア・パスポートを書いた後に
キャリア・パスポートの記入が終わったら、友達と認め合う時間も設定しましょう。自分が書いたふり返りの内容について、友達からも認めてもらうと自信が付いたり、意欲が高まったりします。
教師の関わり方
自覚していない成長や変容を伝える
大人でも自分の良さを自覚していないことがあると思います。子供ならなおさらです。では子供たちは自分が成長したことや、自分はここが変わったということをどのように自覚し、自分の良さを認識していったらよいでしょうか。
キャリア・パスポートにおいては、教師が積極的に一人一人の成長や変容を見とり、伝えましょう。そして、子供が自分の成長を肯定的に認識できるように、必要に応じて言葉をかけるなど対話的に関わりましょう。
小・中学校、9年間続けるもの
キャリア・パスポートは小・中学校で継続して取り組みます(高校も合わせると12年間にもなります)。9年間毎年、自分の成長や変容を残した数枚の記録と共に進級・進学していくのです。1枚1枚のキャリア・パスポート、めあての設定場面、ふり返りの場面、それぞれの重みを教師自身が再認識しましょう。そして、子供自身が「自分は9(12)年間、このような学びと成長をしてきました」と語ることができるようなキャリア・パスポートづくりにしていきましょう。
記録を残そう
子供たちのふり返りの資料は、本人だけでなく保護者や教師にとっても大切です。ふり返りの時間で終わりにするのではなく、これからにつながるように活用していきましょう。
子供には
「来年度はこんなことをがんばりたい」と次年度への意欲を高めるためのふり返りをします。学年末に作品などとキャリア・パスポートを一緒に返却し、次の学年でも生かせるようにしましょう。
※学校によっては、キャリア・パスポートは学校保管の場合もあります。
保護者には
子供が持ち帰ったキャリア・パスポートや作品を見ることで、子供の成長や課題を保護者が確認することができます。家庭でも次年度に向けて話ができると、新年度に家庭の協力が得やすくなります。
教師には
ふり返りカードから、その子の良さと課題が見えてきます。これまでの指導の成果をふり返る機会にもなるので、子供たちのふり返りを受け止めながら、今後に生かしましょう。
イラスト/山本郁子
『教育技術 小三小四』2022年2/3月号より