小5国語「固有種が教えてくれること」京女式板書の技術
今回の教材は「固有種が教えてくれること」です。本単元を通して付ける力は、資料と文章との対応ができる、資料の効果がわかる、資料を活用して文章が書けるなど。そのため、「固有種が教えてくれること」では、文章と資料とを対応して読み取り、資料があることによる効果を考えることが重要になります。文章と資料が対応できるような段を活用した板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教頭・砂崎美由紀
教材名 「固有種が教えてくれること」「[情報]統計資料の読み方 グラフや表を用いて書こう」(光村図書)
目次
単元の計画(全11時間)
第一次 「固有種が教えてくれること」
1 「固有種が教えてくれること」を読み、「はじめ」「中」「終わり」のまとまりに分ける。
2 「はじめ」「終わり」で書かれている、筆者の考えの中心を読む。
3 「中」で書かれていることを読みとり、「中」を2つに分ける。
4 文章と資料を対応し読み取り、資料があることによる効果を考える。
5 文章の要旨を150字程度でまとめる。
6 筆者の考えや論の進め方について、図表などの効果にも触れながら、自分の考えをまとめる。
第一次 「情報 統計資料の読み方」
7 図表などが使われている本や新聞記事を探し、読み取れることや効果をまとめる。考えたことを伝え合う。
第三次 「グラフや表を用いて書こう」
8〜11 私たちが今生きている社会が、暮らしやすい方向に向かっているかどうかを考え、自分の意見をグラフや表などの統計資料を用いて書く。
板書の基本
〇授業が始まる前に考えること
教材研究の際に、この教材で付けたい力を考えます。今回は、資料と文章の対応ができる、資料の効果がわかる、資料を活用して文章が書ける、という力です。
これらの力を付けるために、子供たちにとってわかりやすい板書計画を立てることが、よい授業につながります。
〇板書計画で考えておくこと
板書は、1時間の学習の目標や方法を示す役目があります。文章を読む視点を示すとよいでしょう。例えば「資料と文章との関わりを読む」であれば、資料と読み取りが対応できる板書を示します。今回は、表にまとめる形を示しました。
〇子供が参加できる板書を目指して
板書計画は、あくまでも計画であり、学習主体者=子供の気付きや言葉を書くことも多くあります。クラスみんなで取り組む時間、一人学習の時間など、いろいろな学習スタイルを計画し、一人学習での学びを板書に反映させることもあります。板書計画を立てておくこと、付けたい力をしっかり指導者が押さえておくことで、落ち着いて板書や授業が進めることができます。
板書のコツ(4/11時間目前半)
板書のコツ①
「めあて」は「資料と文章の関わりを読む」です。学習の内容は「図・表などの資料が、どの文章と対応しているのかを読み取る」「資料があることによる効果を考える」の2つです。そのため、黒板を3段に分け、資料と読み取り、そして効果を対応する表を作ることを可視化できるように板書計画を立てました。
板書のコツ②
学習の進め方をいっしょに確かめる板書です。
固有種「アマミノクロウサギ」について説明している文や語を探しながら、1段落を全員で音読します。子供の発言を「読みとり」のところに板書します。
この資料はどこにあるかを見つけさせます。資料がP137にあることを見つけたら、「絵」が資料になることを確かめ、「めあて」の「資料」がさすものを黄色チョークで書き込みます。そして板書の「資料」のところに「アマミノクロウサギ」の図を掲示します。
次に、資料と文章を対応させ、資料があることによる効果を考えます。子供の考えた意見を「効果」のところに板書します。ポイントとなるところには赤チョークで波線を引きます。赤チョークは、大切なポイントや、学習用語などに使うことを意味付けておくとよいでしょう。
板書と同じようにノートに書くことを指示します。3段に分けたどこに、何を書くのかを明確にし、本時では「資料と本文の読み取り」と「資料の効果」を学習する時間であることと、「学習方法」を理解させます。
板書のコツ(4/11時間目中盤)
板書のコツ①
「資料1:日本とイギリスの陸生ほ乳類」を掲示し、この資料を説明している文章(3段落)を全員で音読します。資料の読み取りが書かれたところ、資料の効果、の順に一斉学習で考え、子供の意見をまとめたものを板書します。こうして、学習の方法を一斉学習でいっしょに進め、理解を深めます(資料1~4は、教科書に掲載されている資料を指します)。
板書のコツ②
「資料2:日本列島の成り立ち」を掲示し、この資料を説明しているところを文中から見つける学習を、今度は一人学習として取り組みます。教師は机間指導をしながら、わかりにくい子供へはどこに何を書き込むのかを板書を指し示し、一人学習の支援をします。
板書のコツ③
7分ほどの一人学習の時間の後、一人の子供のノートを選び、教師がそのノートを板書します。それを基にみんなで見つけた言葉や効果について発表し合い、板書にまとめます。
どの子のノートを教師が選ぶかは、いろいろな方法があります。教師の板書計画に近いものを選ぶ、選んだ言葉が少ない子を選ぶなど指導の意図をもって選ぶことも、名簿の順に毎時間選ぶこともあります。子供のノートを板書にする学習方法は、自分のノートが板書になりますので、意欲をもって一人学習に取り組むことが期待されます。
選ばれたノートを基に書かれた板書を見ながら、もっと付け加えたい内容や、自分の考えや気付きなどを一斉学習で発表し、板書に書き加えます。
子供たち一人ひとりのノートには、すでに自分の学習が書き込まれているため、新しく加えたいことがあれば各自で書き込むように指示します。
板書のコツ(4/11時間目終盤)
板書のコツ①
7段落を読みながら、「資料3:一年間の平均気温」、「資料4:標高」のどちらを説明しているのかを考えます。資料を選ぶためには、資料の内容に着目する必要があります。「資料の見出し」や「データから読み取れること」を確かめながら、本文の内容と対応することが大切です。
また、7段落では、「さまざまな動物たちが何万年も生き続けることができたのはなぜでしょう」という問いがあります。文末に「~からです。」とあるところにも着目し、問いの答えを説明していることも押さえておきたいものです。
板書のコツ②
全員で板書を見て、今日のめあてを振り返ります。「資料と文章」を「対応」して読み取れたか、「資料の効果」を考えることができたかと問いかけ、それらをキーワードにします。このキーワードを使って、自分の学習の振り返りを書きます。毎時間、振り返りを書く時間を3~5分と決めて設定すると、今日の学びを意識できるようになります。
構成/浅原孝子