スモールステップで身につける!理科授業での「表計算ソフト」の活用 【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

1人1台タブレット端末が配付され、タブレットを使った授業に取り組んでいることと思います。しかし、理科の授業でどのように使ったらよいのでしょうか? カメラ機能以外にも何か有効に使えないかな? そんな悩みはありませんか。今回は、理科の学習で表計算ソフトの活用について考えていきましょう。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/東京都公立小学校主任教諭・河瀬正和
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

1.「表計算ソフト」の活用は難しい?

表計算ソフトに入力するよさは、今までノートに書いていた表を、マスの数やレイアウト、文字数などを考えながら書く必要がないことです。また、表ができてしまえば様々なグラフを簡単に作れることが、大きなよさと考えます。

表計算ソフトを活用するからといって、いきなり表やグラフをつくることはなかなか難しいかもしれません。なぜならば、表計算ソフトの使い方自体を教えなければならなかったり、表計算とあるように、入力したら計算するように式を入れなければならないという、授業前の準備が必要になったりするからです。

表やグラフは、書くことが目的ではなく、表やグラフから、結果や考察で情報を分析することが大切です。

そこで、児童が数字や文字を入力したり、グラフを表示したり、といった経験を、スモールステップで積み重ねていくことで、児童自らがゼロの状態から書くより、簡易かつ着実に表やグラフを作成し、結果や考察に生かしていくことが期待されます。

2.スモールステップで表計算ソフトの活用

ステップ1> 数字だけ入力をする

まず、理科を学び始めた3年生やタブレット端末に慣れていない児童の場合。表やグラフをいちから作成するのではなく、教師が作成した表計算ソフトに実験結果の計測した距離や数値などの、数字を入力するだけ(黄色のセル)のステップから始めてみましょう(図表1)。この時、グラフは児童が操作して表示させるのではなく、はじめから表示できるようにしておくとよいです。

(図表1)3年「風の強さと車の進む距離」

そうすることで、実は表計算ソフトは意外に簡単な操作で表やグラフを作成することができる、ということに気付けると考えます。

こうした数字を入力する経験やグラフを目にする機会を積み重ねると、光と音の性質の単元では、児童自ら表やグラフを作成して結果をまとめたり、考察で関連付けて考えを述べたりできるようになるのではないでしょうか。

表にまとめることで、情報の比較のしやすさや見やすさ、関係性などを考えやすくなります。また、表からグラフを簡単に表示することができ、結果の視覚化も数値だけよりもより分かりやすく表現することができます。

ステップ2> 数字や文字を入力する。

ステップ1と同様に、教師が表を用意しておきますが、次はさらに、児童が文字や数字を入力(黄色のセル)できるようにしてみましょう(図表2)。この場合も、グラフはまだ児童が自分で作成するのではなく、教師があらかじめ表示できるようにしておくとよいです。

そうすることで、何について調べているのか、項目と数値の関係を考えながらまとめることが少しずつできるようになると考えます。

この時、パソコンやタブレットのフルキーボードで文字を入力することが苦手な児童は、音声入力やフリック入力など、実態に応じた入力方法から取り組んでみるのもよいでしょう。

(図表2)3年「音の強さによる物の動き方」

ステップ3> 表を自分で作成する

そして、文字や数字を入力できるようになったら、最初から表を自分で作成できるようにしましょう。枠のつけ方や幅の変え方を教えてあげることで、表を作成することができます。この時、使うセルの領域だけ指定して、グラフの設定はさせず、あらかじめ表示できるようにしておくとよいです(図表3)。

(図表3)3年「かがみの数による温度の変化」

そうすることで、実験した時に数値で測れるものがあった際、自分たちで表にまとめたり、考察ができるようになったりできると考えます。

ステップ4> 作成した表から、グラフを作成する

表が自分で作れるようになったら、グラフの表示の仕方を教えましょう。作った表を選択し、「挿入→グラフ」を押すだけで自分の表現したいグラフを作ることができます(図表4)。

(図表4)3年「形による重さの変化」

そうすることで、自分たちで実験して得た情報を適切に表へまとめ、グラフに表現しようとする素地が養われると考えます。

このように、表計算ソフトをスモールステップで活用していくことで 、児童たちが少しずつICT機器の活用に慣れ、実験結果を分かりやすくまとめられるようになるのではないでしょうか。

児童は急に表計算ソフトを活用することができるようになるわけではありません。継続した学びや経験を経て、情報活用能力や知識・技能が身に付いたり、学んだことを使いながら表現したりしていくものだと思います。

そのためにも、教師が意図的に表計算ソフトやICT機器を使うことで、児童の学びを深めるきっかけを作ることが大切だと思います。

ぜひ、日々の実践の中でタブレット端末を活用しながら、児童の学びをよりよいものになるように授業を考えてみてください。

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〈執筆者プロフィール〉
河瀬正和●かわせ・まさかず 東京都小学校主任教諭。理科を中心に日々実践研究を行っています。趣味は、お神輿を担ぐことです。地域密着型の教員で、地域のお祭りや行事に積極的に参加し、地域・学校・家庭が連携するきっかけにしたいと考えています。「わっしょい」の掛け声を合言葉に、みなが一つになれたらなと思います。


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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