【小五道徳】「友のしょうぞう画」授業展開と板書
「考え、議論する道徳」を実践するために、板書に力を入れているのが愛知県西尾市立横須賀小学校。この小学校で行われた小五の道徳「友のしょうぞう画」の授業展開と板書の工夫を紹介します。
授業者/愛知県公立小学校教諭・高山薫
目次
授業指導案(一部抜粋)
1.主題名
真の友達とは、どういう友達だろう【友情、信頼 B-(10)】
2.教材名
友のしょうぞう画(『きみがいちばんひかるとき』光村図書)
3.ねらい
友情とは、信頼関係のもとに互いを認め合う感情であり、状況に左右されず互いに相手を信じることで友情が育めることを理解し、友達との信頼を深めて関係を築いていこうとする心情を育てる。
4.道徳的価値
友情とは、単に親しいだけではなく、互いが信頼の情をもち、認め合う感情である。真の友達は、状況に関わらず、互いが自分の状況よりも相手のことを一番に考え、相手のためにできることをしようとするものである。つまり、互いが状況に左右されず相手のことを一番に考え、信頼し合い、認め合う関係こそ、真の友達といえる。この時期の子どもたちは、これまで以上に仲のよい友達との信頼関係を深めていこうとするが、状況によってはまだ自分の都合でしか物事を捉えられず、トラブルになることもある。だからこそ、相手のことを考えた行動やその思いを考えることで、状況に左右されず、友達との信頼を深めて関係を築こうとする心情の高まりにつながると考える。
5.児童について
本学級は、気が合う子と仲間集団をつくっている雰囲気がある。その仲間集団の中で、「おもしろいから好き」「いつもやさしいから一緒にいたい」などと、友達がいることの楽しさや安心感を感じている子も多い。また、友達の髪型や服装の変化に敏感に反応したり、友達の何気ない一言に影響を受けたりして、友達の言動を意識する子が増えてきている。したがって、これまで以上に友達を意識する中で、友達がいることのよさをより感じてほしいと思う。そのためにも、友達と信頼関係をもとに友情を育み、よりよい関係を築いてほしいと願い、この主題を設定した。
クラスの“子供の実態”や、これまでに学んできた<道徳的価値とその理解度>を考え、ねらいを考えよう!
授業前の板書計画
ぼく(和矢)と章太の気持ちを対比させながら友情について考えを深められるよう、工夫して板書を計画しました。和矢が章太を信じられずに気持ちが沈んでいくところを矢印にするなど、視覚的な工夫を取り入れています。 (高山先生)
板書のポイント
【1】発問の枠を色分けして統一する
めあて、登場人物、補助発問、中心発問の色を統一して、視覚的にわかりやすい板書を心がけています。今回は、「ぼく(和矢)」と「章太」の気持ちの対比が、一目でわかるよう登場人物も色を分けました。
【2】挿絵は意図的に場面を選んで掲示する
教材で押さえておきたい部分を、センテンスカードやキーワードで掲示します。登場人物や情景の挿絵を利用して状況の理解を促進するとともに、後半で考えを深める時にも、子供たちがすぐにふり返ることができる利点があります。
(上の写真部分)
手紙の返事がなく、「ぼく」が章太を思う場面を挿絵として用意しました。授業最後のまとめで、ここの感情をしっかり思い出させたかったんです。「親友」だと思っていたのに、自分は信じきれなかったこの気持ちをポイントとして、自分との関わりを考えやすくするためです。
【3】多くの意見を分類しながらねらいに近づくための工夫を
「章太」のどんな時でも友達を思う考え方に子供たちを触れさせて、最後の切り込み発問へつなげたかったので、あえて「章太」に関することをまとめに近い向かって左側(板書全体写真の白点線で囲った部分)に書きました。
授業展開
導入(10分)
- 教材は、事前に読んで理解させ、真の友達とはどういう友達かをたずねる。
- センテンスカードや挿絵で、ストーリーを確認する。
- 教材の内容を把握しやすくするために、「しょうぞう画」の意味を確認する。
展開(25分)
・子供たちが発言した章太を心配する気持ちと、章太の友情が薄れてきた気持ちを分けながら板書する。
中心発問
自分の考えを整理して話し合えるように、道徳ノートに考えをまとめる時間を設ける。
・友達への思いが薄れてしまったことを反省するぼく(和矢)の気持ちに寄り添いながら、ぼくと章太の違いを考える。
切り込み発問
友情には、状況に左右されずに相手を信じることが必要であり友達を思う気持ちは自分の励みになるなどと考えが深められるように、二人の思いを対比して考えた子供たちの意見の発表から、切り込み発問へと繋げる。
↓
「真の友達とは、どういう友達だろう?」
ねらいとする道徳的価値に迫るために、本時のめあてについて導入と同じ発問をして、子供たちの意見の変化を聞き、深めたい価値についての学びを確かなものにする。
終末(10分)授業をふり返り、考えたことをノートに書く
本時のねらいについて、学びを構築するために自分の考えをノートに書かせました。教師の意見でまとめるのではなく、子供達が発表して、終末とします。
道徳授業、ココが面白い!
同じ教材でも、クラスによって出る意見は異なるのが道徳の面白いところです。今年は、和矢の涙を「感動」「よかった」とポジティブに捉える子が多かったのが、印象的でした。
子供たちのノートより
ノートへのコメントは、子供たちに共感しつつ自らが授業中に考えたことを認められたと感じられる言葉を書くように心がけています。
授業を終えて・・・
道徳の授業は、子供たちが馴れ合うことでより話合いがうまくいくと感じます。夏休み明けは、少しクラスが落ち着いてきた時期。道徳授業で大切なのは、普段からクラスの特性と子供たちのパターンを把握しておくことと、授業の中で子供たちに「話し合えた!」と達成感を感じさせること。教師が子供たちの意見をうまく引き出し、のびのびと発言ができるよう配慮しながら授業を進めています。
指導者からのワンポイントアドバイス
畿央大学教育学部教授 島 恒生先生
「考え、議論する道徳」は、道徳授業における「主体的・対話的で深い学び」の実現です。特に大切にしたいのが、「深い学び」です。子どもたちにとって納得と発見があること。その学びは板書にはっきりと表れます。横須賀小学校の実践は、ねらいを明確にし、深い学びを目指します。特に、五年生の高山教諭の授業では、友達についてこれまで以上に意識するこの時期に、友情は互いに信頼し合うことで育まれることを子どもたちと考え合うことがねらいです。めあて「真の友達とは、どういう友達だろう?」の問いが、授業の中で貫かれ、二人の登場人物を対比的に板書し、両者の考え方の違いからねらいに迫る工夫がなされています。
愛知県西尾市立横須賀小学校 1908年に開校。全校生徒数437名。道徳教育の充実を通して夢に向かって前向きな生き方を創造し続ける子供の育成に力を注いでいる。
『教育技術 小五小六』2019年9月号より