小6国語「言葉は時代とともに」京女式板書の技術
今回の教材は、「言葉は時代とともに」です。歴史的仮名づかい、現代仮名づかいを比べたり、『万葉集』の和歌、正岡子規の短歌、夏目漱石、芥川龍之介の小説を例にしたりして、言葉や文章は時代によって様々に変化しているということを示しています。その変化をわかりやすく板書する工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/元京都女子大学附属小学校教頭・長江柳子
教材名 「言葉は時代とともに」(教育出版)
目次
単元の計画(全7時間)
1 「言葉は時代とともに」を読み、言葉の変化について考える。
2・3 「万葉集」や近代の文学作品に触れて、その言語表現を味わう。
4 身の周りの事物から言葉の変化を考える。
5・6・7 時代とともに変化していく言葉について調べたことを交流する。
板書の基本
〇教材「言葉は時代とともに」は、「変わっていく言葉」について考えることを目的に構成しています。『万葉集』や『枕草子』などが「なぜ、千年を超えて読みつがれているのでしょうか」と問い、「それは、そこにえがかれた、人々の生き方や考え方、あるいは、自然に対する見方や考え方、感じ方が時代をこえて人々の心を打つから」と答えを導いています。そして、言葉は人とともにあるので、そのときどきの人々の考えや暮らし方が変われば、言葉も変わるという「言葉は時代とともに」という題名の意図へ導いています。
〇めあて「変わっていく言葉について考える」の授業の始まりは、すでに学習をしてきた「歴史的仮名づかい」と「現代仮名づかい」の整理からです。教材は『万葉集』の和歌、正岡子規の短歌、夏目漱石、芥川龍之介の小説を例にして、言葉や文章は時代によって様々に変化しているということを示しています。教材の仕組みを理解させるためにも、授業の最初の段階では、「歴史的仮名づかい」と「現代仮名づかい」の整理を、板書を通して行うことを大事にしました。
〇授業の中頃は、時代とともに「変わっていく言葉」を理解させるために、「時代、作品、変化した言葉」という視点を基に、教材を自分でまとめる板書にしました。それは、時代によって変化している言葉や現代とそれほど違わない言葉や言葉づかいに気付かせるという意図があるからです。この段階における板書の基本は、学習課題を解決するために、学習活動を促す活動の形を示すことです。
具体的には「時代、作品と作者、変化した言葉」を見つけ、書き加える表がそれに当たります。表に何を書き入れるかということを課題にして、教材を読み解く学習をうながします。
板書のコツ(1/7時間目前半)
板書のコツ①
まず、「めあて」である“「変わっていく言葉」について考える。”と板書します。次に、言葉として「歴史的仮名づかい」と「現代仮名づかい」の2枚のカードを黒板に貼ります。2枚のカードにしたのは、これから、毎時間、この二つの学習用語が授業のキーワードになるからです。
板書のコツ②
「歴史的仮名づかい」は既習の学習内容です。しかし、それほど定着していない実態もあり、クイズ形式で、言葉を板書しました。例としてクイズに出したのは「あぢさゐ・つゑ・けふ・れうり」です。「現代仮名づかい」では「あじさい・つえ・きょう・りょうり」と書くことや、現代でも仮名づかいは違っても用語として同じであることを理解させるようにしました。
板書のコツ③
「歴史的仮名づかい」「現代仮名づかい」を上下二段に分けたことと「あぢさゐ・あじさい」「つゑ・つえ」「けふ・きょう」「れうり・りょうり」と対比することにより、仮名づかいの違いが理解できるように板書を工夫しました。
板書のコツ(1/7時間目中盤)
板書のコツ①
黒板の中央に「時代、作者・作品、変化した言葉」を書き込む枠組みを書きました。何をするのだろうという学習活動に興味をもたせるためです。
それは、教科書に示されている『万葉集』の和歌、正岡子規の短歌と俳句、夏目漱石の『坊ちゃん』、芥川龍之介の『杜子春』を例にして、言葉や文章が時代とともに様々に変化していることを伝えている学習内容を理解させるためです。
教科書を音読させると、時代、作者や作品はすぐに見つかります。「飛鳥・奈良」「正岡子規は明治時代を代表する文学者」「夏目漱石は、明治時代を代表する小説家です」などを手がかりにして、「時代、作品と作者」を板書しました。
指導のコツ②
既習の『枕草子』は、教科書には示されていません。そこで、「秋は夕暮れ」の文章を教材にして、音読をした後、「をかし」「あはれ」を基に「変化した言葉の意味」について指導しました。それは、教科書に例として示されている文章を「ひとり勉強」することに導くためです。
板書のコツ③
「ひとり勉強」で見つけた言葉を発表させ、大事な言葉を板書し、表を完成させました。板書ではチョークの色を変えて、指導の意図が理解できるように配慮しました。
板書のコツ(1/7時間目後半)
板書のコツ①
まとめ段階では、これまでの板書を読むことから始めました。最初は、クイズのような学習が印象に残っていました。そこで、あらためて、「歴史的仮名づかい」と「現代仮名づかい」について確認しました。
次に、時代を超えて変化した言葉について、学習活動の意図をまとめました。板書を通して、学習を振り返り、学習内容の習得へと意識を高めました。
板書の「みつけたこと」は、このような段階を経たものです。
板書のコツ②
「みつけたこと」と問われても、上手にまとめることができません。そこで、教科書のまとめの段落を黙読させ、納得できる部分に線を引かせました。「みつけたこと」の後に続く板書は、黙読の後に発表したものをまとめたものです。
板書のコツ③
授業のまとめとして、板書をノートに書き写すことを指示しました。ノートに書き写すときに、写す速さに個人差があります。そのため、わかりやすいようにキーワードには、赤色のチョークで波線を付けました。また、速く写せた子供には、板書を写した後、自分の考えを書き加えるように指示しました。板書を写すことに時間がかかる子供には、赤色のチョークで波線を付けたキーワードを中心に理解できる事柄を書き写すように指示しました。ポイントになる事柄だけでも覚えておくと次につながり、単元計画2、3、4を見通して、知りたいという気持ちを育むことができると考えたからです。
構成/浅原孝子