小6国語「海の命」京女式板書の技術
今回は、有名教材の「海の命」です。不意に夢が実現する場面を読み、太一の変化を考える場面をテーマにした授業です。1人学習を大切にし、1人学習と板書のかかわりがよくわかる板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・古垣内千鶴子
教材名 「海の命」(光村図書)
目次
単元の計画(全10時間)
第一次
1 全文を読み、感想をもつ。学習課題を考える。
2 課題解決のための学習計画を立てる。
第二次
3 (冒頭からおとうの死までの場面)を読み、太一とおとうの人物像を理解する。
4 (与吉じいさに学ぶ場面)を読み、与吉じいさの生き方や考え方について考える。
5 (ある朝・ある日の の場面)から父の海にやってきた太一を読み取る。
6 (不意に夢は実現する場面)を読み、太一の変化を考える。
7 (その後の太一の生涯の場面)を読み、他の登場人物の役割や、物語の主題を考える。
第三次
8・9 立松和平の作品を読む。
10 これまでの学習を振り返らせ、自分が身に付けた事柄やこれからの課題について気付かせる。
板書の基本
〇教材「海の命」は、人物同士のかかわりや、人物の生き方が表れている表現に着目しようという見通しをもって学習を進めている。したがって、授業では、「太一の変化」を考えることに「おとう」「与吉じいさ」の生き方を絡めた板書を考えます。
〇これまでの学習活動では、意図的に、多くの時間を「1人学習」として設けてきました。本時もまた、「クエ」を表現する文章を大事にして、「太一」の目から見た姿として理解できるよう板書を工夫します。
〇授業の後半は、太一の変化について「1人学習」で考えたことについて、共有できることや共感できることを板書します。
板書のコツ(6/10時前半)
板書のコツ①
「めあて」である「太一の変化」を確認します。まず、「不意に夢は実現する」という叙述を基に「1人学習」をする時間を設け、印象に残った文や語に着目させました。その後、「太一の目にみえたクエ」を表現する言葉を板書します。
「1人学習」では、「海底の砂にもりをさして、場所を見失わないようにして」「息を吸ってもどると」「息苦しくなって、また、うかんでいく」「もう一度もどっても」などの叙述の意味を考える発表もあり、「クエと太一」の緊張感が広がる板書となります。
板書のコツ②
「1人学習」では、「太一とクエ」が向かい合う場面で、「水の中で太一はふっとほほえみ」「クエに向ってもう一度えがおを作った」「おとう、ここにおられたのですか」について考える子もあり、話題が広がりました。発言を板書としては取り上げず、話し合いの方向を見守ります。
板書のコツ③
「めあて」の「太一の変化」には「おとう」と「与吉じいさ」の生き方は大事と考える発言から、2人を、「本当の一人前の漁師」「村一番の漁師」と板書しました。指導計画では、「その後の太一の生涯」にも話題を広げていましたが、「1人学習」の勢いは、指導計画を越え、授業の勢いを大事にした板書になりました。
板書のコツ(6/10時後半)
板書のコツ①
話し合いにおける話題を「太一の決断を生んだもの」と位置付けて、話し合いを進めると、「海の命」という言葉を気にするようになります。また、見逃しそうな「母」についての叙述に目を向ける子の発言にも注目する雰囲気が生まれます。共有できる発言を板書にまとめるようにします。
板書のコツ②
本時の板書は、「1人学習」を大事にしています。学習内容は「人物の生き方や見方」ですから、まず、文章の叙述から、生き方につながる文や語を板書します。次に、「生き方」についての感想が生まれます。感想をあらかじめ予想をしていても、子供がその通りの感想を発表することはあまりありません。
板書をする前に、発言の根拠を理解すること、及び、発言を聞く子供の反応を見ながら言葉選びをするようにしています。「1人学習」の板書は、簡単ではありませんが、授業に勢いが生まれるという楽しみがあります。「太一の決断を生んだもの」は、言葉の響きが子供の心に響いたように思います。
構成/浅原孝子