「ウェルビーイング」とは?【知っておきたい教育用語】

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「心身ともに健康で幸福な状態」を示す、ウェルビーイング(Well-being)。なぜ今注目を集めているのか、その背景を含めて考えていきましょう。

執筆/文京学院大学外国語学部教授・小泉博明

「ウェルビーイング」とは

ウェルビーイング(Well-being)とは、「良好な状態」「心身ともに健康で、持続的に幸福な状態」という意味です。学校においては、子どもたちのウェルビーイングの実現をめざし、学習者が主体となる教育の転換が問われています。また、SDGsにおいてもウェルビーイングが重要です。

「令和の日本型学校教育(答申)」におけるウェルビーイング

「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(答申)において、ウェルビーイングは、次のように言及されています。

経済協力開発機構(OECD)では子供たちが2030年以降も活躍するために必要な資質・能力について検討を行い、令和元(2019)年5月に“ Learning Compass 2030 ”を発表しているが、この中で子供たちが ウェルビーイング(Well-being)を実現していくために自ら主体的に目標を設定し、振り返りながら、責任ある行動がとれる力を身に付けることの重要性が指摘されている。

「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(答申)

この「OECD ラーニング・コンパス(学びの羅針盤) 2030」“Learning Compass 2030”では、「教育の未来に向けての望ましい未来像を描いた、進化し続ける学習の枠組み」の中で「教育の幅広い目標を支えるとともに、私たちの望む未来(Future We Want)、つまり個人のウェルビーイングと集団のウェルビーイングに向けた方向性」を示しています。

また、OECDは、「PISA2015年調査国際結果報告書」においても、ウェルビーイングを「生徒が幸福で充実した人生を送るために必要な、心理的、認知的、社会的、身体的な動き(functioning)と潜在的能力(capabilities)である」と定義しています。教育再生会議でも「一人一人の多様な幸せと社会全体の幸せ(ウェルビーイング)の実現を目指し、学習者主体の教育の転換」と提言しています。

SDGsとウェルビーイング

2015年に、国際連合(UN)は、2030年に向けたSDGs(持続可能な開発目標)を定義しました。世界中で起こっている貧困と飢餓、健康の確保、質の高い教育、ジェンダーの平等、気候変動などに対する解決をめざし、17の目標が設定されましたが、目標の達成にはウェルビーイングが重要となります。学校においてもSDGs教育が推進されています。

また、目標3は「すべての人に健康と福祉を―だれもが健康で幸せな生活を送れるようにしよう」で、目標8は「働きがいも経済成長も―みんなの生活を良くする安定した経済成長を進め、だれもが人間らしく生産的な仕事ができる社会を作ろう」です。企業においても、ウェルビーイングへの関心が高まり、健康促進を行うことで労働者のやる気につながり、生産性が向上します。こうして安心安全な職場環境をつくることは、持続可能な雇用にもつながります。

ウェルビーイングへの関心の高まり

WHOの「世界保健機関憲章」(1948年)において、健康とは、病気でない、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることと示されています。この健康の定義の中でも、ウェルビーイングが使われています。

新型コロナ感染症の拡大により、「生命」の尊さや「つながり」の重視などから、教育だけではなくウェルビーイングにも焦点が当たるようになっています。

▼参考資料
文部科学省(ウェブサイト)「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現(答申)」令和3年1月26日
教育再生会議(PDF)「ポストコロナ期における新たな学びの在り方について(第12次提言)」令和3年6月3日
経済協力開発機構(PDF)「OECD ラーニング・コンパス(学びの羅針盤) 2030
国立教育政策研究所(PDF)「PISA2015年調査国際結果報告書
WHO(PDF)「世界保健機関憲章

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