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あなたはどんなカルチャーの持ち主ですか?【赤坂真二「チーム学校」への挑戦 #24】

連載
赤坂真二の「チーム学校」への挑戦 ~学校の組織力と教育力を高めるリーダーシップ~
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上越教育大学教職大学院教授

赤坂真二

多様化、複雑化する学校の諸問題を解決するためには、教師一人の個別の対応ではなく、チームとしての対応が必須である。「チーム学校」を構築するために必要な学校管理職のリーダーシップとは何か? 赤坂真二先生が様々な視点から論じます。
第24回は、<あなたはどんなカルチャーの持ち主ですか?>です。

執筆/上越教育大学教職大学院教授・赤坂真二

ネガティブとポジティブの比率

ある小学校の研修に訪れたときのことです。その小学校は所謂、生徒指導困難校と呼ばれる学校でした。事情を抱える家庭が多く、その学校の子どもたちの武勇伝は以前から耳にしていました。授業エスケープやいじめ、また、クラスの荒れや学級崩壊は珍しいことではありませんでした。しかし、先生方に尋ねると、最近は生徒指導上の問題は起こってはいますが、学級崩壊のような状態になるクラスはないとのことでした。教務主任が仰るには「よく持ちこたえている」とのことでした。

確かに先生方の研修へのモチベーションはとても高く「疲れている」印象はありませんでした。むしろ、私が伝える学級経営や予防的生徒指導の話を積極的に吸収し、明日の実践への意欲をかき立てているようにすら見えました。先生方のこの明るさはどこからくるのだろうかと研修中ずっと考えていました。

研修後の校長室で校長を交えて数人の先生方とお話をしていると職員室から伝言が入りました。具体的には言えませんが、いじめに関する「深刻な案件」と取られるようなことが起こりました。校長先生は、それを耳にしたときは少し表情を曇らせましたが、数秒後に口角を少し上げて、こう言いました。

「よし! これで加配がもらえる!」

他の職員も、それを聞いて「おおっ」と控えめな笑顔でつぶやきました。生徒指導困難校の校長を務めるとは、こういうことかと思わされた瞬間でもありました。

ポジティブ心理学の第一人者のひとり、ショーン・エイカーは、心理学者でありビジネスコンサルタントでもあるマルシャル・ロサダの調査を引いて、ビジネスチームに成功をもたらすためには、「メンバー間のポジティブな相互作用とネガティブな相互作用の比率」が、約3対1であることが必要であると指摘します※1。つまり、一つのネガティブな意見や経験や表現の悪影響を打ち消すのに、およそ3倍の量のポジティブな意見や経験や表現が必要だというのです※2

もちろん、全てのことをたった一つの要因に帰するつもりはありませんが、今、この学校でうまくいくサイクルが回っているとしたら、こうした校長の態度が何らかの影響を及ぼしているのだと思いました。私も小学校の教師のときに生徒指導が大変だといわれる学校に勤めていました。生活指導主任のときには、いじめ案件が起こると、被害児童のケア、加害児童の指導、保護者への連絡、場合によっては保護者会の開催、各方面への連絡などのことが一気に想起され、気分が暗くなったものでした。

そんなときに事案に立ち向かう意欲をくれたのが同僚の協力であり、校長のフォローだったように思います。リーダーのポジティブさは職員に伝染します。数多くの企業を指導するジョン・ゴードンは、「チームのメンバーとしてのあなたの態度やエネルギーやリーダーシップには感染力があり、それが『カルチャー』やチームに影響する」と言い、リーダーの影響力の強さを指摘します※3

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